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天田昭次刀匠逝去を悼む

 最近、読んで感銘を受けた『鉄と日本刀』の著者であり人間国宝の刀匠である天田昭次師が亡くなられていたことを新聞で知りました。

 本当に、この本は和鉄と日本刀の謎に迫る歴史的な偉大な研究を記した名著であると思い、できることなら天田師にお会いして刀を打っていただければな~・・・と思っていた矢先でした。

 私の父より一歳年上の御様子でしたから、かなり御高齢なので急がねば・・・と思っていたので非常に残念です。

 この『鉄と日本刀』は、日本刀の秘密に迫って試行錯誤を繰り返す研究者である天田師と、影響を与えた人々に焦点を当てていて、極めて真摯で、尚且つエンターテインメント性をすら感じさせるドキュメンタリーとして圧巻の書でした。

 古刀の地鉄がチタン合金であり、新刀以降の炭素鋼とは成分が違うという仮説については驚愕すべき論であり、新々刀から現代刀の刀匠が古刀を目指しながら、ついに古刀を作り得ない真相が“ここ”にあるかもしれません。

 餅鉄に関しても類書ではロクでもない解説が付いていたりするものですが、岩手や新潟に産出する純度の高い磁鉄鋼石のことであることを具体的に書かれていて、しかも餅鉄の研究家の方の話から、某カルト宗教団体が餅鉄をごっそりと集めていった・・・という話まで書かれています。

 この某カルト団体というのは、紛れもなくオウム真理教のことでしょう。

 何故なら、オウム神仙の会の頃から「餅鉄はアトランティス文明にいうところのオリハルコンに当たるヒヒイロカネである」というオカルト関係の情報を採り入れて御神体扱いしていたからです。

 オリハルコンと言えば、『海のトリトン』に登場する超エネルギーを秘めた短剣が“オリハルコンの剣”でした。

 宇宙戦艦ヤマトなどのアニメに感化されていたオウムらしい逸話でしょう。

 ちなみにヒヒイロカネの話は竹内文書だか九鬼文書だかに出てくる超古代文明の超金属で、アトランティスのオリハルコンと同一視されたのでしょう。

 確かに日本刀は神社の御神体になったり奉納されたりもする神器ですから、宗教がらみになるのも解りますが、それにしてもオウムに買い占められるというのは困ったものですね・・・。

 ちなみに東北地方の日本刀製作集団の舞草(もうぐさ)一族は餅鉄を使っていたのではないか?ともいわれます。

 一般に砂鉄をタタラで低温熔融して作る和鉄の古代製法の技術は不明になっていますが、天田師は自家製鉄を試行錯誤した先駆者として有名です。

 しかし、その試行錯誤の過程を著書から想像するに、中世の錬金術師もかくや・・・と思わせる努力の積み重ねに頭が下がるばかりでした。

 武術の研究から日本刀に関心を持った私ですが、一つの道を追究するということの何と峻厳で、何と気高い行為なのか?と、ただただ、感じ入るばかりで、せめて生前の天田師に一目でもお会いできればな~と思っています。

 過日、青木宏之先生の御紹介で松葉国正刀匠と電話で少しばかりお話させていただきましたが、現代刀工の生活基盤の厳しさから刀作りを志しても断念せざるを得ない人が多いらしく、日本の伝統工芸の文化を守るべき国が十分な援助をしないでいる現状には頭が痛い御様子でした。

 日本刀は銃のように量産することができません。

 すべてがハンドメイドなのです。

 そして、いかなる技量の刀匠であっても、同じものは二度と作れないのです。

 また、研ぎや外装によって刀の価値はがらりと変わります。

 私のように武用刀にしか関心の無い者であっても、名人によって研ぎ上げられた名刀の美しさには息を呑まざるを得ません。

 三種の神器、匂玉・鏡・剣に共通するのは、どれも“磨き込まれる”ということです。

 鉄は、自然界には存在しません。自然界に在るのは酸化鉄だけなのです。

 それを人工的に加工して、はじめて鉄が得られるのです。

 しかし、普通の鉄は、放置すれば徐々に酸化していきます。酸化することで安定するからです。

 ところが、日本刀には1000年昔から健全な形を保ったままのものもあります。

 考えてみてください。これが、どれだけ驚異的なことなのか?

 日本刀と和鉄製法の秘密は、まだまだ解けているとは言えません。

 それでも、天田昭次師の残した研究は、この分野の偉大なエポックとなったのではないか?と、私は思っています。

 天田昭次師の偉大な業績に敬意を表して、御冥福をお祈り致します。

 合掌

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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