コンテントヘッダー

『幕末剣豪伝・尽忠百人斬り』

 14日は、府中けやきホールにて公演される高瀬道場プレゼント『幕末剣豪伝・尽忠百人斬り』を、高瀬道場の殺陣講座にも通っている小塚師範と一緒に観てきました!

20131217_002.jpg  20131217_003.jpg

 先日の日俳連での演武の見事なエンターティンメント性を、更に超える“百人斬り”の大殺陣が、今回のメイン・イベント。

 しかし、映画やTVならば編集でいくらでもごまかせるものの、生の演劇では演者の技量がそのまま出てしまう訳ですし、きちんと作劇された中に殺陣を有機的に表現するのは生半可な技量ではとてもできないでしょう。

 それに、独りで百人を斬るというのは、極真の百人組手をも彷彿させる荒行とも言えるでしょう。

 独りで斬って斬って斬りまくる・・・と言えば、古くは正和パパのバンツマが主演した伝説の『雄呂血』がありますが、松方パパの近衛十四郎の『柳生武芸帖・無頼の谷』や『浪人街』も凄いです。

 若山先生の『子連れ狼』や勝新の『座頭市』もそうですが、上戸彩の『あずみ』もなかなかでした。

 最近では『十三人の刺客』『るろうに剣心』の大殺陣も良かったですけれど、個人的には立ち回りの手順とか技そのものをしっかり視認できる方が私は楽しめますね。

 逆に、殺陣の見せ方として明らかに失敗してしまいやすいのも百人斬り系殺陣の落とし穴で、失礼ながらこれは失敗だな~と思ったのは、『ジパング』の百人斬りでした。

 まず、殺陣の訓練不足だったと思われるのと、殺陣のパターンが横薙ぎばかりで変化に乏しく、緊張感が失われていた点が致命的だったと記憶しています。

 殺陣の基本は、リアリティーであり、そこに適度なケレンや設定・構成の妙が加わることで良し悪しが分かれていきます。

 様式としての殺陣も悪くはありませんが、下手な表現だとガッカリしますよね?

『快傑ライオン丸』や『変身忍者・嵐』の殺陣は非常に素晴らしく、演じている方の技量の高さがうかがえました。子供向けだからとテキトーだったら、見るに堪えなかったでしょう。

 ユーモアを混ぜるのはその辺で失敗しやすいと思います。下手なのをギャグでごまかすのは最低の演出法です。技能の高さがあってユーモアが加わるから面白さが増すのです。

 ところが、今回は、流石は高瀬道場だ!と、私は大満足、大感動でしたよ!

 やっぱり、『獣人雪男』は観客のほぼすべてが知らない?でしょうが、ウルトラセブンなら、ほとんどの人が知っているでしょう。マニアックなネタは観客層との食い合わせが難しい。私も再起動したエヴァンゲリヲン状態で暴走して担当編集者に叱られてます。

 今回はすべてのバランスが良かった。

 ストーリーの構成も良かったですね~。明治の頃の新選組の生き残り、永倉新八老人が孫娘と一緒に登場し、柔術で暴漢三人をちゃちゃっと撃退してみせるシーンが、何とカッコイイことか!

 孫娘がブルース・リーの真似をするギャグもカッコ良さを損ないません。実に絶妙なギャグの挿入具合です。

「永倉新八って神道無念流だろ? なんで柔術使えるの?」なんて物知りぶって文句言うヤツもいるかもしれませんが、永倉が新選組で天然理心流も稽古したのは当然のことであり、天然理心流には剣・棒・抜刀と共に柔術も伝わっているのです。近藤勇以前には気合術も伝承していたとされます。

 まあ、それでなくとも昔の侍は剣術と併せて柔術や居合術の心得があって当然なのですよ。現代武道の感覚で考えてはいけません! マニアックな侍になると剣・柔・棒・弓・馬・泳・砲・手裏剣・占術・・・なんかも色々学んでいたりするのですから・・・。

 近藤勇が刀マニアだったのも有名な話ですが、例の虎徹の真贋論争も、一番、有力な説としては「近藤の虎徹は贋作だったけれども、新々刀随一の奇才と絶賛される清麿が打った刀だった」というもので、斬り合いで刃折れも曲がりもしなかったと近藤が自慢していたのも道理だったでしょう。何しろ、今や清麿は正宗より評価が高いんですから・・・。

 さて、本公演のテーマとも言えるのが、「新選組最強の剣客は誰か?」というものでしょう。

 一般的には、沖田総司が一番で、永倉か斎藤一が二番。しかし実戦になると近藤と土方は戦術的に強かった・・・というものが妥当かな~?と思います。

 しかし、専門的に研究していくと、素行不良で粛正されてしまった芹沢鴨がず抜けて強かったとされることが判明していきます。

 ただ、傍若無人の悪漢のイメージが強いので実力を評価されることが少なく、黙殺されている印象がありますね。

 高瀬道場の公演では、そんな歴史の裏に埋もれてしまった男たちに光をあててきている印象を受けます。

 エンターティンメント性の高い内容でありながら、その辺の時代考証には一本、筋を通していこうとする硬派な姿勢が、“剣者の意地”を示しているようで、個人的にいつも敬意を感じるところです。

 今時、武道の団体なんかでも、こういう意地をさりげなく示すところは少なくなりましたよね。“これみよがし”の人ならいくらでも居ますが・・・。

 それと、今回、そんな不遇な剣客、芹沢鴨を演じる加賀谷圭さんをもり立てるように、高瀬道場の指導陣が全員、脇に回っているところが、なんとも気持ちの良いものに感じました。

 誤解されると困るのですが、失礼を承知でいうと、加賀谷さんは、いわゆる二枚目の主役タイプではありません。アクの強い脇役で輝くタイプの役者さん・・・というのが普通の観点なんだろうと思います。

 例えば、土方歳三を主役にして森先生が主演という構成もあったでしょう。

 しかし、加賀谷さんの、あの天性のキャラクターの味のある存在感というのは、唯一無二のものだと思います。

 それこそ勝新や若山先生のような荒々しさの中に潜むキュートさ?とでも言うか、何とも余人には真似のできない存在感があり、様々な映画やドラマの中でも加賀谷さんが登場しただけで場が変わってしまうのです。

 そうですね~、サモ・ハン・キンポーなんかにちょっと近いかな~?

 小塚師範から聞いたところ、もともと、極真空手の猛者だったそうなんですね?

 やっぱり、私としては武道家出身のアクション俳優に活躍して欲しいんですよね~。

 棒を蹴り折るシーンもありましたが、あれは加賀谷さんにしかできない芸当でしょうしね? バット折りなんかの演武も上下を何人かでガッチリ固定しておいて蹴り折るのが普通ですが、一人で押さえつけただけで固定されてないのを蹴り折っちゃうんですから、凄いな~って感動しましたよ。

 極真出身のアクション俳優といえば、千葉真一を代表格として、真田広之、松田優作、ドルフ・ラングレン・・・と、そうそうたる顔触れも居ますが、ちょっとコレはいかがなものか?と思う『餓・・の・・・とか?・・・まっ、それはそれとして・・・。

 うちの会にもいろんな流派の空手を学んでいた人が来られていますが、総じて極真空手出身者の人柄の良さ、礼儀を弁えて常識的なところと、それと武道をやっている人間にはかなり珍しいことに他流の誹謗中傷の類いをまったく言わない方が多いんですね。

 これは統計的にそうなった結果なので、私の主観ではありません。

 無論、中には困った人も居ました。

 しかし、そんな人は決まって、ちょこっと在籍しただけの人でした。

 やはり、現実に肉体を打ち合って稽古しているから“痛み”を知っているという点が大きいのだろうと思います。

 どんな分野でも、頭角をあらわしていく人というのは“痛み”を知っている人だと思います。俺が俺が・・・と自己主張ばかりして悪いのは全て他人のせいにするような人は、いつの間にか周囲の人が離れていって、世の中で評価を受けることができません。

 成功する人は、周囲の人への接し方に思いやりがありますよ。そんな人だから周囲の人も「この人をもり立てていきたい」と思う訳ですね。

 役者というのはナルチシズムが強い人が多いと思いますが、意外に人並み以上に情の深い人が多いように思いますね。情が深くないと演技ってできないでしょうしね~?


 ちょっと脱線しましたね。

 本公演は、歴史に埋もれた芹沢鴨という人物にスポットを当てている点でも非常にユニークですし、芹沢を演じるには、この人しかいない!という抜擢で加賀谷さんとなり、しかも百人斬りという挑戦に至っています。

 これはもう完全に高瀬道場でなければ不可能な演劇なんですね。

 逆に言えば、「俺たちの実力を見せてやる!」という日本の時代劇衰退の現状に対する果たし状のような心意気さえ感じるんですね。

 はっきり言って、無謀とさえ思えるくらい挑戦的です。

 何故、無謀なのか?

 生の芝居では失敗が致命傷になりかねず、凡庸な殺陣演出での百人斬りでは逆に殺陣のプロ集団としての評価を傷つけてしまいかねないからです。

 アクション映画の宿命として、同じ技法を続けて見せると観客が飽きてしまう・・・というポイントがあります。

 日本刀の刀法は、実は大したパターンはありません。真向斬り・横払い・袈裟・斬り上げ・突きくらいです。

 下手な殺陣だと袈裟斬りと横払いしかしなかったりします。

 案外、難しいのが真向斬り。頭上から真っすぐ斬り下げるのは刀がブレやすく、特に軽い竹光だとブレブレになりかねないでしょう。

 初心者の場合、刀の抜き納め、構えがサマにならずに興醒めになる場合もあります。

 時代劇のベテラン俳優のさりげない所作なんかを若い俳優がやろうとすると、目もあてられないくらいギコチなくなったりもするのです。

 それと、意外と剣道の熟練者がサマにならなかったりもする。重い日本刀を構えてカカトを浮かして軽くフットワークを使ってしまったりすると、もうコントにしか見えない。

 ならば、真剣を使いなれている居合道家ならいいか?というと、これも乱戦のようになると現代居合道は運足がほとんど無いので難しいでしょう。

 ここまで読んで、「アレッ? ということは・・・」と気づかれた方もいらっしゃるかもしれません。

 そうです。私が殺陣に注目し、高く評価しているのは、実際に真剣を持って戦う場合を想定した時に、実は殺陣が最も現実の刀の戦闘に近いと考えるからです。

 古流剣術や居合術も、型として伝わっているのは一対一を想定したものが大半です。ということは、それだけやっていても対複数などの戦術は体得できない訳です。

 無論、そこから応用変化して対応する方法を口伝で教えるシステムがある訳ですが、これは師匠がこれは・・・と思う弟子を選んで教えるのが普通ですから、一般的に知られることはありません。

 私も自分で研究しましたし、研究の役に立ったのは殺陣なんですね。

 ま~、そんな次第で、本公演のクライマックスの百人斬りには大いに期待して見ました。

 いや~、期待以上。それも大きく・・・。

 大刀一本での様々な斬りに加えて、脇差での逆手斬り、二刀流、槍、そして、投剣術まで見せるバラエティーに富んだ殺陣の手を、ギャグも交えてノンストップで見せ切るのは、もう高瀬道場の底力をヒシヒシと感じましたね。

 よく、主人公が真ん中に仁王立ちで、からみがかかっていくのをテキトーに刀振って、からみがうま~くやられてくれる・・・というのもありますが、もう、全然違って、縦横無尽に動き回りながら多彩なパターンで斬っていく手順の多さ、複雑さ・・・。

 何か、『ヤングマスター』とか『刑事物語3潮騒の詩』を思い出してしまいました。

 声優で有名な山崎和佳奈さんが人数を数えていき、奪った拳銃で撃った数は数えないというギャグも良かった。

 この大真面目にやるのと平行して駄洒落のようなギャグが入るところが高瀬道場の味ですが、今回は抜群のハーモニーでしたね!

 本当、最高傑作だと思います。

 DVD化して販売してもらいたいです(ちょっとネタ的にピー音かぶせないといけない箇所がいくつかあったかも?)。

 非常に大満足して帰りに駅ビルのレストランで小塚師範と飯食ってたら、何と何と、高瀬先生が娘さんとスタッフの方と一緒に入って来られたので、驚きました。

 帰りに御挨拶と感想をお話して帰りました。

 高瀬先生、来年も期待していますっ!

PS;久々に、27日の横浜支部の稽古会には私も行きます! 近郊の会員さん、ふるって御参加くださいませ。最近、東京や橋本にはちょくちょく顔出しているんで・・・。

関連記事
スポンサーサイト
このページのトップへ
コンテントヘッダー
著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

FC2カウンター
リンク
最新記事
カテゴリー
FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

月別アーカイブ
ブログ内検索