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中国武術、知らな過ぎだよ

『修羅の門』の新シリーズが始まって、ワクワクしながら読んでおります。

 矢嶋師範代から、「今度は中国武術と闘うみたいです」って聞いて、楽しみにしていたんですね。

 でも、スイマセン・・・正直言って、川原さんって、中国武術知らな過ぎませんか?

 いえね~・・・昔、『武術(ウーシュウ)』のライターやってた頃から思ってたんですけど、フルコンタクト空手や格闘技の愛好者って、空恐ろしくなるほど、武術全般に対する知識が無かったりするんですよ。

「何? 発勁? あの気で打つとか何とかいうインチキなやつだろ?」とか、「合気? 気合で飛ぶとかいうインチキなやつだろ?」って具合に、もうね~、最初っからインチキだと決めつけて顧みない人が多かったですね~。

 確かに、インチキな中国武術家や合気武道家が少なからず存在していて、そういうヤツに限ってメディアを使って露出しまくっていたのも事実です。

 実際、今だって大して事情は変わっていません。

 何しろ、TVでは無敵の達人のごとく振る舞いながらも実際にまともに立ち合えば連戦連敗することから武術界の生ける伝説となっている甲野善紀氏に比べても、1/40くらいの実力か?ってな人が自身の武術サークルを組織していたりする現実があるんですから、「もしかして全体的な武術業界の平均水準からすると、甲野氏は十分に達人と呼べるに値するのかも?」ってくらい武術界のレベルは低いのかもしれないからです・・・。

 何で、こんなにレベルが低いのか?というと、武術は乱取りとか試合とかやらずに型の稽古を繰り返すだけなので、生まれてこの方、一度も他人とまともに殴り合ったことのない人が年数だけ重ねて指導者になったりするからなんでしょうね?

 本当に、今年、シダックスで会った人なんて、チワワと闘っても負けるんじゃないか?ってくらいひ弱でしたよ。

 誇大妄想なんだろうと思って老婆心で「正直いってあなたの腕前で武術道場をやろうなんて無理だから、しっかり実力をつけてからにした方がいいよ」と言ったんですが、その日のうちにブログで私が見る目が無いだの、自分は天才だのと書いていたそうで、矢嶋師範代が忠告したら慌てて消していましたが・・・。

 河野智聖先生とも知り合いだと言っていたのでイベントの時に聞いてみたら、名前も知らないとのことで、「外見はエイリアンのグレイみたいで、腕が僕の1/3くらいの太さしかないんです」って外見の特徴を説明したら、「あ~、その人だったら・・・」と思い出されて、単に河野先生の講座を1、2回受講しただけの人だったそうです。

 ちなみに、この人、柳生心眼流の吉田先生の弟子だったそうで、「最近、吉田さんは衰えた」とか上から目線で論評していましたが、心眼流の吉田先生といえば甲野氏に習いに行って、言われるままにしたら逆に甲野氏をビタンビタンにこかしてしまって恐縮して帰ってきた・・・ってくらいの天然で強い古武術界の喧嘩番長と噂される達人ですよ。

 だから、「ホンマかいな? 第一、自分の師匠を“さん付け”で評するか、フツー?」って、苦笑しながら聞きました。習ったのは事実かもしれませんが、およそ何も体得できていないでしょう。そのくらい鍛えた形跡がまったく無い人でしたね。

 武術は筋肉を鍛えなくても高い威力を出せますが、それは全然、身体を鍛える必要がないという意味じゃありません。

 むしろ、身体を練り込み神経を鋭敏にし身体感覚を研ぎ澄ます修練は漫然と筋トレしたり厳しいスパーを繰り返すより難しいのです。

 型稽古も、技の手順を覚えることが目的ではなくて、総合的に武術体を練ることが目的なのです。

 だから、本当は、武術体を練ったら、今度は相手の攻撃に対応する訓練も必要なのですね。ただし、闇雲に乱取りしたり自由組手やっても技が使えないので、力任せにならざるを得ない。重要なのは約束組手でしっかり技の用法やタイミングの取り方、相手の潰し方を学ぶことなんです。

 そして、そこまで教えてくれる武術道場は極めて少なく、型だけで終わってしまうところが大半なので、必然的に闘えるようにはならない。だから、闘っても勝てない。弱いということになっていく訳ですよ。

 つまり、武術を習いに行っても戦い方を教えてくれないので未完成なままなんですね。

 よく、「型だけやっていて強くなれるのか?」って疑問がありますが、戦闘理論を知らないまま型だけ学んでもダメだと思いますよ。ほとんどの人が30年くらいやり続ければ、ある日、突然、達人のようになれると信じているみたいですが、戦闘理論を習わない限り、無理です。

 中国武術の多くは表演武術として型の美しさを競う身体表現のレベルを高めることが目的化されているので闘い方は学びません。

 だから、闘えない訳です。だって、闘い方を練習しないんだもん・・・。

 でも、本来の中国武術は闘うために考案されて長く研究改良され続けてきたものなので、戦闘理論さえ理解すれば、あっという間に必殺武術に変身します! これは自信を以て断言します! え~、そりゃあもう、絶対に間違いない!

 仮に表演武術のチャンピオンでも私が指導すれば一日三時間で一週間も教えれば、本物の中国武術の遣い手に生まれ変わることができます!

 実際、以前、表演の中国武術しかやったことのない人がセミナーに来られていましたが、物凄い実力アップしてしまいましたよ。喧嘩やったら物凄い強いだろうな~と思う。

 今だに「中国武術なんか弱いよ」とか、「合気道なんかただの踊りだよ」とかほざいている人は、いかに自分が無知蒙昧で武の世界の広さを知らないか?という点を反省しなきゃいかんと思いますね。

 ただし、ルール決めた試合じゃあその強さは発揮できません。何故なら、試合向けに考案されていないからです。

 武術は生き死ににかかわる戦闘状況を勝ち残るために研究されてきたものなので、ほとんどの技が試合じゃ使えないんです。武器や隠し武器、毒までも使うのが、その証拠ですが、素手に限っても、通常の武道や格闘技の概念からは考え及ばないでしょう。

 攻撃一つ一つが確実に人体に致命傷を与えるためのものであり、これを試合で使えば、死人か半身不随になるかのどちらかでしょう。

 考えてみてください。目玉をくりぬく・耳を引き千切る・鼻の穴を引き裂く・喉仏を踏み潰す・金玉を掴み潰す・頸骨を捻り折る・背骨を踏み砕く・・・なんて技を解禁したらどうなりますか? 試合そのものが殺人未遂ですよ。

 でも、こういう技は武術では当たり前なんです。「やる以上は敵に情はかけるな。殺せ!」ってのが武術の考え方であり、だからこそ、「決してやってはいけない」と教える訳ですよ。

 で、唯一、実践が許されるのは、命がかかった時です。

 先週、地元の新聞の取材を受けたんですが、女性の記者の方だったので、「何で武術なんかやるのか? 使う機会なんか一生ないのでは? 相手が何人もいたり武器を持っていたり強そうで、とても勝てないと思ったら逃げませんか?」と言われたんですね。

 私は、「あなたは自分の子供が通り魔に襲われていたのを見たら、どうしますか?」って聞きました。

 すると、えっ?という顔をされて首を捻ってらっしゃいました。

「自分の大切な人が殺されそうになっていたら、相手が強かろうがどうだろうが、誰だって助けようとしますよね?」と言うと、「それはそうするかもしれませんね」と言われていました。

 私は最近、武術は弱い人間が自分や自分の大切な人達を護るために必死で研究してきたものだと考えています。

 どうしてか?というと、もともとが体格や体力に秀でた強い人間が考えたものじゃないと思うからです。

 体格が小さくて体力も腕力も人並み以下の人間が考えたような技術体系なんですよ。

 あるいは、老人になって体力も反射神経も衰えてしまってからでも遣える技術が武術なんですね。

 そりゃあもう~、よくぞここまで考えたものだな~?と感動してしまいますよ。

 私なんか、本当に全然、才能も素質も無かったし、努力も人一倍続けました(30前後の頃は一日10時間くらい練習していた)けど、思うような成果は得られず、普通に試合や組手をやっても勝ったり負けたりのボンクラそのものでした。

 けれども、武術って、こんな才能も素質もなくてもちゃ~んと体得できるし、年齢重ねても上達していけるんですよ。正直、今までの人生で今が一番、実力あると思いますし、恐らく、今後10年以上、向上していけると思います。

 才能も素質もない私がこれだけできるようになったというのは、武術がそれだけ優れているという証明ですよ。こんな素晴らしい身体文化は普通のスポーツには無いでしょう。

 中国や日本の武術が達したレベルは人間の通常の可能性を超えているんです。

 だから、武術や格闘技を描く漫画にも、そういう武術の凄さをリアルに描き出して欲しいんですよね。

 漫画の世界で中国武術の凄さをきちんと表現していたのは、第一に『拳児』であり、『史上最強の弟子ケンイチ』や『ツマヌダ格闘街』だと思います。

『バキ』も頑張ってるけど、やっぱり板垣さんは自分で中国武術やっていないから、ちょっと表現に首を捻るところがありますね~。合気道の塩田剛三先生をあそこまでカッコ良く描いたのは拍手しますが・・・。


 けれども、漫画にしろ小説にしろ中国武術を使うヒーローがリアルに描かれてない理由の多くは、我々、武術マスコミにかかわる人間が解りやすく表現してこなかった点にも原因があると思うんですね。

 中国武術の専門誌が無くなってから随分と時間が経過していますが、当面、復活の兆しは無さそうです。総合武術雑誌の『秘伝』だけがありますが、これも置いていない書店が増えていて、部数が減っているのは間違いないところです。

 恐らく、中国武術マニアがインターネットから情報を得ればいいと考えるようになったことも大きいのではないでしょうか?

 しかし、総合的な情報を提供する専門誌が必要ないとは思いません。結局、情報の偏りが読者に見透かされてしまったことと、専門的過ぎる知識や用語をそのまま羅列してしまう無愛想さが普通の武道や格闘技をやっている人達の偏見を助長してしまった点に遠因があったのかもしれません。

 それにしても・・・今どき、「あれが中国武術の秘技“発勁”か?」みたいに驚く描写というのも、私は逆の意味で驚かされてしまいました。

 発勁という言葉が紹介されて、もう40年くらい経過しているのです。それなのに、今だに実態が判らない神秘の技みたいに扱われている状況というのは、異常ですよ。


 次の本は、私の初めての武術理論解説書としたんですが、この一冊で発勁も合気も完全に理論解明するつもりです。格闘漫画を描いている皆さんは、是非、お手元に置いて参考にしていただきたいと思っています。

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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