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岩間先生の絶技

『秘伝』の最新号は“殺陣”の特集で、殺陣大好き人間としては非常に楽しく拝読しました。

 林邦史朗先生は、10年くらい前に古武術のムック本で取材要請された時に、担当編集者がまったく古武術について知らなかったので、「古武術に関しては専門知識がないと書けませんよ。僕は専門誌のライターやってたから、解らないことあったら聞いてくださいね」と言っていたら、案の定、どうにもならなくなったらしく、急遽、「ライターもやってください」と依頼され、おまけに取材先の選定まで手伝うことになり、その時に、「甲野さんが有名だけど、あの人は売れっ子だから、今から依頼しても無理でしょう。それより武術に詳しい殺陣の先生の方がいいでしょう」と、私が提案した先生の中のお一人だったのです。

 昔、ある演武会で試し斬りを披露されているのを見ていましたから・・・。

 取材の日も、当日の朝に担当者から連絡が来て、急遽、私が行くことになり、朝から朝霞まで行きましたね~(おまけにその日は夕方から三鷹に天然理心流の取材に行ったし、大変だったな~?)。

 林先生には、随分、いろいろ注文してやって戴きましたね~。私が個人的に見たかった逆手での試し斬りも見せて戴いたのが、非常に勉強になりました。

 先日、そのムック本を地方会員の方が入手したといって持参してくれましたが、問題起こして離れた会員も写っていたり、いやはや、何とも・・・と思いましたけど、全体の7割くらい私が書いてしまったものですから、私が企画したムックなんだと誤解されてしまいましたね? まあ、別にいいんですけど・・・。

 カムイの島口先生は、『キルビル』が有名ですが、刀剣アーティストと呼んだ方が相応しいような印象がありますね。

 モキュメンタリー格闘映画で古流居合の師範を演じられていたのが印象深いですが、杉作J太郎さんの監督作『幽霊スナック殴り込み』(だっけ?)にも出演されていたと記憶しています。

 余談ですが、杉作さんが東映チャンネルで松方さんにインタビューしているところを拝見しましたが、非常に丁寧な言葉遣いと、松方さんに対する尊敬の姿勢がうかがえて、文筆家としてはアウトロー的な芸風なのに、本人は素晴らしく感受性の豊かな人なんだな~?と、好感を持ちましたよ。

 それから、今、殺陣といえば、最も幅広く活躍されているのは高瀬道場を率いる高瀬將嗣先生でしょう。刀剣女子が、これだけ増加したのも、高瀬道場の多加野詩子先生が率先して広げていかれたからではないか?と思っています。

 昨年末に『秘伝』の副編集長氏とたまたま会った時に、「当然、高瀬道場も取材するんですよね?」と確認していたので、楽しみにしていました。

 高瀬先生は、礼法や所作なども広く勉強されていて、私なんか、むしろ教えて戴いているような感じですよね。

 扇子とか懐紙の使い方とか全然、知らなかったですからね~(武術的な使い方しか研究してないから)。

 最近、時代小説書いたりするようになったから、勉強し始めていますけど、いやはや、勉強しなきゃいけない事柄の多さにゲンナリしてますよ・・・。

 古武術に詳しいから解ると思うかも知れませんが、現代にまで残っている古武術流派って、ほとんどが明治以降に型とか改変されているんですよね。

 恐らく、例外は無いと思います。多少、研究してみれば、流派の草創期とは変わっている点がいくつもあることに気づく筈だと思います。

 例えば、居合術の多くが正座に大刀を差してやっていますが、江戸時代以前の武士は正座の習慣が無く、また、大刀を差したまま座ったりしません。

 制剛流も正座だったのでおかしいな~と思ったんですが、古い伝書を入手したので確認してみると、やっぱりもともとは正座じゃなかったんですね。他流と同様、改変された訳です。

 その制剛流を採り入れた尾張の新陰流から派生した居合術を、柳生流や新陰流の居合術であると称して教え、あまつさえ、「柳生石舟斎(上泉伊勢守)が学んだ神道流の居合術から・・・」なんて、怒る気もなくなる程の大間違いを主張してしまう人も居るんだから、「本当にお前ら、武術の文化を正統に遺す気があるのか?」と聞きたくなるんですよ。

 神道流の居合術と比較してみたら、全然違うのバレバレじゃん。ね~?

 この高度に発達したネット情報化社会の中で、「知らなかった」で済みますか?

 居合術の開祖と崇められる林崎甚助重信の技も、もともと三尺三寸の大太刀を抜く技で、現代に伝わっている林崎系居合術とはまったく別物です。

 太刀から定寸(二尺三寸)の帯に差す打刀に習慣が変わったのに合わせて技法も変わった訳です。さらに幕末から明治以降に正座でやるようになったのでしょう。

 こういう事情を知らずに、現代の形から類推すると間違ってしまう訳ですよ。

 もっとも、うちの会員にも、こういうことを定期的に講義している訳じゃないので、ちゃんと教えていかなくちゃいかんと思っています。

 技だけじゃなく、知識も大切です。いくら実力あっても頭がカラッポじゃあ、恥ずかしいですよね? 知識のあるインチキ武術屋に、コロッと騙されてしまう武道の先生方も多いですが、それは知識と見識が足りないから見抜けないし、有名だというだけの権威に対して盲信してしまう態度もいけないんですよ。

 はっきり言って、勉強が足りないんです。腕を磨くのと同等以上に頭脳を磨かなきゃ~ダメですよ。

「俺は頭が悪いから・・・」と口癖にしている人は、よ~く心掛けてください。「俺は頭が悪いから勉強しても無駄なんだ」と言い訳しているに過ぎないんですよ!

 私だって、自分で頭が悪いとは思ってませんが、日々、「勉強が足りない。もっと学ばないといかん!」と思っています。技の練習も、どうやればできるようになるか?と、いつも考えて練習しています。

 一時間でも上達が感じられなかったら、もう、やる気がしなくなりますよ。ルーチンワークの練習なんか一分だってできません。

 こういう性分だから、興味の持てないことだとまるっきり頭に入らないんですけどね。

 好きなことだと熱狂的に集中してしまいます。

 そういえば、橋本支部に通っている会員さんが私の影響で武器マニアになり、日本刀の本も買ってきていたんですが、そこに掲載されている刀の写真で、「長野先生、このヘンなヤツは何ですか? 僕の模擬刀にはついていないんですが・・・」と言うので、見てみたら、“返り角(かえりづの)”という部品のことでした。

 これは鞘の栗型(くりがた。下緒“さげお”を装着する部品)の下の方に間隔を開けて装着されていたりするものなんですが、鞘が帯に固定して納まるようにするストッパーなんですね。

 私は、鞘引きとかよくやるので、これが付いていると邪魔なので装着していませんが、ちょっと高級な拵えだと装着されていたりするもので、水牛の角で造られていたりしますね。

 そう説明すると、「はぁ~、なるほど~!」と、感心していました。

“三所物(みどころもの)”も質問されたので、説明しておきました。笄(こうがい)・目貫(めぬき)・小柄(こづか)を総称して言うのです。

 そういえば、日本刀の本だと「愛好家だったら、このくらい当然、知ってますよね?」という感じで説明されていなかったりしますから、初心者は混乱しますよね?

“口伝(くでん)”なんて言葉も、読み方を知らずに「こうでん」と読んでいる会員さんが何人も居ました。“理合(りあい)”を「りごう」と読んでた先生も・・・。

 私も10年前は、日本刀についてはさっぱり知らなかったですよ。何十冊も読んだからな~(百冊越えてるかも)?

 いつの間にか専門の本(『時代劇の間違い探し』)を書けるくらい詳しくなりましたけど、まだまだ、勉強しなきゃいけないことは山ほど有ります!

 例えば、無反りの直刀の刃文を“のたれ刃”だと思っていたんですが、蛍光灯の明かりに透かして、よ~く観てみたら、何と、細かい丁子乱れの刃文でした。古い刀なのと、刃のところが全体的に白く“刃取り”してあったので判りませんでした。重花丁子(じゅうかちょうじ)乱れみたいです・・・。沸(にえ)出来で金筋(きんすじ)、砂流(すなが)しが多く、新刀でもかなり古い刀だと思いますね。ハマグリ刃で、猪首(いくび)切っ先だし・・・。

 あっ、そういえば・・・『時代劇の間違い探し』をお贈りしていた時代小説の大家の先生からメールを頂戴しまして、うちの道場に見学に来たいとの恐れ多い依頼を頂戴しました。

 その先生は非常に勉強熱心で、歴史に関する資料本が図書館ひらけそうなくらい持ってらっしゃると聞いていますが、今回の本で従来の武芸考証本に書かれている事柄の間違いをいくつも指摘したので、愕然となってしまわれたらしいです。

 それで、実際に確認して、これからの執筆の参考にしたいということでしょう。

 昨年は漫画家の方が来られて、今年は時代小説作家の方も来られていますが、こんな大物の先生が来られるというのは初めてで、流石にちょっと緊張しますね。


 あっ、それと、『秘伝』を読んでいて、岩間統正先生の太気拳の記事が凄く良かった!

「差し手は手ばかりでやるものじゃない」というのは、下手なりに私も研究していたことなんですが、斯界の大先輩の言われる言葉に、大いに勇気付けられました。

 ただ、相手の攻撃を遮るだけだったら意味が無いと思っていたんですよ。それだとパリーしたり受けたりするのと同じことでしょう?

 すぐに次の攻撃が来るから、打撃戦の間合のまま差し手を遣ってもダメで、同時に間合を潰して相手の体勢を崩していかないといけない筈です。

 全身のどこでも差していって、相手の攻撃を滑らし逸らしながら、こちらの迎撃は命中させる・・・というものでなければ、武術としての戦術的用法にならない筈ですから。

 もっとも、上半身で差すのはできても下半身(脚)で差していくのは難しいですよ。

 やっぱり、岩間先生は凄いな~と、改めて感動しました。

「頭が良くないと武術は上達しない」と、この業界では言われるんですが、岩間先生には納得させられますね。

 それに、あの若々しさ・・・十数年前にお会いした時と、まったく変わらない!

 先日、アクションアワード2015で倉田保昭先生が70歳と聞いて、会場がどよめいていましたが、まさにそんな感じです。

 本当に、岩間先生は凄いですわ~・・・。


 そういえば、土日の稽古に兵庫から来ていたSさんも、もう結構なお年なんですが、うちに来るようになって、やっぱり10年くらい経っているでしょうか?

 会員になってからは5年くらいかと思いますが、ほとんど武道経験が無く、うちの純粋培養に近いんですけど、久しぶりに見ていて、随分、実力がついていたので、初段あげました。

 特に、独己九剣がしっかりできていました。

 これ、ちゃんとできるのは北島師範くらいなんですよ。

 どうしてか?というと、私がマンツーマンで細かく教えたのが彼だけだからです。

 時には真剣遣って教えたりもしましたからね。

 Sさんも形はしっかりできていました。

 できれば道着を買って練習してもらうと、全然、完成度が変わると思います。

 せっかく、遠くから来ているので、手裏剣も特訓してもらいました。一間(1.8m)ならほぼ刺さるようになっていたので、今回は二間で刺せるように練習してもらいましたが、まだちょっと無理で、剣が回転してしまっていました。

 直打法では無理なので、反転打法でやってもらいましたが、距離が的確だと、こっちの方が刺さったりします。

 クルッと回ってプスッと刺さるのは面白いですよ~。

 手裏剣術は練習するのが難しいですが、一人暮らしなら六畳くらいの室内で練習できるよう、『中級対錬』DVDで小塚師範が的の作り方から細かく解説しています。

 室内で練習するなら畳み針でもできますし、先を尖らせた箸でもやれると思いますよ。

 独り練習には武器術がもってこいですからね~。

 武器を敵だと思って、敵を自在にコントロールするつもりで練習するのもいいですよ。

 形意(心意)拳や八極拳が槍法から発展したと言われるのも、槍法をやってみて始めて、「なるほど」と思います。

 手裏剣術は劈掛掌や通背(臂)拳に通じるような気がしますね?

 程派八卦掌は刀で、尹派八卦掌は剣や峨嵋刺かな?

 武術は武器術をやることで、より深く理解することができます!

 どうも、現代武道は素手で競技をすることに特化してしまって本来の武術とは違うものになってしまったんじゃないか?と思えますね。剣道も防具に守られ過ぎだし・・。

 空手も棒術や釵術、トンファー、ヌンチャクをやって始めて、解る理合があります。

 日本の武術は日本刀を知らないと本質は理解できません。これは間違いないことなので、強く主張しておきたいと思います。

 合気道も素手の武道にしようとしているみたいですが、剣や杖を捨ててしまえば深みが無くなっていく一方だと思いますが・・・。

 それに、武器も練習することで、一生、楽しく練習できるようになると思うんですけどね~?


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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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