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六月セミナー“伸筋”感想

 今年の月例セミナーも半分終わりました。

 早いですね~?

 うちの技は基本的に脱力技法なんですが、比較のために、今回は伸筋を使った技について解説指導してみました。

 伸筋技法について最初に理論を出したのは、私の記憶する限り、吉丸慶雪氏だと思います。発勁や合気の技法の本質が「伸筋を使った透徹力(吉丸氏の造語)である」というもので、20年以上前でした。

 この理論は密かに武道業界でかなりの注目を浴びていたように思います。

 もっとも、後の著作では「あれは間違いだった」と吉丸氏自身が書かれていたようにも記憶しています。

 恐らく、伸筋技法と脱力技法の違いに気づかれたからではないか?と思いますが、詳細に読み比べていないので確実なことは言えません。

 事情を知らない人が私が提示した理論と勘違いしたら困るので、敢えて付言しました。

 特に、空手や拳法、打撃系格闘技の人が、「脱力が大切というのは、屈筋の力を抜いて伸筋を使うことなんだ」と説明するようになったのは、吉丸氏の本が出て以降のことだと思われます。

 どうも、武道をやっている人間の特徴として、名のある人が言うことや本に書かれていることは何の疑いもなく鵜呑みにする習性があるようですね?

 例えば、「ナンバが江戸時代以前の日本古武術の身体操作法である」という真っ赤な嘘も、もはや何の批判検証もされないまま既製事実であるかのように流通されたままになっています。

 広めた張本人の甲野氏なんて、「誤解されて広まった」と責任逃れコメント出して済ましてるんだから、開いた口が塞がらなかったですけど、まあ、元からそういう平気で嘘ついて責任取らない人なのは十二分に判っていたので、今更、腹も立ちませんが・・・。

 でもね~、いい加減に真贋見抜ける人が、ちゃんと出てきて欲しいですね? でないとバカと嘘つきしかいない業界みたいでしょ?

 ナンバ、ナンバって言ってる武道の先生を見かけると哀しくなるんですよ。

 私はもの書きなので、専門の本に書かれていることが、いかにいい加減なものなのか?という現実(武道研究の大家というフレコミの藤原ナントカって人の本は、壮絶にデタラメでのけ反った。仮託の話を本当だと思って書いてるから笑えます。三蔵法師は武術の達人なんだって?)を知ってるので、基本、他人の理論は信用しません。試してみて、「これは正しいけど、これは間違い」という具合に判断しています。

 やっぱり、気質的に根っからの研究者タイプなんでしょうね?

 そんな訳で、私は屈筋だけでなく伸筋の力も抜くのが脱力技法の要だと考えています。

 けれども、どこがどう違うのか?というのは、見た目ではほとんど判らない。だから勘違いされてしまう。

 なので、伸筋技法をまず体得してもらって、それから脱力技法との違いを身体で判ってもらおうと考えた訳です。恐らく、自分で体得しない限りは違いに気づかないから。

 他に言ってる人が居るかどうかは知りませんが、私の研究によれば、いわゆる伸筋技法は、武術で言うところの剛の技法のことなのですね。

 剛の技というと誰もが力任せの筋力をイメージしますが、武術が戦闘の技術である以上、単純に生来の力任せの筋力を使う道理がありません。

 武術では、生来の力任せの筋力を“拙力”と呼んで区別しているのです。拙力と剛の技の威力は別物なのです。

「武術は肉ではなく筋(すじ)を使うのだ」とも言われますが、この言葉の意味を判ってる人がどのくらい居るでしょう?

 筋(すじ)を腱(筋肉と骨を繋ぐ部分)のことだと考えることもできますし、間違いとは言えませんが、それだけが正解とはなりません。

 正解は、「全身の伸筋の連結」であり、そのコツとして「骨格による誘導」がある。

「筋肉ではなく骨が大切」という理論を唱える人もいますが、これも正確に言えば、「骨格で誘導することで伸筋を連結していき全身の筋連動を用いる」ということになります。

 伸筋技法が打撃技と相性が良いのは、全身の筋肉を繋いでいくので威力が大きくなるという点にあります。

 そして、屈筋のように筋肉の収縮解放によって瞬発力を発揮するのではなく、筋肉を伸ばして繋げていくことによって力を伝達することができます。

 ブルース・リーが演武してみせたワンインチ・パンチも、広背筋から肩甲骨、肩、上腕、肘、前腕、手首、拳へと筋肉を繋げて力を伝達していました。

 これは南方の拳法によく見られる上体のみの操作で打撃力を出すものですが、各派に独特の工夫があって、中には内股の締め付けで骨盤を捻って力を送り出すやり方をする人も居ますし、これが沖縄剛柔流に見られる尻をしゃくりあげるように“巻く”動作に結びついているのだろうと思われます。

 つまり、伸筋を繋ぐ時に筋肉を締める剛体化の身体操作をする訳です。

 少々、細かく書きましたが、伸筋技法は私の専門ではないのでメカニズムが知れわたっても、うちの技とはかぶらないから無問題なので・・・(笑)。


 さてさて、今回のセミナーですが、のっけから「私は伸筋技法は嫌い!」と宣言してからやったんですが、やっぱり発勁、それも零勁(0距離打撃)でやってもらうのが一番、わかりやすいかな~?と思って、普通の冲捶(中段順突き)からやってもらいました。

 要領はいつもの発勁と同じですが、伸筋を使う場合、いつもはやらない足裏を踏み込んで力を足首、ふくら脛、膝、太もも裏、骨盤、背骨、肩甲骨、腕・・・へと背中側を対角線上に力が伝わるようにします。

 つまり、右足を踏み込んで左拳で打つ、左足を踏み込んで右拳で打つ・・・という次第です。

 ちなみに、このやり方は誰にも指導していませんでしたが、体道塾のN師範は自分で気づいていた様子で、先日、指導中に解説していました。

 多分、やってるうちに自分で気づいたのだろうと思いますが、一を聞いて百も千も応用させられる感じになってきて、オイチャンは彼が闇に呑まれないことを祈るしかできないっスね~。

 セミナー開始前にも回し蹴りやってみせていましたが、キック・スタイルでもプロ級の技のキレで、格闘家になっても活躍できるだろうな~?と思いましたが、ショービジネスの世界で“金”に塗れてダメになるより、彼の才能は活殺自在の武術家としてこれからの時代に役立てて欲しいから、目先の個人的成功は目指して欲しくないです。

 ただ、私は押し付けがましいセンセイにはなりたくないから、個人的希望として書いておくだけ・・・。

 これまで、不本意ながら何人もの会員を破門にしてきました。注意して直らなかったら破門にする。それだけのことでしたが、私は、やっぱり武術は生きるか死ぬかの精神を背景に持つものだという厳しい認識を無くしてはいけないと思うんですよ。

 強さを他人に見せびらかすためにやるものじゃないんですよ。

 無論、「俺、最強!」という自己満足に浸るためのものでもない。

 スポーツは競うためのものです。競うことで自分を磨き、相手を尊重するスポーツマンシップも生まれます。

 しかし、武術は生き残るための戦闘術です。生き残ることが目的だから手段は選ばないものです。卑怯卑劣も戦術の内です。戦う以上は勝たなきゃ意味がないんだから・・・。

 が、その修羅道の果てにあるのは、戦いの連鎖から逃れることです。敵が無い状態だから“無敵”と言う次第。

 そういう深い生命哲学に想いを馳せることのできる倫理的で理知的な人間でないと、軽薄な人間が武術を学べば、覿面に自惚れて舞い上がって優越意識に凝り固まってしまい、現世利益の亡者になった揚げ句が“外道”に成り下がってしまうんです。

 失敗例は腐る程、あります。

 少なくとも、游心流からそんな人間は出したくありません。方法は二つしかありませんね。入会希望の時点で排除するか、入会してからその兆候が現れたら二回注意して改善しなかったら破門にする・・・。

 まあ、経験上、言えることは、同じ失敗を二度繰り返す人は、だいたい、三回やりますよ。そして、三回やる人間は、いくら注意しても直らないですよ。

 なので、一回は笑って注意します。二回目は真剣に叱責します。三回目は破門します。

 破門した人のその後を風の便りで耳にすることもありますが、案の定、問題が拡大してしまっている人が多い。自覚的に直さないと自然に直らないですからね。

 そして、自惚れて舞い上がっている人間は注意しても無駄な場合が多いから、逆恨みされても嫌だから・・・と、注意しない先生も多いです。よって、注意しない先生から「認められている」と勘違いしてしまう訳ですよ。

 大体、成功哲学とか凝ってる人って、自惚れ屋になりがち(口先では謙虚さや誠実さをやたら言う)なんですが、やたらプラスのイメージ、快感原則ってことばかり言うんですけど、多くの場合、現実的問題点から目を逸らしてしまうんですね。

 脳内ファンタジー・ワールドに溺れて現実感覚が麻痺していく。現実逃避なんですよ。

 自惚れの怖さは、自分の問題点を反省しなくなることです。反省しないから問題点が拡大再生産されてしまう。

 で、事件に発展する時は、だいたい、金か女か、どっちかですね~。欲望は理性を狂わせるからね。


 あっ、すいません。余談過ぎました・・・。

 かく言う私も自惚れた時期はありましたよ。でも、そういう時期は天罰覿面で失敗するし、うまく行かなくなるもんなんですね~。

 ただ、本当に幸運なのは、「もう、ダメ! どうしようもない・・・」って、お手上げ状態に陥ると、不思議に助けてくれる人が現れるんですよ。

 そういうのが何度も何度もあって、「あっ、これは俺の力じゃないな~。何か役割があって、それを達成させるために俺が選ばれてるだけなんだ」と、ある時、ふと思った訳ですよ。

 だって、私の能力では、本来、ここまで武術の秘伝だの極意だのの秘密を解読できなかったですよ。

 解読できる先生方と縁があって教えを戴いて(見せてもらえば教えたと同然で、解説してくれただけでも半分以上は教わったようなものです)、次から次にいろんな種類の武術を研究する機会があったんですね。

 気づいてみたら、技の読解能力に関して斯界に並ぶ者が居ない水準に達していました。

 しかし! いろんな失敗を繰り返したのも無駄にならなかったですよね? もう、自惚れないもんね~。自惚れたら自滅の坂道を転がり落ちるだけだと判ってるから。

 だから、本当に良い縁だけが繋がってきていますし、問題起こしそうな人とは自然に離れていくようになりました。

 いや、離れるのもお互いのためであって、私と接触することで問題を起こしそうな人が起こさないで済むようになったりしてるみたい?

 そもそも、破門した人達も憎くて破門した訳じゃありません。「貴方には重大な問題点があるから反省してくださいね」という気持ちだった訳です。

 本当に憎い人には何も言いませんからね。

 そういえば、松田隆智先生もそうだったらしいですね? 愛情のある人に対しては時に凄い怒鳴ったりするらしい。でも、それは、その人に特別に愛情があるから相手の問題点を許せない訳ですよ。

 今は、私も松田先生の気持ちが凄くよく解ります。愛情が無いと怒れないもん・・・。


 で・・・セミナーに戻りますと、空手の逆突き(骨盤の横回転を加える)、形意拳の崩拳(骨盤の縦回転と後ろ足の寄せ足震脚)と続けましたが、伸筋技法は脱力技法と比べてキツイので、皆さん、ちょっと苦労してました。

 ただ、これで苦労しておくと、脱力技法が実に楽であるということが、より判る。

 それと弱点について理解していれば、効かなくさせることもできるんです。

 吉丸氏が「間違いだった」と書かれていたのも、ここに気づかれたからではないか?と思いますが、空手・拳法系で言及している人がいない様子なので、黙っておきます。

 何でか?

 弱点に気づいてない相手と戦えば楽勝で勝てるでしょ?

 やっぱ、うちみたいな弱小団体は大手から本気で潰しにかかられたらどうしようもないでしょう? 絶招(奥の手の必殺技)の十や二十は用意しとかなきゃ~ね~?

 大サービスで、一つだけ伸筋技法と脱力技法の見分け方を書いておきましょうか?

 指を大きく開いて張り出していたら伸筋使ってる。指が半握りで丸まっていたら脱力技法を使っている・・・という具合に思えばいいでしょう。

 無論、見た目で判らない先生も居ると思いますが、見た目で判らなければ、戦っても勝てないと考えてください。本当の達人は分析不能なんですよ・・・。

 ちなみに・・・最近、スピードを出して動いている人を見ると、何か無駄に見えて仕方がなくなってきました。予備動作が消えていればスピード出す必要が無いからです。

 個人指導で来ている人に発勁ローキックを1/3くらいの力で枕越しに蹴ってみせたら悶絶してしばらく(一分くらい)起き上がれなくなってしまいました。

 これは、見た目はヒョイッて感じの何のスピード感も迫力もありませんが、重心沈下のエネルギーを用いるのでメチャクチャな威力が出ます。キックミット越しに受けても脚が折れそうになるので、北島師範はまともに受けないで流すようにします。

 この時も、「先生が、メチャクチャ加減して蹴ってるのは判るんですけど、いきなり骨をぶっ叩かれたみたいに響いて、これ、直接、まともに入ったら絶対に脚折れますよ」と、ブルっていました。

「ねっ? 俺が怪我させないようにメチャクチャ加減してるって言ってるのがハッタリじゃないって判るでしょ?」と言うと、「いや、これは受けてみないと、見た目じゃ絶対、判らないですね?」と感想を言っていました。

 威力の質が違うんです。浸透勁の威力が地面と反発して骨に爆発的な衝撃を発生させるみたい。

 重心移動で沈身のエネルギーを作用させるには、フワッと打って、ズドーンと重さを乗せないとダメなんです。ビュッ!と打って素早く引き戻したら、力の作用する時間が短過ぎて、効かなくなるんです。

 確認していないんですが、人伝えに聞くところでは、同様のローキックを使うフルコンタクト空手家が居るんだそうですが、ひょっとして、うちに来たことある人かもしれませんね? この技、重心移動の威力をローキックに如何に作用させるか?と考えた末に私が開発したオリジナル技なんで・・・(新作DVDムック本でも実演しています)。

 スピードを出すためには予備動作が余計にかかってしまいます。そうやって出したスピードは、射出速度は速くてもすぐに落ちてしまいます。

 一方、重心移動を駆使すると緩急の使い分けもできるし、途中から動きを急加速することもでき、予備動作も必要ありません。速く見える動きはまだ遅い。武術の速さはまったく見えない動きの速さでなければなりません。

 この理屈は日本剣術を本格的に学び始めて判ってきましたよ・・・。発表するには、もう少し時間が必要ですかね~?


追伸;値段がバカ高いから、どのくらい売れるかな~?と思っていたら、お陰様で『秘伝神業の原理』、限定販売部数の半分を越えました。この調子だと数カ月後には入手不能になると思いますので、どうしても欲しい方はお早めにどうぞ。尚、生産中止したものの再販はしません。自分でも、ちょっとでも古い作品は恥ずかしくて見たくないんですね。会員の実力もどんどん上がっているので、最新作が最高傑作と御理解ください。

追伸2;念願の常設道場、相模原市渕野辺に七月から開設できそうです。もっと何年もかかるかと思ったけど、安い場所がこんなに近くにあったとは・・・?

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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