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田中光四郎『日子流小太刀伝授』

 クエストさんから田中光四郎先生の日子流の第三弾DVDが出ました。

 前二作も見ていたんですが、「これは、下手に真似して大怪我する人が出るんじゃないか?」と思って、敢えて御紹介、推薦することは遠慮していました。

 田中光四郎先生が不二流体術の宗家だった頃からお付き合いさせていただき、もう、十数年は経過しますけれど、不二流を離れて日子流を新たに立ち上げた経緯について聞く限り、いろいろと思うところがあって、敢えて距離を取っていたというのが、偽らざる本心です。

 私自身も同時期に分裂騒動を体験しました。

 組織としての活動を図る場合、複数の人間のいろいろな思惑が交錯します。主宰者の考えから離れていくのは避けられないのでしょう。

 人それぞれ自分が正しいと思って行動するのが常ですから、単純にその是非を論じても意味がありません。

 正直いって、私は田中先生にも至らない問題点はあっただろうと思っています。

 何故、そう思うかというと、私も田中先生とお付き合いしている中で、「光四郎先生も泥酔するとカラミ酒で困っちゃうな~、もう~(苦笑)」と思ったことも二度や三度ではありませんでしたし、私自身も自分の会で問題が起こった時に、「あ~、もうちょっと何とかできなかったかな~?」と反省するのが常だったからです。

 だから、今現在、不二流を担ってらっしゃる方々にも言い分はあるでしょう。

 先日のチャリティー演武・演奏会の時に光四郎先生とお話している時に、「私は喧嘩屋だ。喧嘩屋を仕込むことしかできない・・・」みたいなことをおっしゃっていたと記憶しているんですが(スイマセン。酔ってたから正確かどうか不明です)、その時に「そうですね~。師匠にまで喧嘩売っちゃうんですからね~」って、ギャグのつもりで言ったんですけど、何かイヤミになっちゃいましたかね~。光四郎先生、ごめんなさいっ!


 私が武道・武術関係者と一定の距離を置いているのは、「深く付き合うと喧嘩になる」
という観念があるからですし、それは尊敬する師範であれば尚更、崩れた部分は見たくないと思うからなんですよ。

 どんな達人であっても、いや、達人であればある程、精神の中に狂気の部分を濃く持っているものです。

 考えてみてください。拳で殴ったり蹴ったり、投げ飛ばしたり、首を絞めたり、あまつさえ日本刀でぶった斬る練習を冗談抜きで真剣にやるんですよ?

 まともな神経であろう筈がないでしょう?

 武術を修行する者は、人間の根源的な動物本能が強いからこそ、それを制御しようとして学ぶ側面があると私は思っています。

 その点で、田中光四郎先生は典型的な武術家なんですよ。

 人並み外れた物凄い戦闘意欲(動物本能)を、苛酷な修行で制御し続けて生きてきた人物だと私は思っています。

 ぶっちゃけた話。獣のように生き死にに直結した戦いをしたいという欲求があって、それを人としての倫理観で押さえ付けるのに修行せざるを得なかった人だと思います。

 おとなしく市民として普通に生きていくのに苦痛を感じてしまうのでしょう。

 しかし、無頼なだけの人ではなく、「人が人として人らしく生きていくのはどういうことか?」と常に考える知性の人でもあります。

 私が最初に光四郎先生にお会いした時に、まず感じたのが、「非常に理知的な人だな」ということでした。

 自ら工夫された武術技法も、極めて緻密に組み立てられたものでした。決して感覚的に他流を寄せ集めしたものではありません。

 極めて実戦に即した縮地法・交叉法・体捌き・崩し・打拳・・・などを有機的に組み上げて形作られていました。

 また、戦闘理論を極めてシンプルにまとめられている点にも驚きました。

「こうやって敵を潰す」という方程式を明確に持っていらっしゃったのです。

 そこから逆算した稽古法を体系化されている点にも、極めて理知的な才能を感じさせました。

 普通、既存の流派を学んでも自分なりのものを作り上げられる人は滅多にいません。

 例えば、私なんかはそういう能力は致命的に欠けていて、だからこそ、できるだけ多くの他流のデータを集めて、組み合わせていくしかできませんでした。よって、オリジナルのものはほとんど無いに等しいのです。

 しかし、光四郎先生はそれをやってのけていたのです。正しく天才です。

 そうですね~。こういう先例は、青木先生が新体道を創始したくらいしかないんじゃないでしょうか?

 私が学んだ小林先生も、稽古内容は嫡流真伝中国正派拳法と太氣至誠拳法そのままであり、練習法の工夫はしても、練習内容そのものに手を加えたりはしていませんでした。

 甲野善紀氏の技なんて、合気道・鹿島神流・駒川改心流・民弥流・大東流等からパクッてアレンジしていますから、本人が主張するようなオリジナリティーは全然ありません。

 最近、DVDで観た『護道』も、原理的には上原清吉先生の本部御殿手から採り入れられているのでしょう。以前に「躰全道」と名乗られていた頃に本で見たやり方とは根本から変えられているのではないか?と思えました。

 そもそも、古武術であっても、長く伝統が続く間に風俗習慣が変化するのに併せて微妙に変化しているものです。

 戦国期の抜刀術が太刀の操法であり、打刀を刃を上にして帯に差すようになってから根本的に変革されたように、甲冑武術から素肌武術となり、さらに明治以降の生活習慣の変化によって正座による抜きが一般化していったように・・・。

 伝統文化がどうこうと論じるのなら、そういった時代の変遷による変化も考慮しないと嘘になってしまいます。


 さて、それで『日子流小太刀伝授』ですが、私は、本当に最近、稀に見る優れた内容であると思いました。

 見事!の一言。

 前作の小太刀、護身術では、まだお弟子さん方がこなれていませんでしたが、今回は、光四郎先生が日子流を興す切っ掛けとなった木村真実さんの上達ぶりに本当に驚かされました。

 まだ、運足などに甘いところは残っていますが、もう以前とは別人のように気迫も澄んで集中し、鋭い攻撃にも迷いがありません。

 よくぞ、短期間でここまで育てられた・・・と、私は改めて光四郎先生の素晴らしさに気づかされました。単なる酔っ払い爺いじゃないな~・・・と、感動しました。

 しかし、光四郎先生の指導を真正面から受け止めて精進されたであろう木村真実さんも、見上げた根性だと思います。

 光四郎先生御自身も、無駄な力みが抜けて、過去最高の出来ではないでしょうか? 齢七十を超えた人間の動きだろうか?という驚きを感じます。


 これは、是非とも、うちの会員にも見せて(買わせて)、性根を据えて修行すべし!というべきだな~と思いました。

 武術の実戦を考えるすべての人に見てもらいたいDVDであると、今回は自信をもって大推薦させていただきます!

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
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