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詠春拳セミナー報告

 当会初の私以外の指導員による武術セミナー・シリーズを、第一弾の「カリ&シラット」に続いて、世界で太極拳に次いで普及し、“実戦中国拳法”として揺るぎない評価のある「詠春拳」を無事、開催できました。

 何しろ、海外のマーシャルアーツ専門雑誌を見ていて詠春拳の記事や広告が載っていないものを見た記憶がありません。日本とは逆です。

 一説に、「詠春拳を日本人には教えてならない」と、日本軍に酷い目に合わされた葉問が遺言していたからだとか・・・?

 実際、日本で初めて詠春拳の本を出したある先生は、嫌がらせが酷くて武術指導を辞めてしまわれた?という噂を小耳に挟んだことがありますが、確かに、その後、武術雑誌に取材されることはおろか、教室案内にさえ載っていません(こういう事例は結構ありますよ。うちも、よく続いてるな~?と自分で感心してます。恐らく、業界一、嫌がらせが多いと思うんですけど?)。

 そのような裏事情があるためか、日本以外では世界中に広く普及しているのに、日本で教えている道場は極端に少ないんですね。

 今回、前回のカリ編の指導をしてもらった山田聡朗先生に引き続いての指導をお願いしています。

 山田先生のプロフィールを簡単に書くと、当会では師範代で埼玉幸手支部長を任命させてもらっていますが、「てらこやフィットネス」というジムを幸手市にて経営。またアメリカで十数年に渡ってJKDを学び、アメリカに於ける詠春拳の第一人者として有名なフランシス・フォン先生のルームメイトとして個人指導を受けています。

 言葉を換えれば、フランシス・フォン先生の内弟子のような関係だった訳ですね。

 JKDではなくて、カリ、シラット、そして詠春拳の講習会としているのは、私の提案で、「日本でJKDを名乗ると権利問題に発展してややこしいと聞いているので、余計なトラブルにならないようにしましょう。プロデュースも私がやるので、もしイチャモンが入ったら私が対応しますよ。慣れてるから・・・」という訳です・・・(苦笑)。

 山田先生はUSA支部長を任命させてもらっているアベ師範代とアメリカでJKDを学んでいる頃に知り合った友人で、日本に戻ってからも武術の稽古仲間だったそうです。

 それで、二人でいろんな武術の技法を研究していて、最初は御多聞に漏れず、甲野氏や高岡氏や日野氏や宇城氏の本を参考に練習していたそうです。

 しかし、たまたま私の本をアベ師範代が買って二人で練習してみたところ、非常に解りやすく納得でき、本を買うだけでなくブログも読むようになったそうです。

 よく言われるんですが、うちに来る人の多くが、似たような経過を辿って、武術専門誌に載っている有名な先生の本を読んだり、講座に行ったりするものの、何か高尚過ぎて今ひとつ理解できない・・・。

 そんな時に私の本を読んだら、有名な先生が難解な説明をしていた技を「こんなの単なるコツで小学生にもできますよ~」と解説しているので、ホンマかいな~?と思い、書かれている通りにやってみたら確かに簡単にできる。

 しかし、本当にこんなに簡単なんだろうか?と逆に疑問が膨らんで、確かめるためにうちのセミナーや講座に来た・・・というパターンが非常に多いみたいですね。

「う~ん・・・この長野さんが書いていることの方が本当に思えるな~? だけど、何で、こんなに甲野先生のことを悪く言うのかな~?」と、腕はいいけど口の悪い頑固職人のような人間なんじゃないか?と思っていたそうです・・・イヤ~・・・(再び苦笑)。

 それで、まずアベ師範代が私のセミナーを試しに受講したんですね。

 そして、アメリカのJKD道場では、「これはブルース・リー先生だけの必殺技だから・・・」と門下生は練習するのさえ憚っている“ワンインチ・パンチ”(当然、皆、できないそうです)を、私が受講生全員に教えて、皆、あっという間に体得してしまう・・・という様子を見て、唖然となってしまいます。

 しかも、ワンインチじゃなくて“ゼロインチ”、つまり、拳の加速距離0の完全に密着した位置から打ち込んで相手がふっ飛ぶ・・・という技をズブの素人でも30秒後には体得してしまっているので、それまでの「長年の苦しい修行と特別な天才的才能が必要な極意なのだ!」と思っていた必殺技が、「単なる打ち方のコツを知るだけで小学生でも体得できる」という真相を前にして、もう脳内麻薬でも出てたんでしょうかね~?

 もう、涙目でケタケタ笑ってましたよ・・・。

 後で聞いたら、「俺は今まで何をやってたんだろう?」と悩むのと、「やった! 伝説の秘密が解けた!」という喜びを同時に感じて頭がヘンになった気がした・・・そうでした。

「そっか~? そんなに喜んでくれたんなら、こんなのも教えちゃおっかな~?」と、拳だけでなく前腕、肘、肩、背中、腹、胸なんかでも打ってみせたら、呆然としてました。

 そして、アベ師範代は游心流に入会したという次第・・・。

 で、アメリカ、ロサンゼルスに在住している彼は日本に帰省する度に個人指導を受けるようになりますが、初めて個人指導を受けた時も、いきなり床に座り込んで考え込んでしまいました・・・。

「う~~~~ん・・・長野先生、セミナーで何でも教えてくれてると思っていたんですが、メチャメチャ隠してたんですね~・・・」と、ポツリと呟いていました。

 何でか?というと、セミナーはビジネスですから、参加者に喜んでもらうことを第一に考えているので、技の原理を中心に指導していますが、個人指導では実際に戦う場合の文字通りの必殺技「これを使えば相手は死にます」みたいな技をバンバン教えた訳です。

 私は表に見せる技と実際に戦う場合の技は完全に分けています。表に見せてる技を「あれじゃあ、実戦に通じない」とか偉そうにほざいてるネット中毒武術マニアを練習後のファミレスで「阿呆じゃの~う?」とバカにして爆笑するのが楽しい訳ですよ。

 てか、伝統的な武術を伝承している先生方って、大抵、そんなもんですよ。殺法に関して簡単に公開している人は本当のことを知らないから、やってる訳です。

 だから、弟子も選んで、人格的に問題ありと思えば入門を断ったりする訳ですが、そんなのに限って逆恨みしますからね~。他人をとやかく言う前に、脳みそ治して来い!って言いたくなるヤツ居ますよ。

 中途半端な知識を振りかざして自尊心だけ異常に強いヤツとか居ますけど、まず、基本的な挨拶ができるとか、人とのコミュニケーション能力が無いと人生、うまくいかないですよね? そういうヒトとしての基本を疎かにする人間は何やってもダメですよ!

「俺はこんなこと知ってんだぜ?」みたいにナルシシズムに浸って自分の必殺技を容易く公開するような“平和ボケした阿呆連中”と同列だとナメてもらっちゃ~困りますよ。

 アベ師範代も、私が脱力技法を使った崩し技を教えた時に、軽~く軽~くやって見せたんですが、彼はその技を本式に使えばどうなるか?ということに気づき、「長野先生、これ・・・まともにやったら相手、死ぬんじゃないですか?」と質問されました。

「そうですね? 死ぬでしょうね~」と答えると、う~~~~ん・・・と唸ってました。

 この後に、山田先生もうちのセミナーに通うようになり、入会されました。

「実は、アベさんから、“長野先生は本当に凄い実戦的な技を研究してますよ。そして、そんな技は隠して一般には教えてない。考え方がブルース・リー先生とまったく同じなんですよ”と聞いて、彼も入会したと言うので・・・」と、照れたように微笑されていましたが、最初はやっぱり、疑う気持ちがあったらしいです。

 でも、アベ師範代と似たような反応をされていて、次第に、「フランシス先生がこんな技をやってたんですが・・・」と質問されるようになり、「それは多分、こういう原理だと思いますよ」と実演したりしているうちに、信頼してくれるようになりました。

 長年、JKDで各種武術を学ばれていただけあり、お二人とも実力は申し分ありませんでしたし、何よりも非常に性格が良いのに感心しまして、それで異例ではありましたが、すぐに師範代と支部長を任命させてもらった次第でした。

 お断りしておきますが、彼らがやらせてくれと言ったのではなく、私が「是非、やってください」と依頼したのです。この点は、どうぞ、お間違いありませんように・・・。

 余談ですが、これまで何度か自分を売り込みに来た人も居ます。

 しかし、売り込みする以前に、腕は未熟そのもので、武術に対する見識も低く、「20年くらい修行やり直して来なさい!」と言いたくなるような勘違いした者ばかり。実力も見識もある人は自分から売り込みしたりしないもんですよね・・・。

 私はそういう勘違いした人間には厳しいですから、逆ウラミされたりしますね。でも、本当に実力があって人柄も良い人だったら、ちゃんと敬意を払ってきてます。


 で、山田先生が時折実演されるカリや詠春拳の技と、何よりも説明の上手さを見ていて、それで今回のセミナーも企画した訳ですね。

 日本ではほとんど普及していない詠春拳ですが、套路を知っている程度の人なら結構居るでしょう。

 しかし、用法や姿勢の意味、戦術等について熟知している人となると、ほとんど居ないと思います。何よりも、詠春拳を古典として学んだ人は、詠春拳の人気の秘密となっている実戦性について深く考えておらず、他流との対戦の研究もしていないでしょう。

 これは日本の伝統的武術を学ぶ人達に共通する融通の利かない古伝礼賛権威主義のなせる頑迷さなんですね。

 これでは、どんな実戦的とされる武術を学んでも、本人の頭の悪さ故に実用の役に立たなくなってしまうでしょう。

 武術仲間に昔、聞いた話ですが、台湾に実戦的な武術家と評判の詠春拳の先生が居たそうです。そこに日本から伝統派空手を学んだ人が修行に行ったそうですが、実に性格の悪い先生で他流の悪口ばかり言って自分の強さを自慢するばかりで、内心、非常に不愉快になっていたそうです。

 そして、予想通り、空手の悪口を言いはじめたので、その人は空手の名誉のために手合わせすることを決意したそうです。

 自信満々で構えている詠春拳マスターに向かって、遠間からロケット弾のように飛び込んで突きを放つと、その一発で詠春拳マスターは撃沈してしまったそうで・・・。

 その後、世間に俺以上の武術家は居ないと豪語していた彼は道場を畳んでどっかへ行ってしまったのだとか?

 皆さん。よく考えてください! 実戦的かどうかなんてことは、本人の実力と研鑽の問題であって、流儀の優劣ではないのです。

 詠春拳は非常に優れた武術ですが、その真価を発揮する条件というものを考えないで使うと容易にやられてしまう場合もある・・・ということです。


 さて、今回のセミナー場所を確保するのに東京支部長が骨折ってくれて、東京支部の稽古場である駒込で開催することが決まり、予約制にするかオープンにするか?で考えたんですが、「オープンにして冷やかしや勘違いした腕試しとか来たら面倒臭くなるから予約制だね」と私が指示して予約制にしたんですが、実はそれで申し込みが少なくて、焦ったんですよ~。

 ところが、蓋を開けてみたら、うちの会員も何人も参加したので会場が狭く感じるくらいでした。

 今回、山田先生のジムでベリーダンス・エクササイズを指導されているRINA先生の指導もあり、これがまた身体の使い方、動きの改善という点で実にスグレ物のエクササイズで、オッサン軍団は苦労しまくりでしたが、これを続けていたら武術の技の威力が倍々でアップするだろうな~?と思いました。

 私が、武術の研究の過程で、能、日本舞踊、パントマイム、クラシックバレエ、フラメンコ、ストリートダンス、インド舞踊、バリ舞踊、前衛舞踏、コンテンポラリーダンス等を研究したということは著書で何度も書いているので、皆さん、御承知だと思います。

 実は、その中でもベリーダンスには特に注目していたんです。特に体幹部を細かく振動させるように高速で動かす点は武術の錬体に高い効果が得られるだろうな~?と思っていたんですよ。

 武術は、まず身体を練ることが肝心で、次に技を覚え、心法に入っていく訳です。

 松田隆智先生に初めてビデオを見てもらった時に第一に褒めていただいたのが、「伸筋抜骨ができてる」というものでした。

 これは、簡単に言うと、体幹部の動きを手足の末端に伝える身法を体得しているという意味で褒めてくださった訳です。

 つまり、武術で肝心なのは、いかに体幹部を動かせるようにするか?ということなんですね。

 ところが、「正中線をしっかり取れ!」といった言葉上の考えに捕らわれて、上半身を棒立ちに固めてしまう武道人が非常に多いんです。

 私がナンバにケチをつけたのも、ナンバの身ごなしを見よう見真似でやれば、体幹部を固めて動く癖ができてしまうのでは?と危惧した点が大きいのです。これは健康にも悪影響が出てしまいます。

 まあ、よそ様のことなので、間違っていようが下手糞だろうが、うちには関係ありませんし、そうしてくれていた方がいざ勝負となった時に、こっちは楽に対応できるから、別にいいんですけど・・・。

 ただ、本気で武術の技能を追究しようと思っているのでしたら、決して身体を固めて使ってはいけません。

 素手同士なら我慢大会でもいいかもしれませんが、刃物相手になったら簡単に致命傷を受けることになります。

 なので、RINA先生のエクササイズは武術の基礎というばかりでなく、あらゆる武道・格技にも有益ですし、保健養生の意味でも万人向きでしょう。

 山田先生が言うには、試しにRINA先生に寸勁とか教えたら自分より威力が凄くてビックリしたというのです。

 RINA先生がマツコ・デラックスみたいな体型だったら、さもありなん・・・というところですが、小柄な女優さんのような方ですからね~。あれで山田先生もビックリするほどの寸勁が打てるというのは誰も信じられないでしょうね?

 武術業界は口だけ達者で実力皆無みたいな人物が非常に多いので、普通に武道や格闘技をやっている人達から軽蔑されがちです。

 だから、本物の実力者をばんばん育てていかなくちゃならん!と私は思っています。

 そのためには、技も戦闘理論も合理的に解釈して誰にでも理解できるようにしていかなくちゃ~いけない。

 山田先生の指導を見ていて、もはや、游心流が目指すのは一流派の道場というのではなくて、武術を中心軸とした心身機能を探究する“学校”なんじゃないかな~?と思うようになりました。

 山田先生が、何故、「てらこや」と名付けたのか?という意味を改めて考えさせられましたね・・・。


 今回の詠春拳&美体操&ベリーダンス・エクササイズのセミナーは連続講座として続けていく計画です。

 毎回、ビデオ撮影して教材化もする予定(10月半ば発売予定)ですので、御期待ください。


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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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