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経験の有無は上達と無関係

 よく、「武道武術は経験者でないと上達できない」と言われたりするんですが、長年、いろんな人に教えてきた立場から言わせてもらうと、「経験の有無はあまり関係ない」と言わざるを得ません。

 むしろ、経験がマイナスに働いている例の方が多かったですね。

 武道武術をやっている人間は、勝負心が強く、「こうあらねばならない!」という頑なな固定観念も強いので、型にはまったやり方を好み、“よい加減”が理解できない。

 つまり、感性が鈍っているのです。

 身体の動きも心もカチンカチンに凝り固まっていて、柔軟性が無い・・・。

 経験者は、大なり小なり、そういう人がほとんどでした。

 もちろん、「経験者は上達できない」と言っている訳ではありません。

 うちの師範は全員、空手や合気道、JKDの経験者です。

 でも、実は、最初の頃は何もやっていない人よりも苦労しているんです。

 例えば、山田師範のクエストから出ている詠春拳DVDを見た人が、「動きが柔らか過ぎてメリハリが無い。あれは正統な詠春拳ではない」と批判していたそうなんですが、私が彼の技を封じてしまうから、改良した結果、メリハリが無くなって柔らかく滑らかにスルスル動くようになった訳です。

 いくら詠春拳が実戦的でも、ガチンガチンと力強く動いていたら“居着き”まくりになってしまうのですよ。普通の武道格闘技が相手なら通じても、それでは太極拳系の化勁の餌食になってしまいます。

 山田師範は考え方が非常に柔軟で頭もいいので、ガチガチの原理主義者のような融通の利かない正統派絶対思想は無い訳です。

 そういう訳なので、彼のDVDを見て習いに来ている詠春拳修行者は、非常に喜んでいますよ。なので、来年は、もっと一般向けにやって行こうと考えているそうです。


 それはともかく、長年、身体に記憶されている堅い動きを抜いて、柔らかく自在に動けるようになるのに、経験者は非常に苦労しています。3~4年、あるいは6~7年も堅さが抜けない人もいます。

 どうしても抜けなくて諦めて離れていった人の方が多い。熱心にやっていても、2年も上達が感じられなければ続ける気力が無くなるのも仕方ないでしょう?

 それぐらい、武道や武術の動きは堅いんです。やっている人達は解っていないかもしれませんが・・・。

 柔軟な動きを理想とするのも、武道武術の一般的な動きが必要以上に剛直だからなんですよ。

 堅く堅く動く訓練をしているから、柔軟な動きができなくなる。

 柔軟に動こうとしてもギクシャクしてしまう。

 このギクシャクした動きというのは、身体の協調連動が下手だということです。

 武道家や武術家は舞踊家の真似ができませんが、舞踊家は武道や武術の動きをすぐに真似できる場合が多い。

 これは、それだけ舞踊の動きの方が緻密で精度が高いからなんです。実際に舞踊の専門家に教えてみると、武道や武術を何年もやっている人ができないような動きを、即座にできてしまう場合が多かったですね。

「真似するだけでは本当の威力が出ないだろう?」と批判する人もいますが、とんでもない勘違いです。発勁でも合気でも下手に武道経験のある人よりずっと高い威力をすぐに出せるのです。

 7日は、通常の稽古会の後で、高瀬先生(高瀬道場)の殺陣講座で小塚師範が一緒に練習している方々が「試し斬りをやってみたい」ということで本部道場に来られました。

 皆さん、武道経験は無いそうですが、殺陣講座で刀の振り方の基本ができていたので、いきなりやらせても問題なく斬れていました。

 うちの会員で、最初から問題なくできた人は、ほとんどいませんから、いかに殺陣の稽古が役立っているか?という証明になったと思います。

 実際、その後にうちの会員がやってみても、上手くできなかったりしていました。どうしても筋肉を締めて力を出そうと無意識にやってしまうので、刃筋がブレてしまうんですよ。

 他所の試し斬り会にお邪魔させて戴いた時も、斬れたのは古流剣術の経験がある人くらいでしたね。普通の武道経験者は、初めてだと変に力が入って刃筋が狂ってしまうみたいです。

 私が試し斬りや武器術を奨励するのも、力任せにやっても上達しないからです。全身をうまく協調させないと武器はうまく使うことができません。

 これは剣でも銃でも同じです。

 剣道や剣術の経験者でも、最初からうまくできる人は少ないものです。大体が、間合の目測を誤ります。

 ただ、女性の方で真剣の重さに面食らって素早く振れずに失敗した方はいましたが、日頃から木刀振ったりして稽古量を増やせば大丈夫でしょう。重さに慣れていないから振れなかったのです。

 ちなみに翌日、合気道の指導者であった会員さんに初めて試し斬りをやらせてみたら、壮絶に下手でした。最初は怖がってペコンと当てるだけだし、「もっと素早く振って」と言うと、今度は力み過ぎて斬るとうより殴る感じ・・・苦労して削ったマキワラ差し込み用の棒をへし折ってしまったので、蹴ってやりたくなりましたよ(苦笑)。

 この人も過去に筋肉ガンガン鍛えたクチなんですが、どうして筋トレばんばんやった人って、こんなに身体感覚が鈍ってしまうんですかね~? 本当に、武術を上達したかったら、筋トレはやらない方がいいです! やるんだったら、ストレッチの方がいい。

 そんな具合で、合気道の指導員だった人が、この体たらくでは話にならないと思い、剣術と杖術の特訓やりましたよ!

 最後は木刀で休む間もなくガンガン打ちかかって無刀捌きやらせました。はたで見てたらイジメに見えたかも? でも、ちゃんと加減してるし、合気道やってた人間は、このくらいできなきゃ~、ダメだよっ!


 元に戻ります!

 7日は、小塚師範の友人だから、小塚師範の凄いところを解ってもらおうと思って、私は指示するだけで小塚師範にやらせました。作戦通り、皆さんの小塚師範を見る目が変わってましたね。

 やっぱり、自然に敬意を抱くようなのがいいんですよ。

 試し斬りの後は、木人椿の使い方や詠春拳の用法なんかも小塚師範にやらせましたが、白眉は、手裏剣!

 もう、彼のお家芸?のようになっていて、上から下から横から後ろから寝ながら(マジっス)・・・と、フザケた体勢からでも自在にビシバシ打てるから、何か手裏剣術の専門の先生だったら、「そんなフザケた打ち方をしちゃダメだ~っ!」って、怒り狂うんじゃないか?というくらい、漫画みたいな打ち方してました。

 もう、片手に三、四本同時に持って、打って刺さるのなんか当たり前だもんね~?

 しかし、私は手裏剣だけは本当に苦手で、25歳の頃に甲野氏に教わった時は、一メートル先の段ボールめがけて一万回打っても刺さらなかった・・・というくらい下手だったんですからね~。

 古武道演武大会でも手裏剣術の宗家が一本も刺さらずに会場がシーンとなったのを覚えています。それくらい棒手裏剣は難しい。十字手裏剣とかなら簡単に刺さるけど。

 自分も苦労したから、「手裏剣はメッチャ、難しい!」という強烈なスリコミがあったんですが、この日は、小塚師範が教えていると皆さん、いきなり、プスッと刺さる。

「え~、マジっすか~?」と、私は自己嫌悪に陥りましたよ・・・。

 しかし、手裏剣や試し斬りは、具体的に結果が現れるので、できるようになってくると非常に楽しいです!

 ゲーム感覚で楽しくやった方が、どんどん上達するみたいですね?

 これがやりたいばっかりに、常設道場を借りたようなものですから・・・。

 練習の後は、最近、行き着けの和食よへいで会食しましたが、皆さん、口々に楽しかったと言ってくださって、少しでも武術の楽しさを味わってもらえたなら良かったな~と思いました。

 無論、高瀬先生から殺陣を教わっている人達だから、スンナリできたのかもしれませんが、質の良い練習をしている人は、その他のものにも応用が効くんですよね。

 バリバリの武道やっている人達だと、こんなに上手くいかなかったかもしれません。

 高瀬先生も、「武道経験はアクション演技にはあまり役立たない」と言われていましたが、残念ながら私も同感です。

 ひょっとすると、これは日本武道特有なのではないか?とすら、最近、思うようになりました。

 香港(カンフー)やハリウッド(テコンドーやカポエラ、カリ)、タイ(ムエタイやクラビ・クラボーン)、インドネシア(シラット)なんかでは武術の動きを問題なくアクションに融合しているでしょう?

 日本の武道だけが形式主義に凝り固まってしまっているのではないでしょうか?

 武道武術をやっている人間は、二言目には“実戦的”と言いたがりますが、こんなこと言ってる人間が真に実戦的な技能を持っている実例を私は知りません。

 真に実戦を考えるのなら、どうして、ナイフや銃に対処する方法を工夫しないのか?

 ナイフ一本出されたらどうしようもなくなる技が、どうして実戦的なんでしょう?

 一対一でルールを決めて勝負するのが実戦?だと、どうすれば思えるのか? 私には皆目、理解できません。

 少なくとも、私が知る現代の達人と呼ばれた諸先生方は、TVや映画のアクション演技に関しても、本質的な実戦性を洞察できる方ばかりでした。

 亡くなられた友寄隆一郎先生はブルース・リーを高く評価されていましたし、「萬屋錦之介の刀捌きは合理的だ」といったことを実演しながら解説されていました。

「真の武術家は周囲のいかなる分野のことにも目を向けて、貪欲に自らの技芸の栄養として吸収しようとする意欲を持っていなければいけない」というのが友寄先生のお考えで、それを文字通り実践された先生でした。

 確かに、優れた武術家は、武道・武術のみならず、宗教・哲学・芸術・伝統医学・・・等々、ありとあらゆる領域の文化に目を向けて学んでいるものです。

 それを考えれば、私はまだまだ研究も勉強も足りません!

 ダメな有名人をあざ笑っていても自分のレベルが上がる訳ではありません。世の中には無名でも優れた人材はいますからね。

 私の役目は、日本武道のボトムアップに貢献することと、日本人に武術の楽しさや価値を再認識してもらうこと、です。日本が世界に誇れる数少ない分野なんだから、海外の人がガッカリしないよう、達人を大量に養成するのが私の目標ですかね?


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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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