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読みの重要性

 武術と現代の武道・格闘技の決定的な違いが何か?という点については、明確な考えを持っている人は非常に少ないようです。

 職業武術家でも「格闘技と武術は同じだ」と説く人もいます。

 他人の考えが正しいかどうか?ということは余計なお世話なのですが、私は武術と武道と格闘技は明確に分けて考えています。

 分けて考えないと研究が進まなかったからです。

 例えば、武術と言っても、「特殊な身体の動かし方をするもの」くらいに考えている人も甲野氏の影響でかなり多くなってしまいました。

 私がどう考えて定義付けしているか?というのは本でも、このブログでも散々、繰り返し書いてきているので、改めて書きません。

 ただ、最も特徴的なものとして、“読み”を駆使するかどうか?という点については強く主張しておかねばなりません。

 この“読み”とはどういうものか?

 ここを理解しなければ、私の目指す武術に到達することはできないでしょう。

 日曜の本部稽古で、たまたま常連会員の欠席が重なり、参加者が二人しかいなかったので、この日は特別に“読み”の具体的な技への展開について説明しました。

 これは、剣術で確認すると判りやすい。

 剣術の基本である中段(正眼)の構えから振り上げて振り下ろす・・・という真っ向斬りは、要するに、自分の正中線上を刀を振り上げて、相手の正中線をまっすぐ斬り下ろす技なんです。

 何故、これが基本なのか?というと、仮想の線である正中線を正確に認識し体感覚化するためでしょう。

 人間の最も重要な急所は正中線上に位置しているからです。つまりは一撃で倒せる急所を無意識にでも攻撃できるようにするためです。

 そして、袈裟斬りは、相手の正中線を斜め45度プラマイ15度の角度で斬る技。

 横払い斬りは、正中線を横から90度に斬る技。

 突きは、正中線上にピンポイントで貫く技。

 これを説明し、刀の振り上げ振り下ろしの挙動のタイミングに合わせて自分の正中線を護りつつ入り身し、自分の剣先を柄を持つ手に付ける合わせ技のやり方を指導しました。

 これを最初から感覚で体得しようとすると、剣術の場合は大怪我しかねません。

 感覚で躱そうとしても、正確に相手の剣を制することができなければ相討ちに持ち込まれてしまうからです。

「先日は、こういう具合に習ったんですが・・・」と入会して四カ月くらいのIさんが質問した技は、太気拳式の払い手でした。うちの会員が教えたようですが、武器術を嫌ってやろうとしない者なので、武器に対応するセオリーを解っていません。

 対武器は完全に捌かないとダメです。素手のやり方だと思わぬ大怪我をするハメになります。第一、素手で立ち向かう時点で自殺行為です。

 武器術の習練の必要性は、武器の性質を理解し、ケースバイケースで対応法を考える戦略思考を養成するのが目的です。自分が嫌いだから、やらないというのはダメですよ。

 素手の攻撃なら手だけで捌いても構いませんが、刀剣の攻撃を手先だけで捌いたら、身体は残ったままなので致命傷を負ってしまいます。必ず刀剣の刃先から身体を躱して致命傷を負わないようにしなければなりませんが、そのためには感覚的な組手練習で反応していてはダメです。

 まず、“目付け”によってタイミングを測る先の取り方の理論を理解しなければなりません。素手なら失敗しても怪我で済みますが、刀だと失敗すれば死にますからね。

“読み”にも様々な段階があるし、種類もあります。相手によって使い分けられるくらいできなくてはダメです。目付け・聴勁・気配の察知・脳波の同調・・・といった要素は、どれか一つで全部をまかなえる訳ではないのです。使い分けが必要です。

“読み”を感覚、つまり、最初から第六感に頼るのは危険です。

 まずは、五感を駆使して理合をしっかり把握し、そこから自然成長的な敵の脳波を察知する瞑想的領域“第六感”に入らないと、ダメです。

 剣術の基本で目付けの大切さを教えるのは、こういう理由があるからです。

 それから、今度は拳法で、相手が突いてきた瞬間の隙間に迎撃する練習をやらせましたが、やっている練習内容は、これまでの差し手練習と変わらないのに、明確に合わせるタイミングの取り方が上手くなっていました。

 これは、普通にやっていたら数カ月はかかるくらいの上達を10分かそこらで達成したようなものです。

 どうして、こんな現象が起こるのか?

 それは、剣という道具を媒介することでゴマカシが効かなくなるからです。素手同士でやっていては、どんなに精密にやっているつもりでも、精密さの精度に大きな開きが出てしまうのです。

 そして、一度、精度が上がれば、精度の低い動きは簡単に見切れるのです。

 私が素手の武術に興味が薄れてしまったのは、あまりにも雑だから。動きも意識も雑にやってもゴマカシがいくらでも効いてしまうのです。

 オープンボルトのサブマシンガン、イングラムMAC10を連射して敵を倒すのか、2km先からチェイタックM200スナイパーライフルで狙撃して倒すのか・・・の違い。

 倒すだけなら、どっちも変わりはありません。

 が、確実に仕留めるには、「下手な弾丸も数撃ちゃ当たる」という考え方は下策です。

 武術の“読み”とは、確実に仕留めるための「ワンショットキル(必殺の一撃)」を放つためのスコープみたいなものなんですよ。

 ズーム(可変倍率)やナイトビジョン(暗視装置)、イルミネーション・レティクル(目標に狙いを定める目盛りの色が変わるもの)が付いた高機能のスコープが無ければ、1キロ超えの標的に命中させることはできませんよね?

 武術も高度な戦術を駆使するには“読み”が必要不可欠で、読みの精度を高めることが必勝の方程式となります。

 一口に“読み”と言っても、その内容は多岐に渡ります。

 私が剣術・居合術に拘ったのは、“読み”を飛躍的に精錬するために最適な武術だと考えたからですが、細かく説明する口伝の重要性を再認識しましたね。

“読み”を感覚のみで処理した無住心剣術が三代目以降は失伝してしまったのも、習得カリキュラムが理論的でなかったからでしょう。

 武術は感覚を磨くことが最も重要ですが、だからといって感覚的に教えても人は育ちません。

 理論的に感覚を育てるカリキュラム(マニュアル)と、指導法(マニュアルの読解法)が必要です。

 そして、教える人間は学びに来る人に何が必要か?ということまで洞察して的確な指導をしなければなりません。

 それは、時には、教えないことも必要だったりするんですね。

 その見極めもまた、“読み”の訓練になるのですから、教わるより教えることの方が学ぶことは多いものです。


 翌日は個人指導で元合気道指導者のIさんです。月曜しか休めないので、月に一回、個人指導をしていますが、この日は前回、失敗しまくった試し斬りからやらせました。

 マキワラも一晩風呂で水に浸しておき、刀は青木先生に頂戴した松葉国正刀匠の試し斬り専用の刀。青竹斬り合宿でボロボロになったものを私が研ぎ直したものです。

 イマイチ、斬れ味が鈍ってしまっていたので、年末年始に入念に研いでおき、斬れ味は復活!

 Iさんも、前回とは別人のように綺麗にスパッ!と斬れていました。しかも斬り口も滑らかで、ほとんど歪んでいません。都合、三回やらせましたが、一度も失敗しませんでした。

 後は、手裏剣も10本ほど打って、全部、刺中!

「蛟龍歩を教えてください」と言うので、これも細かいコツを教えたら、途端に速度がググッと上がりました。

 この調子だと全盛期の実力を取り戻すばかりか、一流一派を名乗れるようになれるかもしれません。合気道と極真空手の経験があるから、基礎錬体をやって読みを駆使することができるようになれば、あり得ない上達をするでしょう。

 三月で50歳だそうですが、この年齢で、こんなに急激に実力が上がるということは普通ではあり得ないことでしょう。

 最近は、若手会員の異常な上達スピードに驚いていましたが、年齢は関係ないかもしれませんね~?

 ともかく、一カ月前とは雲泥の差でした。

 本人も嬉しかったみたいで表情が明るかったですね。

 試し斬りや手裏剣なんかは結果がはっきり出るから、上達度がすぐ判るじゃないですか? そこがまた面白いところだと思います。今度の日曜日は私も52歳になりますが、体力に頼らない武術の何とありがたいことか?

 でもな~? 中学の時に今の実力があったら、俺はヒーローになれたのにな~?と夢想する今日この頃です・・・。

 あっ、そういえば、横浜支部長が、大学生会員のTさんが、発勁ローキックを体得してしまったと感心してました。

 正直、突き蹴りはヘナヘナだったので、サンドバッグ買ったら特訓させようと思ってたんですが、あの難しい蹴りを会得するなんて?

 私があの技を開発するのに、毎晩、公園の東屋のコンクリの柱にキックミットくくりつけて三千本蹴りしたりしていたんですよ。

 それで、いかに瞬間的に重心力を蹴り脚に乗せるか?と工夫した技なんですよ。

 隠れて特訓したのか、それとも技術分析して体得したのか?

 いや、大したものです!

 
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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
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