コンテントヘッダー

『るろうに剣心』は大傑作だよっ!

 待ちに待っていた『るろうに剣心』、地元の映画館MOVIX橋本で観てきました!

 前日、DVD撮影の時に香港アクション映画マニアの小塚師範代が「早速、観てきました」と、感想を言いそうになったので、「待てぃっ! 俺は明日、観に行くから、それ以上、言うなぁっ!」と口止めして観に行ったんです。

 TVでメイキング風景とか観ると、相当に大掛かり。でも大掛かり過ぎると、下手するとアクションが演出過剰でチグハグな印象になってしまいかねないかも?という一抹の不安もありました。

 時代劇とは言っても、『るろうに剣心』は一種のファンタジー伝奇物であり、リアルな時代劇にしたらダメだろうし、かといってデタラメにやり過ぎてもアニメならアリでも実写だと浮いてしまって乗れない・・・。

 実は、一番、難しいかもしれません。

『カムイ外伝』の時は、正直言ってしまうと、CGは要らなかったでしょう。実写の良さは生身でやっているというリアリティーであり、何でも描けるからという意味でCGを多用すれば、リアリティーはむしろ壊されて白けてしまいます。

 酷評する人が多かったのも、大部分がそこに原因があったと思います。

 CGはCGだと気づかれないくらいの精度で使うか? あるいは、CGアニメの味わいを楽しむ画作りをするか?でないと白けるだけでしょう。

 時代劇というのは、実のところ、ファンタジーの要素が濃いと思われます。

 何しろ、100年以上前の日本の風景や生活風俗なんか、誰も解らないからです。

 例えば、殺陣に関しても、日本の時代劇映画の殺陣の手法は、歌舞伎から流用されたものですが、歌舞伎というのは発祥の時点でリアリズムではなく“傾(かぶ)く”という誇張、デフォルメが施されたものだったのです。

 私は以前、「江戸時代以前の日本人はナンバで歩いていた」という説に批判論を提示してきましたが、ナンバという言葉の語源が、歌舞伎や日本舞踊のものであり、しかもデフォルメされた奇妙な動きという意味合いで伝わっていて、とても一般的なものとは言えなかったからなのです。

 そもそも、わざわざ日常の普通の動作を「ナンバだ」なんて言いますか?

 専門用語というのは、特定の学問的領域でネーミングするものであって、それは学問的な意味での必要性があるから名付けているに過ぎません。

 江戸時代の用語辞典にまで、「飛脚の走り方をナンバ走りと言う」なんて大嘘書いてあったりするんですから、阿呆臭い限り。それをまた疑いもせずに流用するウッカリ者の武道家の多さには辟易させられます。本当に、ちったあ自分で調べてみろっての!


 脱線してしまいましたが、要するに、現今の時代劇の考証なんかも、その程度のいい加減なものだったりする訳なので、下手にリアリティーを求めてハンパな演出なんかするくらいなら、思い切って飛躍した表現をするのも大いにアリだと私は思っています。

 とは言っても、『るろうに剣心』は、作家の加来耕三氏が考証家として原作のアドバイザーをやっていたそうなので、意外に細かいところの武芸考証なんかがあったりして、私は結構、好きだったんですよね。やっぱ、マニア心をくすぐるんですよ~。

 黒笠・鵜堂刃衛が駆使する、松山主水が使ったという二階堂流平法の“心の一方”、天剣の宗二郎が使う超神速の歩法“縮地法”、斎藤一が使う平突き(肋骨の隙間を貫くために刀身を寝かせて突く技)“牙突”、盲剣の宇水が使う琉球古武術の武器“ティンベー(海亀の甲羅を使った盾)とローチン(手槍)”、古武術の隠し武器(寸鉄など)、二段突きの当て身の秘訣“二重の極み”・・・。

 あるいは、夢想願流(願立流)の松林左馬之助蝙也斎をモデルにしたと思しき“飛翔の蝙也”や、刀狩りの張が操る限界まで薄く作ったベルト状の軟体剣なんかは、インド武術カラリパヤットの武器ウルミンそっくり。

 歴史考証家として有名になる以前の加来氏は武道武術の本もよく書いていたし、家に伝わる東軍流の宗家も名乗られており、タイ捨流も学んだりされているので、武芸考証は驚くほどの水準ではありません(縮地法を脚力で駆使する技と誤解してた)が、マアマア詳しいレベルかな?と思っていました。

 そんな訳で、『るろうに剣心』は、創作だけではない実際の武術や実在した剣客なんかのモデルも混在しているので、それがファンタジー系の作品なのにリアリティーを生み出していた点なんじゃないか?と思うのです。

 そもそも、主人公の剣心が、実在した肥後の“人斬り彦斎”こと河上彦斎をモデルにしていると原作者自身が発言しているのです。

 赤報隊の生き残りの相良左之助やら、新選組の斎藤一、それに京都見回り組の佐々木唯三郎をモデルにしたキャラも出てましたよね?

 明治という時代を選んだのも慧眼ですが、ひょっとすると三船先生主演の『人魚亭異聞・無法街の素浪人』あたりが作品イメージの元ネタなんじゃないかな~?と私は勝手に思っているんですがね~?


 さあさあ、そんな『るろ剣』好きの私にとっては、今回の実写版映画を観る目は自然に厳しくならざるを得ない。

 主演の佐藤健に関しては、電王のリュウタロスが取り憑いた時の鮮やかなダンス・テクニックで身体能力の高さに注目していた面もあり、まったく文句は無かったですね。

 生身で剣心が演じられるとすれば、佐藤健以外には居ないだろうと思っていたんです。

 無論、風貌だけで選べば、もっと居るでしょうが、剣心の超人的な体技を表現できる役者となると真田広之に20歳ばかし若返ってもらうしかなかった?かも・・・。

 でも、仮に真田広之だったとしても筋肉質過ぎて剣心の風貌には合わなかったでしょうね? 見た目がヒョロッとして小柄で弱そうでないといけない。

 こう考えると、やはり佐藤健をおいて外には何人も演じられないでしょうね?

 しかし、他のキャスティングに関しては、どうかな~?と思っていたんですよ。実は。

 ところが、劇場で江口洋介の斎藤一を見て、そのハマり具合にいささか驚きました。

 鵜堂刃衛に至っては、吉川晃司のド迫力にはビビリますよ!

 そして、意外と言えば一番意外だったのが、武井咲の神谷薫! いや~、こんなにハマるとは予想外でしたよ。正直いうと、私、顔立ちがキツそうだな~と思って、あまり好きな女優さんじゃなかったんですけど、何か、凄く可愛いな~と思いました。

 意外とアニメ顔だったのね~ん?

 前髪パッツンなのがいいね?(何で?)

 子猫見つけてキャ~ッてダッコするところがいい。あ~、猫好きな私は猫好きな女に弱いんだよ・・・。また、この子猫が生後1~2ケ月か?ってくらいのミケ猫で可愛かったです。やっぱ猫といえばキジ白かミケだよね。早く、猫飼える環境になりた~い・・・。

 左之助の青木崇高もハマってましたね~。知らなかったけど、『竜馬伝』に出てた人なの?

 恵の蒼井優は、「それは違うだろ?」って思っていたんですが、やっぱり演技力の勝利ですね? 役柄のキャラを自分に引き寄せてしまってましたね~?

 弥彦の田中偉登は、「ちょっと幼過ぎるだろ~?」って思いましたが、続編で活躍しそうな予感がありますね。

 ただ、武田観柳の香川照之は・・・(苦笑)、“やり過ぎ”だよね。配下が御庭番衆でなかったのも原作ファンとしては不満ですが・・・まっ、面白いから、いっかぁ~?


 キャスティングに違和感が無くなった時点で、私はこの映画の世界観にスンナリ入れました。後は、やっぱり、アクション!

 下手なCGを使っていないのは良いとしても、そうなると役者のスキルとアクション演出、つまり、谷垣健治監督のお手並み拝見・・・ということになる次第です。

「親しいと言えるほどの知り合いでもない知人」という微妙さは、誠に批評しづらい点があるのですよ。お世辞とか嘘とか言うのは逆に失礼だと思う性格だしね~。

 もし、「こりゃあダメだぁ~」みたいな感じだったら、むしろ、私は一切、触れないでしょう。「見なかったことにしよう」という気持ちになる場合だってあるかもしれないでしょう?

 だから、実は結構、ドキドキしてたんですよ~。

 TVなんかでメイキング風景とか見たら、かなり凄いことやらせているんですね~。

 でも、そうなると、「アクション専門じゃないけど、すっげ~、頑張りました~!」って感じの水準で終わる場合がほとんどでしょう。

 近年の日本映画でアクション映画が奮わないのは、かつての東映カラテ映画や角川のアクション映画みたいなのを演じられる俳優が居ないということが大きいと思うんです。

 千葉真一、志穂美悦子、真田広之・・・といった、アクションができて演技ができる若手主役クラスの役者が居ない。だから、アクション映画が奮わないんだと思います。

『SP』の岡田くんはJKDやカリ・シラットのインストラクターまで取って頑張っていたけれど、でも日本的なリアルな現代アクションという枠組みの中ではアクション映画の醍醐味を堪能できるような作品にはならない。微温的にならざるを得ない。

『十三人の刺客』は非常に面白かったけれども、でも、迫力はあってもアクションの醍醐味という点では勢いに飲み込まれてしまった印象があります。旧作のような、もっと個人個人の戦うスキルの交錯する殺陣の魅力が欲しかった・・・。

 一連の藤沢周平時代劇の映画化も、もう明確に殺陣の活劇の魅力を描くのは二の次というスタンスがミエミエなんで、やっぱり私としては物足りないと言わざるを得ない。

『あずみ』は私は大好きなんですが、もうちょっとアクションの見せ方が良ければ、もっともっと面白くなっただろうな~?とは思います。続編で失速しちゃったし・・・。

 そんな最近の日本映画のアクションに飢えを感じている自分としては、もし、『るろうに剣心』がダメだったら、もう日本映画にアクションの醍醐味を期待するのはやめようと思っていました・・・。

 しかし・・・期待と不安が入り混じった中で観た実写版『るろうに剣心』は、冒頭から凄まじいばかりのスピード感溢れるアクションに、めくるめく万華鏡の世界にほうり込まれたような心地よい酩酊感を覚えました。

 素晴らしいっ!

 俺が求めていたアクションはコレだぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(マッハ!ですか?)

 どう動いているのかギリギリで確認できるくらいの目まぐるしい剣殺陣の中で、上に跳び、下に沈み、スルリと潜り抜け、多数の敵の中を文字通り縦横無尽に駆け抜けながら斬っていく剣心こと佐藤健・・・。

 心配だったのは、香港映画のアクションに慣れた谷垣監督が日本刀のアクションの風格を出せるのだろうか?という点・・・でしたが、もう、そんな心配は木っ端ミジンコ。杞憂に終わりました。

 むしろ、既存の時代劇の殺陣演出家では、このような斬新で独創的で、しかも挑戦的なアクションを構築することはできないだろう・・・と思いました。

 剣だけでなく素手で殴ったり蹴ったり逆関節を取ったり叩き伏せるように投げ倒したり・・・という描写は実に武術的実戦性に満ちていて、総合格闘技的でもありました。

 実は、このような描写は香港のカンフー映画では昔から当たり前にあって、武術は武器だけに頼らず、突き蹴りも使えば、肩での発勁や足踏み、足がらみや膝裏踏み崩しなんかの暗腿技法なんかも普通に使っている訳です。

 当然、日本の武術だって本式に戦う場合は、武器だけでなくて間合が詰まれば柔術や鎧組み討ち術なんかの技も使った筈なのですが、そういう殺陣は滅多にありません。

 文献で確認できる日本最古の柔術流派である岡山に伝わる竹内流には、飛び蹴りや浴びせ蹴りなんかまであるし、東北に伝わる柳生心眼流では鎧の上から掌の重ね打ちで威力を浸透させて心臓を止めることを狙った“鉄砲”という必殺技まであります。

 合気道の四方投げなんかも原型は腕の逆を捕ったまま後頭部から地面に叩きつけて首の骨をぶち折ることを狙った凶悪な技ですからね~。

 古武術の関節技って、本式の使い方は一瞬で関節を破壊することを狙っていて、悠長に関節を固めてタップさせるようになったのは明治以降ですよ。

 古武術が型稽古しかしないのは、まともに技を掛け合ったら死傷者続出してしまうからなんですよ。

 流派名は伏せますが、昭和まで伝わっていたある居合術流派は、真剣で組み太刀の稽古をする習わしを忠実に守っていたがために死傷者が続けて出てしまい、やむなく失伝させてしまったそうです。

 武術の技は殺傷術なので、禁じ手を設けてルール付きで技を競うようにしたら、もう別物になってしまうんですよ。

 このような武術の本質論に関しても、『るろうに剣心』では「殺さずの誓いをたてた元人斬り」を主人公にすることで考えさせてくれますし、能天気な活劇ではない。

 そして、「剣は殺傷の武器」という本音で生きる刃衛との対決は、最高に燃える展開でしたよ。

 吉川晃司のピカレスクなキャラは素晴らしい!

 アクションも背中で刀を持ち替えながら風車のようにクルクルと斬ってくる技は非常に見ごたえがありましたが、カムイの必殺技“変移抜刀霞斬り”の発展形かな~?と思いましたが、戸隠流忍法の道場で“影の一刀”という背中に回した刀を抜くトリッキーな技があるんですよね。あれが原型かも?

 あと、須藤元気と左之助のガチンコ格闘戦も面白いです。

 この辺は考証を気にする人は文句を言うでしょうが、私は違和感を感じませんでしたよね~。このくらいシャレの効いたところが無いと面白くない。原作は漫画なんだし。

 そういえば、左之助が斬馬刀を投げ付けておいてドロップキックかますところは、若山富三郎先生が『子連れ狼・冥府魔道』でドロップキックかますところへのオマージュなのかな?

 あと、剣心が壁を駆け上がってクルッと回って着地するところは『忍者武芸帖・百地三太夫』で真田広之が大阪城の天守閣で薙刀持った別式女軍団の攻撃を躱すシーンを思い出しました。『七人のオタク』でウッチャンもやってたね。

 何か、ここまで凄いアクション見せつけられると、昔、新日本プロレスに出てきた初代タイガーマスクが、凄いチャチなマスクと小太り体型で失笑されていたのに、いざ試合が始まるとアクロバットのような華麗な空中殺法を次々に繰り出すので呆気にとられて、「四次元プロレス」と呼ばれて熱狂的人気を呼んだのを思い出します。

 それに、剣心が身体を斜めにしたまま駆けていきつつ逆刃刀でバシバシバシーッと敵を叩き伏せていくところなんかは『精武英雄』の戦地で陳真が仲間を救うシーンのアクションを応用しているんでしょうね~。

 こういうアクション全般に谷垣監督の長年の演出実績の中から抽出された要素を組み合わせて化学反応が起こったような独創的アクションが生まれているんだろうと思います。

 何よりも、日本の殺陣の文化にちゃんと敬意を払った上での先進的なアクションを構築して見せてくれたことが嬉しいですよね~。

 ハリウッドのニンジャ映画なんかだと日本刀使ったカンフーが多いもんね~・・・(カンフーはカンフーで大好きなんだけど・・・)。

 あまりにも感動し過ぎて、高瀬道場の技芸会でお会いした時に貰っていた名刺を探してメールで感想を書いて送りましたよ。

 忙しくされているだろうから、仕事の依頼でもないのに安易に連絡しちゃあ失礼だろうと思って、一度も送ったことなかったんですが、今回は直接、感想を伝えたくなったんですよね。

 わざわざ、お返事のメールも頂戴しましたよ。

 この『るろうに剣心』が切っ掛けになって日本も新しいアクション映画のムーブメントが起こってくれることを期待しています・・・っつうか、他人事じゃなくて、私も物凄~いアクション映画の原作を必ず書くぞぉ~っ!と、作家デビューが決まった私は燃えておりまする。

 それにしても、大友監督がこんなアクション映画撮れる人とは思わんかった・・・。

PS;『るろうに剣心』は公開一週目で一位だそうです。実際、劇場でも若い人がたくさん観に来てました。

関連記事
スポンサーサイト
このページのトップへ
コンテントヘッダー
著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

FC2カウンター
リンク
最新記事
カテゴリー
FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

月別アーカイブ
ブログ内検索