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『小川の辺』感想

 映画マニアの友人が『小川の辺(ほとり)』を観てきたというので感想を聞きました。

「う~ん・・・脚本が酷いね~」とのこと・・・。

 何でもロードムービーみたいに主人公が歩いていくのを追っかける中に回想シーンが入って物語の全体像が判る?みたいな構成になっているそうでしたが、「これが実際にはよく判らない」と言うのです。

 ちょこちょこと起こるエピソードが説明不足過ぎて何が何だか判らないというのです。

「それって環境イメージ・ビデオみたいですね~」と言ったら、「そうなんだよ。美しい風景を見せたいのかもしれないんだけど、伏線が効いてないから全体の締まりが無い。細かいエピソードが脈絡が無いからストーリーにからんでこないんだよ。典型的にダメなシナリオだよ、コリャ~」とのことでした・・・。

 何でも、友人の友人が先に観てきて酷評していたと言うのですね。その先入観も関係したのかな~?とも思いましたが・・・。

 でもまあ、私としては、殺陣がビシィッとしていれば、全てが許せる。「時代劇のキモは殺陣である!」が持論ですからね~。

 親しくしていただいている高瀬先生が殺陣を担当された作品ですから、そこさえ見所であれば・・・という祈るような気持ちだ・・・というのが偽らざる心境です。

 映画創りには多くの金が費やされ、多くの人材が集められます。

 そして、数カ月から長くて数年もの時間をかけ、創られます。が、撮影が済んで、編集が終わったとしても、それが劇場で公開されるかどうかはまた別の話です。

 劇場公開されるより、されないままの作品が多いという話も耳にします。

 企画段階で終わってしまう作品も無数にあるとされます。企画がタライ回しされた揚げ句にZ級に酷い作品になって公開されてしまう場合もあります。

 私も、もともと映画が好きで映画に携わりたくて大学を中退し上京してきた人間ですし、プロの作品には一つくらいスタッフで関わった程度で、主に自主映画の現場にいましたが、自主映画であっても、そこで共に映画を創っていた友人知人の何人かは今ではプロで活躍していますし、役者を目指した人も何人もいます。

 私はシナリオライターを目指していましたが才能が無くて、むしろ趣味の武術を役立てて殺陣の指導を頼まれているうちに、なんやかんやで武術の業界で都市伝説の男?みたいになってしまいましたが、でも、やっぱり映画に関わりたいんですよ。

 映画は総合芸術であり巨大なエンターティンメント・イベントであり、一本の映画が人の人生を左右するくらいの影響力を持つ魔物のようなチカラを持っています。

 それに、いかなる作品も自分で観ないと何とも言えないんですよ。

 心に残る作品というのは、莫大な金がかかった超大作も、学生が撮った自主映画も関係ないんです。

 重要なのは、その作品の中に創り手の想いが込められ、それが観る者の魂に響くかどうか?という、ただ、それだけのことなんですよ。

 だから、私の基準は簡単なもんです。俺の魂に響くかどうか? それだけ。

 で、私も橋本駅近くのMOVIX橋本で観てきましたよっ。

 モギリのお姉ちゃんがレッサーパンダの赤ちゃんみたいでメチャクチャ可愛いのに感動して劇場に入ると・・・ガラ~ン・・・えっ? 俺だけ?・・・。

 平日のレイトショーだから少ないだろうとは思ってたけど、久しぶりに貸し切り状態だな~・・・と思って、悠然と座席に座っていると、ギリギリの時間になってオバちゃん二人が入ってきて、何か私の隣に一つ空けて席に座ってます・・・。

 MOVIXの困るところって、ここなんですよ。ガラガラなのに、何故か観客を密集させたがる・・・。指定席制度って、ガラガラだと意味ないし・・・。

 空いてるから別の席に移ろうか?とも思いましたが、それも何か嫌みな感じがしたんで、我慢して座ってたら、もう二人、今度はオッサンが入ってきて、やっぱり私の後ろの席に陣取りました・・・。

 だからさ~。MOVIXさん、そういうのやめましょうよ~。ガラガラなんだからバラけて座らせりゃ~いいじゃん?

・・・とか思いつつ、映画が始まりました。

 なるほど、こりゃ~、環境イメージ映画みたいっスね~・・・。なんか、壮大に無駄なシーンを繋げてるような気もします。

 必要なシーンだけにすると30分で終わるかな?という感じでした。


 でも、大ざっぱに感想を述べます。

 決して感動的な傑作という作品ではありません。ドラマチックな展開もありません。

 しかし、友人が言うほど悪くはない。むしろ、これはこれでアリだな~と思います。

 何がアリかというと、作品を盛り上げるための“あざとい演出が全然無い”という淡々とした展開が、ある種のサッパリとした清涼感を感じさせているのです。

 私は一本も満足に観たことないんですが、小津映画ってこんな感じなのかな~?とか思いました。

 もちろん、友人が指摘していたような問題点は私も感じました。もっとドラマチックな展開が無いと、時代劇という“ファンタジー空間”を成立させるリアリティーが乏しくなってしまいます。

 例えば、山田洋次監督の藤沢時代劇三部作が高い評価を受けたのは、クライマックスに向かって物語が盛り上がっていったからですね。そして殺陣バトルでクライマックスを迎える。

 そのためには、登場人物の葛藤がもっとあってもいい。

 が、それを排除して淡々と進んでいく物語の中で、クライマックスの“二つの対決シーン”がより際立って、兄妹と、兄弟のように育った使用人の三人の心が交錯する瞬間、幸福な未来を暗示させて終わる・・・というところは、さすがに藤沢周平!という感じがしましたよ。

『山桜』の東山君は、全然しゃべんないので、なんかウルトラマンっぽかったんですが、今回は、結構、しゃべります。でも心の葛藤が見えないので、見ようによっては冷酷なヤツにも思えたんです。

 特に剣友を上意討ちにするのに、さっぱり葛藤が無い。いくら侍だからって、命懸けて戦わなきゃならんのに、精神が強靭過ぎますよ。眠狂四郎じゃないんだから・・・。

 まあ、原作がそうなんでしょうけど、ドラマとしては、剣友を心ならずも斬った後に、諸悪の根源だった西岡徳馬演じる侍医を討ち果たす・・・みたいな展開があった方がカタルシスを感じられます。『隠し剣・鬼の爪』『必死剣・鳥刺し』がそんな話でした。

 だってね~、片岡愛之助演じる森衛は完璧なまでに熱血正義漢なんですよ。何にも悪くないのに、殿様の面子潰したってだけで上意討ちって、それ、おかしくない?って思いましたね。

 私は、藤沢周平の作品の、こういうサラリーマン哀歌みたいなところが余計だと思っているのです。私自身が「俺の生きざまは俺のルールで決める! お前らのルールを俺に押し付けるんじゃねえっ!」ってタイプだから、どうしても感情移入できない。

 でも、この作品は菊地凜子の型破り女の登場によって、ラストでガラッとテイストが変わり、冷酷非常なサラリーマン侍の東山君が、まるで「鬼平かよ?」って感じの粋な計らいを見せて去っていく・・・という展開で、本当に後味良く終わるのです。

 それと、尾野真千子と勝地涼が良かったっスね~。

 東山君と菊地凜子って、何かレプリカントっぽいというか非人間的な感じがするんですよ。そこに尾野真千子と勝地涼の人間的な存在感の綺麗な感じでうまく中和しているような気がしますね。

 そして、殺陣シーンは、非常に良かったですね~。

 友人は低い評価でしたが、私から観ると、物凄くスリリングな立ち回りをやっているのが判る。これは、演じる役者は大変だったと思いますよ。ごまかしが無いんです。

 高瀬先生は不本意だったらしいのですが、随所に見ごたえのあるギリギリの剣の攻防が展開されていて、ヒヤッとする場面が何カ所かあり、攻防の中で武術的な展開をいくつも見せてましたが、私は凄くいいと思います。

 惜しむらくは、もう少しカットを割って効果的に見せる編集がされていたら、さらに良かったんじゃないかな~?と思いました。

 例えば、スネを斬っていくのを足を上げて避けたり、左肩に刀をかつぎあげて受け止めるとか、平突きを続飯付けにして受け流すとか、非常に高度な攻防の手を見せていて、ああいうシーンを流れの中でそのまま見せたのではもったいないし、攻防の中での感情の動きが出た方がもっと面白くなったでしょう。

 私は、その難しさとか怖さが判るので、「うひゃ~、これは怖いぞ~」と思って見てましたね。

 特に東山君と愛之助は、ほぼ互角の腕前なので、真剣での立ち合いをやっているうちに競い合う快感に浸ってしまって、ついニヤついてしまう・・・とか? そういう描写があると、もっと面白くなっただろうな~と思いましたね。

 ちょっと、そういう面も匂わせるようなやり取りがあるんですが、もう少し露骨に出して、「どうせ、討たれるなら、貴様ととことんやり合ってみたかった・・・」とか愛之助が言って嬉しそうに死ぬとか? そういう『たそがれ清兵衛』の田中泯さんみたいなのが出ると、文句なく傑作になったでしょうね。

 それと、菊地凜子と勝地涼が剣術の稽古している昔の回想シーンなんかがあると、もっと良かったでしょうね~。それで、凜子が東山君から一本取るシーンとかあると、もっと面白い。でないと、最後に凜子がやたら強いのが唐突過ぎるかも?

 ともかく、この作品。一見の価値は十分にあると思います。私は『山桜』より面白いと思いましたよ。あの作品は殺陣をクライマックスに持ってこないから、どうも締まりが無かった。やっぱ、殺陣はちゃんとクライマックスにないとね~。

 高瀬先生は不本意だったかもしれませんけど、監督の狙っていた作品のテイストは、きちんと出ていたんじゃないでしょうか? 後は好みの問題でしょうね。私は嫌いな作品じゃありません。


 ところで、先日、畳表を巻いたマキワラで試斬りやってみて、刀によって斬れ味がまったく違うということを改めて痛感しました。

 私が未熟なのもありますが、それにしても刀でこんなに差が出るとはな~?と思って、試斬り用の刀を一振り欲しいと思って、横浜名刀会に月々の支払いに行った時に社長さんに聞いてみました。

 数振りの試斬りに向いた刀を見せてもらいましたが、中で「これは物凄い斬れるよ」と見せてもらったのが濃州関住兼氏の刀。

 関物というと美術刀剣としてはあまり評価されていませんが、最上大業物で有名な関の孫六兼元を代表として、実戦一辺倒の刀の産地として有名です。

 一説に、赤穂義士が討ち入りのために関の刀を揃えたという話もあります。それほど斬れ味が優れて頑丈だったのでしょう。

 実際、清心館の佐原先生の道場で試斬りを体験させていただいた時に、最も上手い方が、関の孫六兼元が物凄く斬れたという話をされていましたし、太極拳と居合をされている河原達先生も、兼元が凄く斬れるという話をされていたと記憶しています。

 そういう訳で、この関の刀を選びました。

 茎を見ると、さほど錆びておらず、それほど古い刀ではないようです。新刀か新々刀、場合によっては明治以降の現代刀かもしれませんね。刀身はやや短か目で反りは浅く、刃渡りは二尺二寸三分くらい。

 しかし、三本杉の尖り互の目の刃紋が兼元風で、刀としての面白味はありませんが、肥後拵えの素朴な外装と合わさって、エキスパートが使う飾り気のないコルト・ガバメントを思わせます。

 鐔も小さ目なので居合にも向いています。伯耆流にはもってこいかも?

 派手さが皆無なので、ちょっと前の私だったら、素通りしてしまったでしょうが、実用を考えると中々たのもしい感じがして気に入りました。

 もっとも一番の理由は、“安かった”からですよ。この長さで外装もちゃんと付いていて16万円という破格の値段で「物凄く斬れるよ」と言われたら、買うしかないです。

 次のメイプルホールの稽古の時に、また試斬りやってみようと思っていますが、今度は台もきちんと用意して、この刀の実力を実験してみようと思っています。

・・・とまあ、またまた刀コレクションが増えておりますが、いずれ、会員さんが上達して自分の稽古会を持てるようになったら免許代わりに差し上げるつもりでいます。

 だってね~。この刀達は私が死んだ後の世にも残っていきますからね~。

 でも、何か戦国大名みたいだな~? 「褒美に、コレをとらす・・・」なんつって、刀あげるの・・・。

 刀は中古車から新築の家やマンションが買えるくらい、値段に幅がありますけど、そんな刃物は世界中で日本刀だけですよ。

 現代ではヤクザが持つ凶器みたいなイメージで見られがちな日本刀ですが、それは女の発想です。日本男児なら、日本刀の一振りくらい持ってないといけません(極論?)。

PS;住んでるマンションが例の地震で外壁にヒビが入ったりしたらしく、今月一杯補修工事があるというので、窓から部屋の中が見えないように、ホームセンターにカーテンを買いに行きました。カーテンつけたら窓から入る熱を遮断したからか、冷房の効きが格段に良くなりましたね~。こんなに違うんだ~?と感動。ついでに“タイル針”というのを発見して買ってきましたけど、白井流や香取神道流の針型手裏剣くらいの大きさなんですが、昔、武道医学のパリッシュ先生から「畳み針だ」とのことで貰ったものと同じで、あれは「タイル針だ」って言っていたんだな~・・・と、20年ぶりに判明しましたよ。

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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