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ヴァナム旗揚げ公演

 今年のバレンタインは、遠くポーランドからコンテンポラリーダンスの松田孝子先生からチョコレート贈ってもらったり、お芝居を見に行って、キャストの女性に貰ったりして、50代毒身?オッサンとしては、ちょっと嬉しいです。

 毎年、バレンタインデイは、街中歩くとバカップルばっかりで気持ち悪いので出歩かないんですけど、今年は武侠物のお芝居を見に新宿に行きましたよ!

 地図で見ても、どうも場所がよく判らなかったんですが、カンフー映画好きの小塚師範も行くと言うので、待ち合わせて一緒に行きました。

 帰りの電車の中で、ハッと気づいたのは、私、かなり昔に、この劇場に来たことあったんですね~?

 内容はまったく記憶に無いんですが、かなり狭いスペースだったことは覚えています。

 印象としては、田中泯さんが踊っているプランBによく似ていますが、もう少し狭い。

 当然、舞台も狭い。

「ええ~? ここで立ち回りやるの?」と、スタッフ気分で心配になりましたね。アクションやるには、相応の広さが無いと困難ですから・・・。

 それと、急遽、キャストが代わったりもしたらしく、芝居とアクションの訓練もある公演にとっては、それはもう苦心惨憺をしたであろうことが容易に予想できます。

 何しろ、舞台公演での殺陣アクションは一切のごまかしもやり直しも効きません。

 映像作品ならアクションをほとんどスタントマンに任せて、役者はアップの時に構えるだけで良かったりもします。

 劇場版『スカイハイ』で剣殺陣やらされた釈ちゃんがさっぱりできないのにキレた北村龍平監督が、「お前、修羅雪姫でやっただろう?」と言うと、「だって~。あの時はスタントウーマンが全部やってくれて、私はアップで構えていただけだも~ん」と反論して北村監督はギャフンとしたとか・・・。ドニーさんが絶賛したという話は何だったの? 谷垣監督~(苦笑)。・・・以来、アクション業界では「実はアクションできない釈ちゃん」という噂が広まってるのだとか?

 こういうことが起こるのは、“編集”という作業があるからです。アクションの本場の香港だって、役者が全員アクションできる訳ではないし、あのジェット・リーだってワンチャイ1の時は怪我して熊キンキン(鬼脚七やってた人)が相当な箇所を代わってやっています(よ~く見てると判るよ)。ジェットは自分がやって苦労したと話してましたが、私はオイオイと思いましたよ。熊キンの立場は?

 私も、自主映画撮ってたり、プロの作品にもちょこっと関わったりしたので、どう撮影して、どう編集を加えたか?ということは多少は判ります。

 そういう事情を知らない人は、役者本人がすべてを演じていると思っていたりするものですが、それはたとえアクション俳優であったとしても、あり得ません。

 例えば、ブルース・リーは武術の技は巧みでしたが、バク宙したりはできなかったそうで、『燃えよドラゴン』や『死亡遊戯』でバク宙しているのは無名時代のユン・ピョウであったとものの本に書かれていました。

『蘇る金狼』で、ランボルギーニ・カウンタックを運転して未明の都心をかっ飛ばす松田優作も、実は運転免許を持っていなかったのだとか(このエピソードから『免許が無い!』という映画ができたのだそうな)?

 ウエスタンの名作『シェーン』で見事なファストドローとファニング(早撃ち)を見せるアラン・ラッドも、実はブキッチョで拳銃を上手く扱えなかったので、ファニングのシーンは無名の頃のジェームス・ディーンが演じていたのだとか? これは本当かどうか知りませんが。

 そういえば、私も昔、自主映画で主人公が棒術を使うシーンの吹き替えをやったことあります。武術指導で参加したんですが、主役の人と身長や体型が同じくらいだっので、棒を素早く回転させたりするシーンを私がやった訳です。

 後ろ姿だから、意外と誰も気づきませんでしたね。流石に自分では判ったけど。


 まあ、ことほど然様に、映像作品は嘘をついている訳で、それをいかにもっともらしくリアリティーを持たせられるかどうかが、作品の出来を左右する訳です。

 ところが、役者にとっては、観客の前で演じる舞台公演の方がずっと臨場感を感じられて、やり甲斐を感じるものらしく、自主映画時代の友人達は小劇団の演劇ブームに乗って、続々と旗揚げ公演をしていき、以来、四半世紀も舞台役者を続けている人もいます。

 当時は自主映画仲間がそのまま演劇やるようになったので、「殺陣をやってください」と頼まれて、結構、指導に行っていた訳なんですが、それが武術そのものを教えるように途中で方向がどんどんどんどん・・・ずれていってしまったという訳です。

 私自身は過去、一度も芝居をやってみたいと思ったことがありません。

 しかし、思い出してみると、高校の文化祭や自主映画、市民運動のショートコント、アイドル映画とかで、お芝居みたいな真似をやったことがそこそこあります。

 ありますが、どうも、私は資質的に芝居をしている自分を客観的に考えて笑ってしまいそうになるので、こっ恥ずかしくて、どうにもできませんね~。面白いのは理解できるんですが、自分をさらけ出すのは大変ですよ。

 だから、私は役者の人達に対して“凄い人達”という尊敬の気持ちがあります。

 ただね~、アクションだけなら、やってみたいですね。若い頃は本気でクラタアクションクラブに入ろうか?と真剣に考えたくらいです。

 しかし、やめておきました。

 何故なら、私は武術以外の運動神経が、笑ってしまうくらい悪いからです・・・。


 能書きはこの辺にして、“現代武侠物語序章”と題したこの公演。いれ子構造で尺八の演奏があったり、始まる前のコントがさりげなく挿入されていたり、実に実験的な工夫がこらされていて、興味深かったですね。センスがいい。

 今まで、こういう芝居公演は見た記憶がありません。

 パンフレット代わりに用語集が配られて、武侠小説特有の専門用語の解説が書かれているのには感心しました。

 王重陽の名前が出てくる辺り、金庸先生の射チョウ英雄伝、神チョウ侠侶の影響を感じますが、この王重陽は実在した人物で、道教の一派の全真教の創始者です。

 全真教は比較的戒律が厳しい流派だったそうですが、道教は元々、仙道(無為自然が旨)から来ているので、戒律は無きに等しい。仙道は個人の修法なので宗教的な組織化には向かない。だから、戒律の厳しさは仏教などに対抗するために導入されたのでしょう。

 仙道は大昔からあって、秦始皇帝が不老不死の仙薬を求めて道士徐福を東方に派遣したというのは有名な話です。

 そして、徐福が上陸したという伝説は日本の各地にあり、徐福が神武天皇になったという伝説まであります。

 もっとも、仙道も源流はヨーガからもたらされたのは間違いないところでしょう。

 日ユ同祖論(日本とユダヤは同じ祖先を持つという説)に従えば、もっとトンデモな話になりますが、まあ、それはそれとして、東洋の医術や武術が人間の身体に秘められた潜在能力を引き出していくことを求めているという点では、共通しているでしょう。

 そんな背景も考えながら、公演を見ていると、現代と過去がパラレルな関係にあるような錯覚を覚えて、良い意味での違和感を感じます。

“序章”とある通り、今後、物語が連続していく中で世界観がSF的に展開していったら面白いだろうな~?と思いました。

 もともと、昨年末の特撮映画イベントで主催者の風見光太郎さんと知り合って見にきたので、特撮映画にも出演する予定の女優の根本さんがどんな役を演じているのか?と思っていましたが、武術を使う女殺し屋というカッコイイ役柄でしたよ。

 アクションは、全体的にリアルな武術の動きを見せることに拘っていて、武侠ドラマがワイヤーで吊ったりCGやパイロ(火薬使う)テクニックで爆発させたりするような派手さではなく、掌打での暗勁(浸透勁)の表現というリアルな武闘アクションを意識しているようです。

 正直、驚きました。

 普通の役者であれば、派手なアクションやスピード感で凄さを見せようとするものなのに、実に“武術的な表現”に拘っているのです。

 撞掌、刀掌、払い手、巻き手・・・といった内家武術的手技を駆使し、寸勁でふっ飛ばしています。

 恐らく、ケレン味のある無駄なアクションを嫌ったのかもしれません。武術武道を熱心にやっている人間だと、そうなるんですね。

 私なんかは、結構、ケレン味のあるアクションも好きなんですけれど、それは“芝居だからリアルである必要はないだろう”という気持ちから、多少の嘘っぽさも楽しんで見れる訳です。

 無論、ケンカ?とか勝負の場合は、徹底的にリアリストになりますけどね。

 よく、アクション俳優とかプロレスラーを「あんなのフェイクだ。実際には闘えない」みたいに貶す人がいるじゃないですか?

 本当に馬鹿だと思いますよ。こういう発言する連中って。

 プロのアクション俳優やプロレスラーの日々の肉体鍛錬なんて、週に一回、道場に通ってるような人間の比ではありませんよ。

 以前、表演武術をやっている人がセミナーに来ていましたが、武術の必殺技ばかり教えたら、3時間後には戦闘力がざっと数倍になっていましたよ?

 肉体が練れていれば、技は即座に体得出来るし、威力も一気に倍加するんですよ。

 予想はしていましたけど、現実に目の当たりにすると驚きますよ~。やっぱり・・・。


 脱線しまくりましたが、そんな具合で、アクションを期待していたら、ちょっと地味に見えてしまうかもしれませんが、武術的なリアリティーとして見たら、よくこういう表現を頑張ってやったな~?と思いますね。

 いや、ね~・・・普通の立ち回りだとそれなりに間合を空けてやれますけど、ここまで舞台が狭くちゃ~、どうにもなりませんからね? よく、あそこでやったな~?と、私はそれだけでも拍手したくなりましたよ。

 風見さんは“できて当たり前”として、根本さんはよく頑張ったな~と・・・。

 いや、頑張ったという意味では、立ち回りは無いけど主役の女の子は本当によくやったと思います。精神的にキツイでしょ~、その設定は・・・?と思いましたけどね。

 また、再演あるかもしれないから、これ以上のネタバレは書きませんけど・・・。

 そうそう・・・尺八の演奏と解説も非常に良かったです。

 旗揚げ公演、お祝い申し上げます!

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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