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松田隆智先生追悼講座感想

 西荻窪ほびっと村学校で年四回の講座を再開するようになって、昔は、ただダラダラと練習するだけでしたが、これからは意義のある内容にしていかなくちゃいけないな~と思い、実は、斯界の開拓者と言える先生方をお呼びして・・・と思っている最中でした。

 まさに青天の霹靂と言うべきか?

 今年7月24日に松田隆智先生が急逝されました。

 私がお呼びしようと思っていたのが、誰あろう、松田先生でした。

 そして、実はもうお一人、青木宏之先生をお呼びして、松田先生と青木先生の対談をやっていただこう・・・と計画していたのです。

 こういうのは、思いついたら即、計画を進めないといけないな~と思いましたね。

 まだあるんですよ。

 対談を核にしてお二人のインタビューをまとめて本にしたいと思っていたのです。

 もう、話しても構わないでしょうから、書きます!

 一昨年でしたか? 私が青木先生を松田先生に御紹介した後、松田先生は度々、「青木先生が中心になって、僕と長野君と三人で専門誌とかできないかな~?」と言われていたのですね。

 私も青木先生も自分の会の運営で余裕が無いし、第一、専門雑誌を出すには出版社なり何なり探さないとなりませんから、これは無理だよな~?と思って、それで本の企画をたてた・・・という経緯もあったんですよ。

 私のブログは編集関係の方もチェックされていると思うので、誤解のないように書きますと・・・。

 以前、『武術(うーしゅう)』では、松田先生は編集顧問として創刊から関与されていました。が、『秘伝』には編集顧問として携わっている訳ではありません。

 だから、御自身のやりたいことができない。雑誌の内容にも疑問がある。だから、もっと自由に充実感をもってやれる場(雑誌)が欲しかったんだろうと思います。青木先生の人柄に感銘を受けたというのもあったと思います。私欲に塗れた人間ばかり見てきて人間不信の側面もありました。特に、『武術』が休刊した時は非常に嘆いてらっしゃいましたから・・・。

『秘伝』の編集顧問は柳生心眼流の島津先生であり、今はどうか知りませんが、創刊当時の『秘伝・古流武術』のスーパーバイザーは平上さんだったんですね。

『武術』が休刊する一年前くらいに福昌堂では担当編集者が辞めるという危機がありました。

 私は、松田先生からの電話で知り、その後、その辞められた編集者の方から丁寧な説明のお電話をいただいて、「私は辞めますが、長野さんはどうぞ、ライターとして支えてあげてください」と言われたのを今も覚えています。

 普通、編集者が辞める時にはライターなんかも声をかけて引き抜いたりするものなんですが、この方は義理堅い方なので、そうされませんでした。

 それを言われなければ、私もその時点で離れていたかもしれません。

 その後は、編集者が居ない状態のままで営業部の社員が担当してライター数人で作り続けていました。

 私はその後、一年くらい続けましたが、女子大の非常勤講師をやるようになったり、自分自身で活動した方がいいと思ってフェードアウトしましたが、大体、同じ時期に担当者との関係がこじれて松田先生も離れたんですね。

『武術』はその後も親しい中国武術関係者の協力で続けていたものの、何しろ編集顧問も居ない状態ですから、長くは続かず休刊に至った次第です。

 聞くところでは担当者とライターが会社を離れてフリーで武術関係の企画ムックを元編集長を頼って出すようになったとか・・・。

 ちょうど、甲野氏のブームの頃だったので、甲野氏を神輿に乗せてムック中心でやっていたようですが、やはり、中国武術の雑誌をやりたかったのか、あるいはそれしかできなかったのか(失敬!)?

『武術』のタイトルを変えただけのような『功夫(ゴンフー)』という中国武術雑誌を創刊していましたが、やはり、甲野氏がメインでなければ売れなかったのでしょう。

 続くことはありませんでした。

 これは、かつて一緒に仕事した者として老婆心で書きますが、彼らは大きな勘違いをしていると思います。

 ただ、“珍しい武術の情報だけ”を出していれば売れた時代は、とっくの昔に終わってしまったんですよ。

 彼らは自分たちがマニアだから、自分たちを基準にして考えている。だから、一般の武道、格闘技を愛好したりカンフーアクション映画好きの人達の気持ちを掴むような文章表現ができないのです。

 要するに、いかにして読者の気持ちを掴むか?という努力を怠っている。マニア特有の上から目線で考えているからダメなんですよ。

 結局、毎度毎度、甲野氏に頼るしかできない・・・安直です。この出版不況の御時世に呑気に趣味に浸っていられる道理が無いんですから、甲野氏頼りの発想から早く脱却しないと将来性は望めない。惨めな老後に突入しちゃいますよ。

 作家だって新人賞取って鳴り物入りでデビューしても売上が悪くて、それっきりで消えてしまう人がざらなんですよ?

 私は物書きとしての守備範囲広げて安定した収入が入るようになろうと努力していますが、これはもう並み大抵の努力では足りませんね。才能と素質と努力の上に運が無ければやっていけない世界ですよ。

 下手なのは自分でも解ってます。

 じゃあ、どうするか? 本音をガシガシぶつけてガチンコ勝負するつもりで文章にエネルギーをブチ込む! それくらいしかできませんよ。

武術のヒミツ』を書いた時が、本当に自分の人生の最後の賭けでした。

「これが売れなかったら、俺は物書きでやっていくのは無理だから、諦めて田舎に帰ろう。だから、俺の怨念を込めて書いてやる!」と決意していました。

 そういう想いというのは文章にも宿るんでしょう。この本は1週間で5000部完売しそうな勢いで売れて、増刷して最終的には10000部超えてシリーズ化し、去年は文庫にもなりました

 お陰で、その後の文筆業がスムーズに運ぶようになり、十数冊出すことができました。

 普通、武術の本は初版1000部刷るのが平均で、売れ行きが良いと2000部くらいいきますが、特別に売れるのは合気の解説本とか限られています。

 中には、ほとんど売れずに倉庫に積まれたままになる場合もあります。

 武術はジャンルとしては元々、そう売れるジャンルではないのですが、ただ、熱心な愛好家が一定数は居るので、テキトーに作っていても昔はそれなりには売れたのです。

 逆にいうと、ソコソコ売れるから、売るための工夫をする必要もなく、淡々と情報を出すだけでも良かった。だから、作り手も面白い売れる本を作ろうという意欲が無くなって、ルーチンワークとして記事を書くだけになっていた訳です。

 ライター時代に、「そんな状況に甘んじていたら先が無い。読者を啓蒙するくらいの気概が無いと一部のマニア向けにだけ作っていたら、先細りするだけだ」と提案したこともあったんですが、「確かに長野さんの言う通りかもしれないけど、僕らにはそんな度胸はないですよ。そこそこ売れるのを維持するためには、これまで通りにしていた方がいい」と言われましたね。

 まあ、予想通りと言うか、そういう内向きの意識は文章にも滲み出てくるもので、私が離れた後は実際に先細りして休刊に至った訳です。

 これは、私が特別、先読みが鋭かったからでしょうか?

 違いますよ。彼らが特別、近視眼的だっただけ。だから、中国武術の雑誌を作っても続けられなかった。それは、作り手(の意識)が変わっていなかったからですよ。

 簡単に言えば“自己満足”だから読者に響かなかったんですよ。

 何故、甲野氏だけが売れたのか?というと、それは彼が自分を売るための演出に多大な情熱を注いでいたからです。

 着物に一本歯の高下駄履いて真剣を持ち歩く・・・そのスタイルは歩く宣伝広告塔とでも言えるでしょうし、肝心の武術の技も、実戦を無視した「如何に人をビックリさせるか?」だけを考えて捻り出した代物であり、それを補完するための俺ジナル理論を次から次に発表している様子を冷静に検討すれば、甲野氏の意図は誰でも察しがつくでしょう?

 だから、一部の好事家を中心に熱に浮かされたようにシンパが増えていくのも、甲野氏が最初から計算してやっているんですよ。彼はマインドコントロール技術を熱心に研究していましたからね。初期の著書でイメージ法批判をしていたのも、彼自身が熱心に研究したからですよ。

 私が彼の道場に通っていた頃は、催眠術をえらく薦められましたね。バカ高いセミナーの受講を薦められ、私は金無いから受講しなかったんですが、「何で、受講しないんだ」と叱られた時は、意外な感じがしましたね。

 親友が催眠療法を仕事にしていたので、その業界の胡散臭さをいろいろ聞いていたのもありますが・・・。

 私の本が売れ行きが良かったのは、武術に関心があるものの、同時に疑問を感じている人達に響いたからでしょう。

 ある会合で知り合いの編集者の方と会ったら、絶賛してくださいました。その方は私に良い印象は無いと思っていたので意外だったんですが、本を読んで、その方が思っていた疑問を私が明け透けに書いていたので、胸がすく思いだったということでした。

 本当に嬉しかったですね。本を通じて人の心と繋がることができる・・・というのは、私が映画を志した理由と同じだったからです。

 本やブログを読んでくださった方から応援のメールとか頂戴すると、本当に有り難いです。悪口だって、それだけ関心を持って読んでくれている証拠ですから、いつか評価が変わるかもしれません。

 親しく付き合いながら反目するようになった人も何人も居ますが、それ以上に応援してくれる人が増えました。

 お陰で、私は物書きをやっていく自信がつきましたし、今、少ないながらも優秀な会員が育ってきつつあり、武術研究の路線も間違いではなかったと確信でき、人生の中でも一番、楽しい時期かもしれません・・・。


 中国武術が脚光を浴びたのは、一にブルース・リー、二にジャッキー・チェン、三にジェット・リー(少林寺)のブームがあったからであり、そのブームを恒久的に続けてこれたのは、松田隆智先生が居たからだと私は思います。

 詳しくは本に書くとして、何故、松田先生があれほどの業績を挙げることができたのか?と考える時、それは個人の能力を超えて、“時代に選ばれた”からなんだろうと思えるのです。

 敢えて率直に申しますが、技芸の実力に関して松田先生以上の方は何人も居ると私は思っています。

 武術の世界は、とかく神棚に祭り上げたがる人ばかりで、編集者なんかも「松田先生は生神様ですよ」なんて小馬鹿にしたような顔で評する人も居ました。

 無論、誉められて怒る人はよほど変人だけでしょうから、松田先生も悪い気はされなかったかもしれませんが、少なくとも私の前では、人間としての弱さや悩みも隠されず、「長野君のことは友達だと思っているんだ」との言葉の通りに接してくださいました。

 そうは言われても、私が対等なつもりで接していたら単なるバカにしかなりませんから、私は敬意を持って接してきたつもりです。

 ただし、性格が似てたんだな~?と思うのは、結構、ブラックなユーモアが好きで、危ない話ばっかりしたものでしたね。技とか銃とか・・・。教えていただいたのも殺法ばっかりなんですよ。

「公開しちゃダメ」とは言われましたが、講座では教えちゃいましたけどね。

 多分、「そっか~? 教えちゃったのか~? う~ん・・・まっ、いっか?」と笑って許してくださるでしょう・・・。

 一番、喜ばれたのは、甲野氏のマケマケ話・・・。大爆笑されて、「もっと書いてやれ」と言われましたね(笑)。「あいつは顔が武術家じゃ~ないよ」と言われてましたよ。

 こういう本音をドンと出せる人は、やっぱりサラリーマンとかできませんね。私もできないもん・・・。

 人間は役割があるんですよ。その人にしかできないことがあると思います。

 仮に武術の物凄い達人が松田先生のような業績を挙げられるか?と問えば、できないでしょう。

 私だって代わりはできません。

 日本と中国の武術の歴史に於いて、松田先生は空前絶後の仕事を果たしています。

 武道を普及した人は何人か居ますが、武術の文化全体を現代に再評価させる基盤を築いたのは、松田先生が唯一無二ですよ。

 その事実をきちんと理解している人がどれだけ居るだろうか?と思うと、それを書き残すのは私の使命なんだと思います。

『秘伝』の特集記事はよく書けていたと思います。月刊誌の制約の中で、頑張ったと言えるでしょう。

 しかし、それだけで終わらせてはいけない。もう一度、松田先生の全仕事をきちんと評価して歴史に遺さなければならない・・・と、私は考えています。

 単に武術の世界の功労者としての扱いだけで終わらせてはいけないと思っています。

 特に、芸術や精神世界の分野との交流に関しては、このまま埋もれさせてはいけないと思っています。

 ですから、追悼講座と題しましたが、これは松田先生の業績をこれから広く知らせていきますよ・・・という私なりの宣誓式だったんです。

 松田先生と初めて出会った、ほびっと村でやるというのも、“仁義”でした。



PS;『詠春拳&美体操&ベリーダンス・エクササイズ1』量産体制ととのいました
ベリーダンス・エクササイズは特にお薦めで、これをやっていれば中国武術の最終奥義「抖勁(身体のどこからでも発勁できる)」もできるようになります! もう、打撃技の概念が変わりますよ。佐川幸義先生の「体の合気」もできるようになる・・・かもね? つまり、このDVDは、単に詠春拳の独修に留まらず、あらゆる武術・武道・格闘技・スポーツ全般・舞踊等々の身体を使うもの全般に関して画期的なボトムアップを図れるんですよね~。「達人しかできない秘技」だと思い込んでいた技が、あっさりできちゃったりする訳。そういえばクエストさんに『初級対錬(一)』を差し上げたら、N師範代の九十九式太極拳の演武にビックリ仰天されていました。「10代でこんだけできたら、将来はどうなるんだ?」と。でも、この異常な上達っぷりの秘密も、基礎錬体の中にあるんですよ。そこに更にベリーダンス・エクササイズを組み込むんだから、もう改造人間つくってるようなもんですよ。人間は、こんなに簡単に変われるんだな~?と。無駄に練習してもダメってことです・・・。
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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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