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筋を通すやり方

 シダックスの講座に通われていた伝統派空手道を長年修行されているKさんから、手紙をいただきました。

 ここのところ、来られていなかったので、多分、忙しくされているんだろうな~と思っていたので、講座を受講できなくなったというお断りの手紙なんだろうと思って拝読しました。

 技も素晴らしく、受講されている態度も立派ですし、何より人柄が素晴らしい人でしたから、来られなくなるのは残念だな~と思っていますが、元々、受講された理由が、「空手を極めたい」と言われていたので、私としてもうちのやり方を押し付けるのではなくて、空手に役立つような術の理について指導させてもらっていました。

 うちの技は基本的に内家拳の原理で組み立てているので、熟練すればする程、空手の技や理論とは違い(特に間合が異なる)が出てきてしまうでしょうから、そこは敢えて教え過ぎないようにしていた訳です。

 お手紙には、自身が長年、空手に携わってきて生じた疑問について悩まれていたことや、私の本を読んでから違った視点から空手を観れるようになってきていたこと、そして、ある空手師範と出会って、一から空手の理を教えてもらおうと決意されたこと等を率直につづられていました。

 私も、その空手師範の著作を読んでいて、注目しているお一人だったので、「あ~、Kさんが選んだくらいだから、この先生はやっぱり実力も理論も優れた方だったんだろうな~」と思いました。

 もし、おかしな師範に師事されたのであれば、私も一言、注意しようとしていたでしょう。やっぱり、言葉は巧みでも内実が伴っている人は少ないですからね。

 恐らく、北島師範矢嶋師範代は、Kさんが来られなくなることを私以上にガッカリすると思いますが、私は最初から、「空手を極めたい」と話されていたので、いずれ信頼できる空手師範と出会うか、あるいは御自身で空手の理合を体現されるかしたら、来られなくなるだろうと思っていました。

 空手にほれ込んで、空手に疑問を持ちながらもやめずに続けてこられたのであれば、そういう筋の通し方をされる人物だと思っていたからです。

 それで、予想していた通りになったと受け止めています。

 むしろ、空手の研究のために受講したに過ぎない私に対して、ここまで義理をたてて恩義に感じてくれていたことを知って、逆に恐縮してしまいました。

 正直申しまして、私でさえ、教えている人に対しては、「私の技と理論だけを信頼して他には目を向けてもらいたくない」という気持ちはあります。

 私でさえそうなんだから、大抵の武術・武道の先生は、口には出さなくともそういう気持ちを持っているに違いないと思っています。

 けれども、こういう感情は、ある種の征服欲でしかありません。

 人は人、自分は自分。来る者は拒まず、去る者は追わず。

 修行者は、執着心は修行の妨げにしかならず、レット・イット・ビー、為すがままに為さしめよ・・・という心境であらねばならないと思います。

 後ろ足で砂をかけるように、文句をつけたり、悪罵を撒き散らしたり、自らの正義を印象つける文言を残して去っていった人間も何人もいました。

 一方で、離れるにしても、手紙で「先生に会えたお陰で良かった」と感謝の言葉だけを伝えて去る人もいました。

 私は、感謝の言葉が記してあっても、恐らくは私に体する不満もあっただろうと受け止めています。感謝だけしているのなら辞める道理がないからです。

 その言いたい文句をぐっとこらえて感謝の言葉だけをつづるというのが、“筋を通す”ということだと思います。

 私は、もの書きですから、言葉そのものではなく、その言葉を使っている本心を読みます。退会に関することでも、手紙を書いて送る人は、それなりに改まった意識と覚悟の現れであり、メールで簡単に書いてくるような人間は相手をなめているとしか言えません。

 一番良いのは直接挨拶に来ること。次は手紙で伝えること。その次は電話。その次は何も言わずに自然にフェードアウトすること。

 しかし、直接教えている人からメールで一方的に退会しますとだけ書き送ってくるのを受け取るのは気分が悪いものです。これはフェードアウトするより非礼です。

 一方的な宣言を簡単に済ましておこうというのは、相手への敬意が欠落していますし、まともにコミュニケーションを取りたくないからでしょう。

 その点、話し合いができる電話のほうがマシだし、手間のかかる手紙を書くほうが誠意が感じられます。

 ただ、批判めいたことを僅かでも書いていれば、どんな感謝の言葉も体裁だけの虚飾であり、本音は“批判している箇所”にしかありません。要は、そこに自尊心のアピールがあるからです。謙虚なフリをしていながら、内心では相手を侮っているのです。

 中には、「そんな気持ちは絶対に無い!」と言い張る人もいましたが、無意識の気持ちは文章に現れるんですね。だいたい、面と向かって言えない時点で自分にやましい気持ちがある証拠であって、どんな理屈を並べても“失格”です。

 私は、感謝していれば感謝の言葉を書き、文句があれば文句を書きます。

 武術・武道の世界の筋の通し方ではありませんが、これは“私なりの筋の通し方”として一貫してきています。

 それは、尊敬し親愛の情のある相手に“嘘偽りの言葉”を送ることが不誠実だと考えるからです。

 なので、手紙に書いたことは電話でも言えるし本人の目の前でも言えます。

 10年以上前の話ですが、「松田隆智先生に意見できるのは(弟子の)野口さんと長野さんだけしかいませんよ」と言われたことがありました。

「松田さんは物凄く怒る人だから、人の意見なんか聞かない」という話も聞いたことがありました。

 しかし、実際に松田先生と親しくお付き合いさせていただいて、松田先生は決して意味なく怒ったりする人物ではありませんでしたし、筋を通す人間の言葉には謙虚に耳を傾ける侠気のある方でした。

 私も二回くらい、物凄い勢いで怒鳴られたことはありますが、それは私に足りないところがあったからであって、きちんとお話すると「君の今後の活動のためを思って言ったんだから、悪く思わないでもらいたい」と言われ、私は、「あ~、松田先生は普通の人よりずっと情の篤い人なんだな~」と思いました。

 ですから、私が意を決して意見した時も正面から受け止めてくださいました。私が挑戦してきたという面白話にして周囲に話されていて参りましたけどね・・・(苦笑)。

 薄情で冷淡な人は、あんまり激しく怒るなんてことはないんですよ。怒らないから優しくて頼りになるか?と思ったりしていると、何かあった時に全然助けてくれないもんですね。

 結局、人の話なんて、その人の価値観や受け止め方、理解度によって、どうとでも変わってしまうものだな~と思いましたね。

 人の噂は信頼に足りませんが、ある程度の目安として、大体、賛否両論ある人のほうが優秀ですね。

 誉める意見ばっかりだとシンパが意味も判らずに誉めてるだけだったりするし、反対に貶す意見ばっかりなのも、反感持ってる人間が誹謗中傷しているだけだったりします。

 不必要なおべんちゃらも、感情的な誹謗中傷も、その人の認識のレベルを表現しています。武術に関する限り、素人がプロに対等な地点でものを話そうとすることそのものが大きな勘違いです。

 まあ、よくいます。そういう勘違いして意見する輩は・・・。

 そういう経験を重ねてきたので、私は自分の眼しか信用しません。どんな達人だという噂も、自分で観たり体験したりしてみなければ判りませんよ。

 だから、業界的に流通している「あの人は達人」みたいな評価と私の評価は、かなり違っていたりしますが、私は自分の評価に自信があるので、どこの誰がどう言っているから・・・みたいなのは判断の参考にしません。

 例えば、私の尊敬している先生が評価していても「あんなのダメですよ。何故なら、これこれこういうところがダメですからね」って平気で言ったりしますからね。

 付き合える先生が限られるという意味がお判りだと思います。

 自分で観て、「良い人は良い。ダメな人はダメ」と言いますし、友人であろうが先輩であろうが先生であろうが、「その技はそこがダメですね」って平然とダメ出しする性格なんだから、自己満足でやっていたい人は私と付き合うとノイローゼになると思いますよ。

 ダメな人を挙げると文句言われるから、今、良いと思う人を少し挙げますと、空手では中先生、香川先生、倉本先生、太極拳では、池田先生、高先生、太気拳では岩間先生・・・といった先生方が凄いな~と思います。

 メディアで評価されていても、私の眼には全然、武術のブの字も解ってないように思える人も少なくありませんが、わざわざ名前挙げてケンカ売る必要もないでしょう。直接、聞いてくれれば教えますけどね。


 ともあれ、武術で“筋を通す”ということの最も重要な目的は、“自分自身の向上”に他ならないのであって、今回、Kさんが自身の「空手を極めたい」という想いに忠実に従って、新しい師を見つけられたことは、祝福してあげるべきだ・・・と思って、餞別代わりに新作DVDを贈らせてもらいました。

 次に会う時に、御自身の理想の空手を体現されていることを祈りたいですね。

 Kさん。応援していますから、頑張ってください!


PS;ユーチューブで新作DVDに収録している歩法無刀捕りの映像を出してもらっています。是非ご覧ください。大したことないと思う人は、できるかどうか自分でやってみてもらいたいですね。あっ、でも“無刀捕りは失敗すると死ぬ”から真似しないでね。

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
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