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高倉健さんの思い出

 最近のお顔をTVで見て、多分、循環器系の疾患があるだろうな~?と思っていたので、急逝の報にもそれほど驚きはありませんでしたが、それでも、一俳優の死ということでは言い表せない喪失感がありました。

 よく、“最後の銀幕スター”みたいな言い方をされる方もおられますが、高倉健さんに関しては、もっと昭和の日本男児のシンボルみたいなイメージがあったと思うんですね。

 無口で武骨で不器用で、金や権力では動かない信念の男・・・といったイメージ。義理と人情を大切に、ストイックに生きる男の中の男・・・というイメージは、むしろ、健さんが作り出したものかもしれません。

 何しろ、現実社会にそんな日本男児は存在していませんでしたから・・・。

 もっとも、健さんのイメージは、九州男児には一般的なものでした。

“肥後もっこす”とか“薩摩隼人”とか、九州男児的イメージはありますからね。

・・・とか思っていたら、北九州出身だったんですね~? 道理で・・・。

 60代以上の人達にとっては、健さんは任侠の人というイメージが強いようですが、私の世代(50代)だとスタイリッシュなアクションスターのイメージの方が強いです。

『野性の証明』『ゴルゴ13』『ザ・ヤクザ』の、寡黙なアクションスターというものです。

『幸福の黄色いハンカチ』も良い映画だと思いますが、若い頃の任侠映画のスターだった頃や、その後のアクションスター時代があってこその“健さん”だったと思います。

 昭和の男にとっては“健さん”は理想の日本男児であり、「男と生まれたからには、かくありたい!」と思っている人も多かったでしょう。

 亡くなられた松田隆智先生と話していた時も、何度か健さんの話になりましたが、松田先生が原作を書いた『拳児』にも、健さんそっくりのキャラが出てきて、拳児が憧れるシーンがありました。

 ヤクザ稼業をやっている人達も、健さんのイメージでヤクザに憧れた人が多いのではないか?と思います。

 もっとも、ほとんど知られてはいませんが、『電光空手打ち』『流星空手打ち』でデビューした健さんは、要するにブルース・リーの先輩格に当たるマーシャルアーツ系俳優?だった訳です。

 もし、空手やカンフーのブームの時期であれば、千葉真一のような空手映画の主演作ばかりやらされていたでしょう。

 事実かどうかは知りませんが、大学で合気道部の部長だった?とか、空手をやっていたとか、ボクシングをやっていたとか、そういう話を何かの本で読んだことがあります。

 もっとも、芸能人の“特技”は、相当に脚色されていると知ってからは、本当かな~?と思うようになりました。

 ただ、あまり知られてはいない様子ですが、居合道を嗜み、相当な愛刀家であったことは事実だった様子です。

 日本刀の専門家が書いた新書の本に健さんが推薦文を書かれていたのを見ても、相当な愛刀家であるだろうことが想像できます。

 一般的にはインチキな日本を描いたハリウッド映画のように言われているシドニー・ポラック監督の『ザ・ヤクザ』では、ロバート・ミッチャム、岸恵子と共演し、元ヤクザの剣道師範、“タナカケン”を演じています。

 私は、この作品の時の健さんの殺陣の静かな緊迫感が大好きです。日本刀の鋭さ、怖さを、これほど感じさせた作品は無いと思います。

 プロの殺陣師は「健さんはあまり上手い人ではない。動きが硬かった」と、あまり、評価していない様子なのですが、真剣の重みや殺気を出してぶった斬る表現に関して、健さんの太刀捌きは極めて武道的でした。

 余計な演技を省いたリアルな真剣の戦いというのは、こんな具合になるのでは?と思わせました。

『ゴルゴ13』も、「高倉健主演で外国で撮らないと許可しない」と原作者が無理難題を出して、それが実現したというエピソードもありますが、ゴルゴのイメージが健さんだったのは誰が見ても一目瞭然だったでしょう。

 映画としては傑作とは言えないでしょうが、健さんが演じているだけで尋常でない大作感が出ていて、続編の千葉ちゃんが演じた『ゴルゴ13・九竜の首』のゴルゴがモミアゲ濃過ぎてコスプレ感が強過ぎたのと比べると、やっぱり健さんしかできなかったよな~?と思いました。

 しかし、私が一番、好きなのは、『野性の証明』。この作品でデビューした薬師丸ひろ子の神秘的な顔立ちは、角川映画の象徴になりました。

「男はタフでなければ生きられない。優しくなければ生きている資格がない」「ネバーギブアップ」という惹句も良かった。

 まさに、健さんそのものを表現していたと思います。

 原作を大幅に変更しているそうですが、私は原作を読んでないので、『野性の証明』といえば、映画のアレなんです。

 この作品には、“杉沢村”や“おいらん渕”といった心霊物のアイコンも実は含まれているんですが、自衛隊の特殊工作隊という特殊部隊的なチームが、実は政府の暗殺部隊的な存在だということが描かれて、普通の自衛隊員でも任務のためには平気で殺すシーンがあります。

「先輩」と慕っていた筈の隊員が任務になると平然と健さん達を捕まえるのも怖い(だけど、かつての仲間を平然と殺していく健さんもハードボイルド過ぎます)。

 健さん演じる味沢を、部落の虐殺事件の犯人と誤解して追い詰める夏八木勲演じる北野刑事が、「お前ら、キチガイだっ!」と罵りながらも、味沢の人柄に触れて自分が犠牲になってトラックで戦車に体当たりして死ぬシーンなんか男泣きしちゃいますよ。

 味沢と負傷した頼子(薬師丸ひろ子。父親を殺されたショックで記憶喪失し超能力発現!)を降ろした北野が、「死ぬなよ」と一言、独りでトラック走らせて戦車に激突していく・・・。

 やっぱ、男と生まれたからには権力に媚びてはいけません! 

 たった独りで巨大な権力に戦いを挑む・・・というのは男のロマンですよね~?

 使っていた銃が、アーマライトAR18というのも、一時、日本の豊和産業でライセンス生産していたことを知っていて選んだのではないか?と思われますね。

 この作品の当時は、自衛隊の小銃は国産の64式だった筈ですから。

 この銃は同じくアーマライト社から出たM16シリーズとはメカニズムが違うプレス加工で作られたシンプルなアサルトライフルなんですが、当時はモデルガンもエアガンもありませんから(今も国産のトイガンは無い)、実銃を使っている筈なんですよ。

 ちなみに、その後、自衛隊に採用された国産銃89式は、このAR18のメカニズムを参考に研究開発されたのだそうです。

 蛇足ついでに書くと、64式は、7.62mm口径NATO弾(.308win)でしたが、その後、M16に使われる小口径高速弾、5.56mm(.223rem)口径がNATOの正式口径に採用されたので、89式は5.56mm口径になりました。

 日本人の体格から考えても反動の小さい5.56mm口径の方が使いやすいでしょう。

 AR18も5.56mm口径でした。

 ところが、イラク紛争とかアフガン紛争の時に砂漠地帯の遠方の敵を撃つには小口径の弾丸では威力が足りないことが判り、旧式のM14ライフル(7.62mm口径)なんかを引っ張り出して使ったのだとか?

 遠くまで弾丸が安定して飛ぶには弾頭に重量がある方がいい訳です。軽量の弾頭だと風の影響を強く受けてしまうからです。

 実際に、重機関銃で.50口径の巨大な弾丸で1.5km以上先の敵を狙撃したことから、.50口径のアンチマテリアルライフル(ロングレンジスナイパーライフル)の需要が増大し、ゴルゴ13やカリオストロの城に出てきた戦前の対戦車ライフル(口径は14.5mmとか20mm)のような独りでは持ち運びに困るような、どデカいライフルが各社で作られるようになりました。

 そんな、『野性の証明』の裏側から考えてみる日本の軍事事情なんかも興味深いものです。

 現在は、自衛隊にもアメリカやロシアやイスラエルのような特殊部隊が設置されていますし、警視庁にもSITやSATがありますね。

 でも、日本軍にも昔はあったそうですね。ま~、当然だと思いますけどね。

 北朝鮮の拉致被害者の返還なんかも、日本にスパイ組織があれば簡単に見つけ出して救出作戦がたてられたんじゃないか?と思いますけどね。

 やっぱり、忍者の伝統があるんだから、使わないのは馬鹿だと思いますよ。戦国時代とか昔のことを勉強していると、つくづく、今の日本人は去勢されてるな~?と思います。

 健さんは、「食うため」に俳優になったと言っていました。食えるようになるために好きでもないヤクザ役を数多く演じたのでしょう。

 しかし、たった独りで巨大な権力に立ち向かっていく健さんの姿は、一役者としでてはなく、現実の一人の日本人の男として憧れを感じない人はいなかったでしょう。

 死んだ頼子を背負って、コルトM1911を片手に戦車隊に向かっていく健さんの姿には、いつも権力が踏みにじっていく民衆の怒りと意地が溢れていました。

 今の日本人に最も必要なものだと思いますよ。

 そんな『野性の証明』、必見です!


 末筆ながら、高倉健さんの御冥福を祈ります。

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
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