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稲葉先生はサムライだよ・・・

 BABジャパンから稲葉稔先生のDVDが出るとのことで、一巻と二巻を購入させていただきました。
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 稲葉先生は最晩年の国井先生に師事されて、あまりの吸収の早さに国井先生が驚き、宗家を託そうか?と真剣に考えられた・・・という逸話のある天才的師範として業界の一部では昔から有名な方です。

 ネット動画などでいくらかは見ていましたが、以前から稲葉先生の技が見たいな~と思っていたので、DVDが出ると知って、これは是非とも購入せねば・・・と思いました。

 何度か、清心館の佐原先生からも稲葉先生の恐ろしい逸話(シャレが通じない人だ!とか? ガ~ン・・・俺なんか「無礼者っ!」って首すっ飛ばされるかも?)を聞いていたので、安心してDVDで拝見できるのは有り難い限りだと思っています。

 もうね~。私のイメージでは星一徹みたいな感じの先生になっていたので、DVDも黙々と黙って演武されているだけなのかな~?と思っていたんです。

 ところが、物凄く丁寧に、細かく説明しながら技の実演解説をされていて、本当に、買って良かったな~と思いましたよ。

 武術のDVDで、ここまで細かく説明されているものって、あんまり無いですよ。

 私だって、こんなに細かく解説しません。

「見てわかんないヤツに説明したってわからん!」というのが、割りと一般的な武術の世界の常識で、説明が一切無いDVDもざらなんです。

 その点からしても、こんなに説明してくれる先生は希少だと思います。

 しかし、ま~、ずう~っと、説明しっぱなしなんですから、恐れ入りました。

 私も何度もDVD撮ってるから解るんですが、説明しながら技も実演するのって、難しいんですよ~? これだけ説明し続けながら実演するのは物凄く疲れる筈ですし、かなり頭脳をフレキシブルに駆使できないと無理なんですね。

 私のお目当ての抜刀術はまだ三巻目のようなので見れていませんが、説明の時にさりげなく、スルッと抜刀された自然さには、逆にギョッとしましたよ。

 佐原先生のお話では、稲葉先生の相対しての抜刀術を16mmカメラで撮影したら、一コマ目で刀の柄に手をかけたのが映っていて、次のコマでは抜いた刀の切っ先が相手の喉元に突き付けられていた・・・のだとか? 16mmフィルムって、毎秒20コマ前後くらいかな~?と思うんですが、だとすれば、単純に計算して1/20秒? 0.05秒ってこと? ひょっとすると、速撃ち世界一のボブ・マンデンに匹敵するのかも? ひょえ~・・・。どんだけ速いの~?

 人間の反射神経の限界って、0.2秒くらいなんだそうですが、ごく稀に限界突破できる人もいるみたいですね。

 稲葉先生の技を拝見しますと、ちょっと中国武術の発勁のような感じもします。気合鋭く爆発的な当たりがあって、あれは掛けられた方はたまらんな~と思いました。

 やはり、ハラを中心に鍛えられているからでしょうか? 動きの中心もすべてハラからで、気合も、ィエィッ! トォッ!・・・と、腹圧で圧縮した内気が絞り出される感じですが、無理やりな印象がありません。

 体の練りに関しては、肥田式の影響もあるのかな~?という感じも受けましたが、ヨーガ的な柔らかさも感じますね。この辺は稲葉先生が独自に研究されたのではないでしょうか?

 非常に論理的に理に適った説明をされるので、中級以上の修行者には大いに参考になるのではないか?と思います。

 ただ、まったくの初心者には内容が難し過ぎて、皆目、理解できないような気もしました。ある程度以上の武術経験者でなければ、具体的な理解は難しいかもしれません。


 思うに、稲葉先生が国井先生に師事した時に、異常に吸収が早かったというのは、山口清吾先生に合気道を学ばれて、身体が練れていて、感覚が鋭かった・・・という点が大きく働いていたのではないでしょうか?

 どうしてそう思うか?というと、私のところでも覚えが早い人は合気道経験者が多いように思えるからなのです。

 K塚師範代なんて、大学合気道部の主将だったそうなんですが、一年くらいで異様に上手くなってましたからね~。


 勝手なイメージで、私は稲葉先生は技を隠して説明もしない方だと思っていたんですが、ひょっとすると、このDVDを最初で最後にするつもりで臨まれたんじゃないか?という、そんな静かな覚悟のようなものも感じられました。

 何だか、淡々と説明されながら、想いの深さのようなものが感じられてならない。

 演武も、伝統的な古流の通り、御自身が打ち太刀をやって、お弟子さんに技を掛けさせておられます。自分がやりながら説明した方が遥かに楽なんですが、敢えて、セオリー通りにやり、詳しく説明されている中だけで御自身が技をやってみせられています。

 何だか、見ているうちにジーンとしてくるものがあります。

 これは、敢えて率直に申しますが、恐らく、稲葉先生御自身、老いを実感されていらっしゃると思うのです。動けるうちに残しておきたいと考えられたのではないか?と。

 何より、お弟子さんの受けを取って倒される度に、少ししんどそうに起き上がってこられている姿に、嘘偽りのない有りのままの姿を晒して見せようとする峻厳な男気が感じられるのです。

 合気道家でもある稲葉先生の技だから、もっと軽く流麗な美しい演武を想像していましたが、カッコ良く見せようとかいう自己顕示的な色がまったく無く、泥臭く、愚直な、リアルな有りのままを晒して見せようとする古武士の風格が感じられたのです。

 まるで、自らの生涯かけて研鑽した武芸の本質を、ここに刻んでおこうとしているかのように、道場の外が暗くなっても淡々と説明演武を続けられています。

 だから、このDVDには何か魂が塗り込められたかのような異様な気迫も感じられるのです。

 こういう表現が適切か?は別として、私には、『遺書』のようにも感じられました。

 志しのある方は、絶対に買って損のない作品だと思います。今の時代にも、こんなハラの据わった日本人が居るのだ・・・と知るだけでも価値があるでしょう。

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
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