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映画・本の感想

 年末年始はTVが特番ばっかりでつまんないので、日本映画専門チャンネルとかアニマックスとか観たり、本を大量に買い込んできて読み耽ったりしました・・・。

 それで、ちょっと感想を書いてみます。

 まず、幕末のテロリストとして名高い岡田以蔵を勝新太郎が演じ、薩摩の田中新兵衛を、あの三島由紀夫が演じたという伝説の作品『人斬り』を、久々に観ました。

 何と言っても、この作品、キャスティングが異様な豪華さ!

 坂本龍馬を石原裕次郎が演じ、仲代達矢演じる武市半平太を冷酷非情な革命集団の狂気を秘めたリーダーとして描いた点でも出色でした。

 勝新は腕は凄いけれどもピュアな暗殺者、人斬り以蔵を人間味たっぷりに演じていて、座頭市とはまったく異なるアンチヒーロー像(ひたすらダメな人間が最後の最後に男の意地を見せて死ぬ)を表現しています。

 しかし、この作品のおいしい役は、かの文豪にして衝撃の切腹自殺を果たした三島が、ナルチシスト全開で異様な迫力を表現した田中新兵衛に注目すべきでしょう。

 三島由紀夫がホモセクシャルだったのはつとに有名な周知の事実ですが、生まれついての貧弱な肉体を美輪さんに茶化されて傷つき、執念深く肉体改造に励んだことが知られています。

 ボディビルに熱中し、同時に剣道・空手道・合気道などの武道に入門したことも有名な話です。

 実際、うちの会のジェット爺ぃことUさんは、若かりし頃に半年だけ通った合気会本部道場で修行に励む三島由紀夫を見たことがあるそうです。

 ただし、「三島由紀夫は異常なまでの熱心さで取り組んでいた」とは当時の武道関係者の誰もが共通して評することながら、同時に「恐ろしく不器用で下手だった・・・」とも付け加えるところですから、よっぽどの下手さだったのでしょう。

 事実として、あれだけボディビルに熱中して筋肉を膨らますことに執心していたら、素早く流れるように動くのが基本である武道が上達するのは難しかったでしょう。

 まして、元来、身体虚弱であったということは、元々の運動神経も悪かったのでしょうから・・・。

 けれども、この映画での三島は、まさに“はまり役”で、その不器用さが逆に武骨な薩摩武士の性格にマッチしていて、殺陣のシーンでも一撃必殺の異様な緊迫感をかもし出しています。動きは堅いんですが、剣を構えた姿の迫力は演技とは思えない殺気が出ています。

 また、武市に反発して土佐勤王党を飛び出したものの、どこも武市の声が掛かっていて刺客の腕を買ってもらえず、行きつけの飲み屋でもツケが効かないとなって、情けなさに泣きじゃくる以蔵に会った新兵衛が、「よかよか、酒くらいわしがおごってやる」と言うシーンは、その後に武市に謝罪して復帰した時に、新兵衛に罪を着せる姉公路暗殺を依頼されて動揺しながらも友を裏切ってしまう以蔵の心情にも重なります。

 だから、土佐藩邸に自白に赴く時に、自決した半兵衛をも、「薩摩の田中新兵衛・・・」と自分が殺したと告白するのでした・・・。

 この作品、改めて自衛隊駐屯地でのクーデター呼びかけの後の切腹自殺という劇的な最期を遂げた後で観れば、三島のギラギラとした眼光に単なる演技を超えた異様な迫力が出ていて、感じ入るところがあります。

 出番は少ないながらも三島由紀夫がこの作品で最もオイシイ役柄だったな~?と思うと、演劇の世界で生き続けて欲しかった・・・と、惜しい気がしますね。


『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』も、やっぱり凄いですね~。

 円谷特撮の黄金期ではないでしょうか? CGが発達した現在の視点で観ても、凄いな~と思います。

 まず、冒頭で出てくる大タコの触手のうねくり具合が神技ですよ、もう。

 そしてガイラの怖さ・・・身長が25mという設定なのも怖いですね。

 サンダの細胞が海で増殖してガイラになった・・・という設定は、平成ゴジラの細胞からビオランテが生まれ、スペースゴジラが誕生したのを彷彿とさせますし、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』のラストで海底に沈んだゴジラの心臓がドクッドクッと脈動するシーンまでを想起させます。

 前作の『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』は、当初はフランケンシュタインとゴジラが戦う、いわば『キングコング対ゴジラ』の第二弾を狙っていたらしいのですが、この時期はゴジラのキャラクターに頼るのではなく、新しいクリーチャーを生み出そうと挑戦していた頃だったのでしょう。

 しかし、フランケンシュタインというよりはキングコング・タイプの獣人型となり、プロレスの影響が強く出た作品となりました。なんかサンダは白人プロレスラーで、ガイラはボボ・ブラジルみたい?

 最期は海底火山の噴火に巻き込まれて二匹は戦いながら海の底へ沈んでいった・・・ということになっていますが、作品の設定からすると続編を作るのは容易だったでしょう。

 無論、版権の問題でフランケンシュタインという名称は使えないでしょうが、SF作品として続編が書かれてもおかしくないように思えますね。

 例えば、『マタンゴ』が小説で続編が書かれたように・・・。

 怪獣映画というジャンルは世界でも日本のオリジナル路線で発展したジャンルなのですから、伝統芸としてちゃんとコンスタントに作るべきだと思いますね。

 東映系の仮面ライダーや戦隊シリーズは人気が定着しているのに、東宝系の怪獣路線が途絶えたままなのは、何とも残念です。

 ハリウッド版ゴジラも新生して2014年には公開されるそうですが、それに併せて日本でもシリーズ復活してもらいたいですね。

 いや、映画でなくてもTVシリーズでもいいと思いますよ。『流星人間ゾーン』を復活するという手もあるし・・・。あの作品、完結しないまま終わってるんで、東宝怪獣オール出演でやればいいと思います。

 ゴジラ・キングギドラ・ガイガンがゲスト出演し、ゴジラはゾーンファイターの危機に駆けつけて助ける正義の怪獣!という当時のヘドラ・ガイガン・メガロ・メカゴジラ・チタノザウルスとの対戦時代のキャラ設定が活かされていました。

 その後は、この時代のゴジラを「大衆に迎合して怒りを忘れて堕落した」と、否定的に語る人が多かったんですが、当時、ガキンチョだった私にとっては、ゴジラと言えば正義の怪獣で、これはガメラと共に私の世代には刷り込まれていると思います。

 だから、『ゴジラ・ファイナルウォーズ』も、X星人に洗脳されている怪獣たちがゴジラとの戦いで自我を取り戻していって地球を衛るために最後は団結して戦う!という『怪獣総進撃』的な設定だったら、もっと支持が広がったのではないかな~?と思うんですがね・・・ガイガンやカイザーギドラといった敵怪獣はカッコ良かったし・・・。

 私の精神は70年代のヒーロー番組で形成されてる感じがしますね~・・・。

『黄金の犬』も、改めてちゃんと観たら、凄い面白いのでビックリ!

 地井さんが凶悪な殺し屋を演じているので有名な作品ですが、ヤサグレ刑事の鶴田浩二が、もうほとんどダーティーハリーと化していて、敵をバンバン射殺しちゃうし、音楽がルパンや優作の遊戯シリーズ、『野性の証明』の大野雄二さんなので、ノリノリでしたよ(ちなみに大野さんのライブが相模原メイプルホールで1月27日にあります)。

 この頃の鶴田浩二は自分でアクションやる年齢じゃないんで、何だか違和感あるんですが、そこがまた男のロマンでカッコイイですね。今だったら動物虐待だって問題になるでしょうけど、ワイルドな作風が懐かしいです。


 さて、映画はひとまず置くとして、林田先生のお薦めで『荒天の武学』という新書を買って読みました。

 武道論でも知られる内田樹さんと韓氏意拳の光岡英稔さんの対談本です。

 もっとも、私はお二人が甲野善紀氏のお仲間なのも手伝って、これまであんまり本を読んだことがありませんでした。

 内田さんの本も二冊くらい読みましたが、どうも、読んでいてモヤモヤするな~?という感じで、結論として「この人とは合わない」と思っていました。

 光岡さんの本は書店で立ち読みしたくらいで買って読んだことはありません。

 何か、印象として「やたら小難しい文章を書く人だな~?」としか思わなかったのですね。具体的な技術解説が無いのも食指が動かない理由でした。

 でも、今回の本は割りとサクサク読めて、面白かったですね~。

 内田さんが「弱い武道家」だと自分を妙に卑下してたりするのが微笑ましいですが、それだけ光岡さんの実力に恐れをなして、いつもの上から目線論調が控えめになっているので読みやすかったのかもしれません。

 で、途中で何か私に当てつけて書いてるのかな?と思う箇所もあったんですが、まあ、見解の相違ってことで、私も、もうすぐ50なんで大人の観点で読みましたね。

 印象として、内田さんも光岡さんも非常に善人で純粋な人なんだろうな~?と思いました。だから、嫌な印象は受けませんでした。

 で、楽しく一気に読んで、内容を思い出そうとしたんですが・・・アレッ? 何か、サッパリ記憶に残ってないな~?と思いまして、何で記憶に残らなかったのか?・・・と考えてみて、はたと気づきましたよ。

 つまり、具体的な技なり術なりについての解説がまったく無かったんですよ。

 要するに、武術をネタにした哲学書だったんですね?

 私も学生時代に哲学本は結構読んでいたんで、それで面白く読めたんでしょうが、読み終わってから何か非常に物足りない思いが出てきた・・・それは世の中の諸問題について論じていながら具体策が全然無い・・・という点が物足りなかったのでしょう。

 また、光岡さんの「きれい事では済まない状況を如何にきれいに解決できるか」って・・・論理については、正直、私は賛成できませんでしたね。

「何できれいに解決する必要があるのか? もっとガムシャラに必死に汚くやってでも解決していこうとする執念も大切なんじゃないか?」と、私は思うんですね。

 研究家として言わせてもらえば、光岡さんは武術の定義を自分の希望的感覚で大衆迎合的に甘く語り過ぎているように思えました。武術って、そんな綺麗な代物じゃありませんよ。

 殺す技を修練した上での「人を活かす」という精神レベルに達するのであって、殺す技を体得していない人間が口先で「人を活かす」なんて言っていたらエセ宗教みたいで欺瞞にしかなりません。

 必要とあらば、どんな汚い真似をして「人非人!」と罵られようとも決然として実行する精神が必須なのであって、そこに他人の評価を求めない自己の生きざまを貫く意志の熱量を高めていくのが武術の修行じゃないでしょうか?

 綺麗とか汚いという美意識で語ることそのものが間違いだと思うんですよ。「一人殺せば人殺し。千人殺せば英雄」という価値観に繋がる非常に危険な思想の根が、そこに潜んでいますよ。

 本来、武術は兵法として徹底的に研究されてきたものが個人の自己防衛術の部分を抽出して広められたものであり、本質的には平和な時期に戦乱に備えて修行研究をする点に意味があります。それは広い意味で軍事と繋がっています。そこを無視してはいけないでしょう。

 当然、個人の戦闘術に留まらない大量殺戮の手段や情報戦をも想定して研究されていたのが現実です。毒薬や化学兵器・・・いわゆる忍術も含んでいました。

 だから、陸軍中野学校ではそういう古武術の兵法的側面が研究されたりしていた訳ですし、戦前は軍事探偵に雇われた武術家(養神館の塩田剛三、空手協会の中山正敏その他)が多く中国大陸に送り出されていたのですし、それらの人が戦後、大きな会派を率いていっている歴史的事実を鑑みれば、綺麗事で括れる道理がありません。

 それと、厳然たる事実として中国の武術は秘密結社と密接に関係している(義和団や太平天国、あるいは洪門会、各種幇会など)し、日本の武道・武術も右翼系統の流れ(有名なところは頭山一族)と不可分であることは日本の武道武術界の長老的立場の人なら誰でも知ってることですよ。

 実際に私もそういう人に何人も会ってますからね。

 そんなの小説や劇画の世界の話だろうと思ってる人が多いでしょうが、ところがどっこい・・・事実は小説より奇なり!です。

 例えば、内田さんの師匠の多田先生の先生である中村天風もまた「人斬り天風」と呼ばれた随変流抜刀術の腕を買われてある任務で中国大陸へ渡ったそうですが、そういう人は結構居たんですよ。

 今だって右翼系・ヤクザ系の武道家はざらです。興行のからむボクシングやキックの世界もそうだしね~。

 武術を美しい言葉で哲学的に語ることは、私は抵抗を感じます。権威主義で囲い込んで信仰対象にし兼ねず、修行者を“神の視座”に挙げ奉り現実逃避や増長傲慢の心根に導く危険性があります。要するに、「人を人とも思わない自己愛者を育てる」のです。

 ~~流とか~~拳だけが特別!みたいな観念が、どれだけ武術の世界を歪ませて誇大妄想狂を量産してきたか?ということを関係者はきちんと認識しなきゃなりません。

 私は、流儀を比較して優越を論じることそのものが非常にナンセンスなことだと考えますし、いろいろな流儀を研究してきて、その流儀独自の優れた点もあれば、劣っている点も必ずあって、完全な流儀などお目にかかったことがありません。

 私が膨大に研究してきたのも、比較研究せざるを得なかったからです。

 現実に武術は殺し合いと騙し合いの戦術を駆使して生き残る術を徹底的に追究してきた歴史があり、それが生きる事の綺麗言では済まないリアルに直面した結果である・・・という点を有耶無耶にごまかして語ってはならないでしょう。私はそう思っています。

『荒天の武学』、私としては不満や疑問も残りましたが、叩き台として読者にメッセージを送る本としては充分に成功していると思いますから、読んだ人達のいろんな感想を聞いてみたいですね。私の考えだって専門バカな部分は必ず有るでしょうから・・・。

 そういう意味で超御薦め!です。

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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