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動き出しは先端からか中芯からか?

 熱心な読者の方から技術的な御質問を頂戴しましたが、これは他の修行者の方にも御参考になるか?と思ったので、ここで答えてみたいと思います。

「骨盤から動くのと、拳や指先の先端から動くのでは術理や威力などにどう違いが出るのか?」という御質問です。

 游心流では「すべての動きは骨盤から動きなさい」と教えておりますが、無論、武術の戦術上から考えれば、正反対のやり方を使っても有効であれば否定はしません。

 詳細は直に実演して長所と短所を説明しながら解説しないと伝えるのは困難であろうと思うのですけれども、実践者の参考になるかどうかは不明ですが、流派門派の違いで説明してみようと思います。

 まず、“中芯から動く”ということの典型例なのは、太極拳や沖縄空手などのような下丹田(骨盤)から動いて背中から肩、腕、拳先へと力を波のように伝達させる身体操作法を基本とする派です。

 これらは東洋医術(丹田開発)や瞑想法(小周天法やクンダリニー・ヨーガ)などでも基礎となるものであり、いわば王道なのです。

 しかし、王道があれば変則的な奇道もある訳ですね?

 典型例とすれば、八卦掌や酔拳、カポエィラ、躰道なんかがそれでしょう。

 戦闘理論で解析すると面白いんですが、自分の中芯を保ったまま相手の中心に斬り割っていくようなやり方が王道であり、これは小野派一刀流の切り落としや、新陰流の合し撃ちなんかの技法ですね。

 これに対して、相手の中心をダイレクトに狙わず、斜めに避けたり回転したり転がったり寝転んだりしながら攻撃するやり方となると、八卦掌の“斜避正”の原則(斜めに避けながら相手の中心を奪う)などに代表される側面攻撃なんかがあります。

 新陰流の体捌きや合気道の転身・回身の動作なんかもそれですね?

 さて、游心流では「骨盤(中芯)から動け」と教えていますが、これは基本的な身体操作の王道を先に体得させるためのものです。

 新陰流は、「神道流や念流などの当時の剣術の主要流派を学んだ上泉伊勢守が、特に(愛洲)陰流の術理から戦闘理論の核心を抽出して“新陰流”を立ち上げた」と伝えています。

 それは、八卦掌的な斜避正の原理を体系化したものだったようです。

 しかし、真っすぐ相手の中心軸に自分の中心軸を合わせてクサビを打ち込むように斬り割っていく一刀流(その源流である念流も)の切り落としの技法の極意を採り入れたとされる柳生の合し撃ちも、後に重要な技法原理として採り入れています。

 游心流の交叉法は、この切り落とし、合し撃ちの技法原理を体術に応用したものですが、自分の中心軸から相手の中心軸を斬り割っていく・・・ということは、あくまでも基本的原理であり、実際の用法としてそのままの形で使える場合は少ないものです。

 当然、相手との状況に応じて変化応用させられないと意味がない訳です。

 私が独己九剣考えたのは、素手の練習だけでは相手の中心軸を的確に斬り込む感覚が養成できないと痛感したからでした。

 つまり、点や線が観えていない人間に点や線の攻撃をしろと教えても無理がある訳なんですね?

 素手での攻防オンリーの流儀の人が交叉法や読みの感覚をなかなか養成できないのも、ここに原因があると私は考えた訳です。

 事実、相手の中心軸線上に正確に打ち込める人間は意外と少ないし、自分の中心軸線上に向かってくる攻撃を紙一重で躱す技能も10年やってもできない人はできないまま。

 これでは上達する道理がありません。

 ちなみにフック系のパンチや回し蹴りが打撃格闘技で主流になったのも、中心軸線を取れなくとも横から回して打ち蹴れば、なで斬りにするように命中しやすいからでしょう。

 垂らした紐を切断するのに銃で狙うより刀で斬った方が遥かに簡単でしょう?

 が、こういうアバウトな戦闘法に慣れてしまうと正確に中心の点や線をとらえて打てるストレートパンチや前蹴りの練達者と対戦すればカウンターで先にやられてしまう訳ですよ。

 游心流ではカウンター攻撃が主体ですから、必然的にフック系のパンチや回し蹴りは相手の体勢が崩れた時や、崩しながら仕留める時にしか出さなくなりました。

 向かい合ったところから円曲的な攻撃をすれば直線攻撃にやられてしまうからです。

 ちょっと戦術的な説明がくどくなってしまいましたが、御質問にあった「先端から動く攻撃法」に関しては、例えば“寸勁での二度突き”が典型例でしょうし、うちで言えば、差し手を出して触れた状態から体だけ回り込んで相手の死角(背勢)を取る場合などに用います。

 恐らく、この御質問の前提になっているのは甲野氏が提唱した理論ではないか?と思うのですが、甲野氏の弟子の中島氏が『秘伝』の記事の中で「先端から動く」という身体操作法を解説されていたので、それを採り入れた戦術なのかもしれませんね?

 私見を述べれば、この「先端から動く」という身体操作法に関しては、体幹部に予備動作が出ないという利点はありますが、術理としてはやり方がバレてしまうとリスクが高いだけに思えます。

 それをわざわざ雑誌で写真付きで解説してしまうというのも、手品のネタばらしをしているみたいで、「オイオイ・・・最初から手の内バラしてたら通じなくなるっちゅうに~?」と、苦笑して読みましたが、恐らく、武術的な発想で危機意識を持っていないから平気で発表されているのでしょうね? (それとも、周囲にバカしか居ないのか?)

 どうしてか?と申しますと、“全身を固めて(一体化)したまま突っ込んでいるから”であり、動いた瞬間に、ちょっとでも方向をずらされたら自滅してしまう訳ですよ。

 無論、先端から動くということは身体内部の連動の動きはありませんから胴体を観察しても予備動作は確認できません。その意味では“消えた動き”に見せかけることができます。

 しかし、予備動作を消しても全身が固まっているので、先端から動いたと同時に、こっちからほんのわずかでも身体の角度を変えればツルンと滑って、あさっての方向に突っ込んでしまう・・・という超バカな事態になりかねません。

 目付けでは消えた動きになっても、聴勁化勁のエジキになってしまうのです。

 だから、私は「何じゃ~、コリャ? 新作コントか?」って思ったんですね(苦笑)。

 つまり、“奇道”は王道に対して一回だけなら通用しても、二度も三度も通用するようなものではない訳ですよ。いわゆるラッキーパンチの類いでしかありません。

 問題なのは、「このやり方が正しい」と思い込んで、一つのやり方に拘る態度です。

 特に、このような“心身一体化した動き”を標榜している流儀に関しては、自分達の弱点(先端から動けば自分から重心バランスを崩しやすくなる)をまるで認識していない場合がほとんどです。

「心身一体化することが集中先鋭化させ攻撃力を最も高める極意である」と信じていたりする武道家は数多いのですが、応用変化できない一本調子の攻撃は単なる“硬直化”でしかなく、ドツボにはまって自滅する自己陶酔思想でしかないんですよ。

 例えば、八極拳の発勁は、瞬間に全身を剛体化させて瞬発させますから、その戦闘法に於いて、さりげなく柔らかく前拳を敵の胴体に触れておいて、ドバンッ!と重心移動のエネルギーを送り込んで打ち倒す・・・という“先端から動いて攻撃する”ような使い方をしますが、重要なのは、“さりげなく柔らかく前拳を敵の胴体に触れておく”という招式(技を極めるための戦術的準備作業)なのであって、威力に惑わされてはいけません。

 同様のシチュエイションで太極拳だと骨盤をグルンと回転させて鞭がしなるような連動で重心移動させて拳を瞬発させますが、これだと威力が伝導するまで時間がかかりますし予備動作も大きいですね?

 だから、「これでは遅い。避けられてしまう」と考える人が多いでしょうが、これまた戦術と不可分なんですよ。連動の動き、即ち“纏絲勁”や“抽絲勁”は、相手の攻撃を巻き込みながら相手が自覚しないままに重心バランスを崩させる高等戦術を兼ねているのですね。

 即ち、敵の攻撃を触れて化勁しながら体勢を崩させつつ同時にこちらの発勁を打ち込む・・・というのが太極拳の戦闘理論であり、無駄に動いている訳ではないのです。

 これは空手の基本の上段受け、内受け、外受け、下段払い受け・・・などの動作を化勁であると考えると、“受け崩しながらの交叉合わせ突き”という攻撃技へと変化応用できる訳ですね。

 太極拳と沖縄空手が原理的戦闘理論が同じだったという訳ですよ!

 以上、「先端から動くか? 中芯(骨盤)から動くか?」の意味に関する簡単な解説を試みましたが、ちょっとこれは上級向け過ぎるかもしれませんから、文章だけで、どの程度理解してもらえるかは判らないですね~?

 うちの幹部指導員クラスでも文章だけで解るかな~?と、ちょっと不安です。

 そもそも、ここに書いている太極拳や沖縄空手、八卦掌などの戦闘理論を解っている人自体が極めて少ないと思いますし・・・?

 これはやっぱり個人指導で直接実演解説していかないと御理解いただけるかどうかは解らないですかね~?

 次回の月例セミナーは縮地法がテーマなんですが、この御質問についても解説してみようかな~?と思います。


PS;個人指導を御希望の方はお気軽にどうぞ。基礎基本から一通りの指導をする場合は一回一万円となりますが(宿泊される場合は宿泊費込みとなります)、「発勁だけ」「合気だけ」「歩法だけ」といった具合に一つの技の徹底指導のみ御希望の場合(宿泊無し)、一回通常料金の二千円とします。部屋代かかってるので、御利用お待ちしてま~す!

PS2;今回の“先端から動く”という点は、新作DVD『歩法、這い、練り』中に発勁(0インチパンチ)を指導している箇所がそのまま当てはまります。御参考にどうぞ!

PS3;4月になりましたので、謝恩セールに割引品目ももう一つ増やします。『上級編』プラス『戦闘理論』を、通常価格50000円のところを、何と! 20000円と致します! こちらは、販売中止検討中の商品なので、この機会をお見逃しなく・・・。

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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