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模擬刀の補修

 小塚師範が使っていた模擬刀が相当、傷んでいたので預かって補修することにしました。

 柄には鮫(エイの革)が使ってあり、外装は割りと良いんですが、刀身は亜鉛合金の鋳物にメッキしている廉価の美術刀で、鐔の装飾の鯉が手元の方にレリーフされていたんですけど、これが“くせ者”で、尖り過ぎていて指を傷つけそうだったんですね?

 実際、知らずに借りて使っていた会員が指から血が滲んでいて、こりゃあ危ないな~と、応急処置で、道場でダイヤモンドヤスリで尖っている部分を丸めましたが、刀に嵌めてあるままだと細かいところまでは処理できません。

 それで預かった訳です。

 柄を外して鐔を逆さまに装着すれば問題解決するのですが、小塚師範が外そうとして目釘を抜こうとしたけど抜けなかったそうで、「柄と刀身が接着されているみたいで分解できませんでした」と言っていました。

 安い美術刀ではよくあることです。

 柄がプラでできて鮫の肌目のようなブツブツが付いたものだと、よくボンドで固められていたりします。こういうものだと柄糸を解いてバラすしかないんですが、これは木材に鮫を貼りつけて目貫も付けて柄糸が巻いてあるので、それなりに手間のかかった作りなんですね。

 が、それよりも問題は、鞘が割れていることでした。

 小塚師範は接着してエポキシパテで成型していたんですが、鞘の真ん中の繋ぎ目から割れてしまうと、普通に接着しただけだと強度的に無理があって、また同じところから割れるんですよね~。

 本当に、一回割れると割れ目を接着するだけでは強度不足なんですよ。小塚師範も仕事が終わって帰ってからはニャンコの世話も大変だろうから、作業する暇もないだろうしな~?と思って、預かった次第。

 私はいつも真剣の外装を自作しています(20回以上やってます)から、模擬刀の補修くらいはどうってことありませんからね。

 もっとも、いろいろゴタゴタと忙しかったものですから、中々、手付かずだったんですが、ようやくヒマができたので、金曜の夜に補修作業をやりました。

 まず、柄を外すために、目釘(材質は竹)を抜かなければなりませんが、確かに堅くて抜けません。小塚師範が抜こうと悪戦苦闘した痕跡が目釘に残っていました。

 こういう場合、私は目釘そのものにキリで穴を穿ち、少しずつ削り取ってしまいます。

 目釘は新たに作らなければならなくなりますが、また竹の丸棒を削って新しく作ればいいので、まずは柄を外すのを優先します。

 この模擬刀は鐔が緩んでいたので、「緩むということは接着剤で固められてはいないんじゃないかな?」と思ったのです。であれば、目釘さえ取り除けば柄は外せる筈です。

 目釘を削り除くと最初は堅かったんですが、思った通り、ちゃんと柄は外れました。接着剤も使ってありませんでした。これで作業は楽に済みます。

 切羽二枚と鐔を外して、鐔を反対側にしてはめ込み、柄を装着しました。大雑把に削った竹の丸棒を抜き差ししながら少しずつ削って調整しながら目釘を作り、打ち込んでみたら、ちゃんとなりました。これで分解も可能になりましたよ。

 刀身に刃毀れもあったので、こちらも金属用ヤスリとダイヤモンドヤスリを使って均しました。これで刀そのものは完了です。

 次は、鞘です。

 繋ぎ目から割れた鞘は、居合で使うには危険です。たとえ模擬刀でも超高速で引っこ抜いた時に、また鞘が割れて左手の平を傷つけてしまうかもしれません。

 実際、真剣だと、このような事故が多いのです。古流居合術の遣い手として有名な先生も、若い時に鞘割れで左手の平に大怪我をしているという噂を聞いたことがあります。

 実は私もやったことあります。怪我はしませんでしたが、それ以来、鞘の強化補修はいろいろ考えるようになりました。

 愛刀家に言わせれば邪道なのでしょうが、私は下手糞なので御容赦ください!

 結果、割れた鞘は鯉口から握り一個分の箇所を重点的に補強します。ここが割れなければ問題ないのです。

 で、どうするか?というと、“針金を巻く”のです。

 しかし、鞘の表にそのまま針金を巻いたのでは不細工過ぎますから、見苦しくならないように補強を兼ねた装飾を施します。

 まず、鞘の表面を漆塗装を剥ぎ取るくらいに薄く削り、彫刻刀(三角刀か切り出し刀)か三角ヤスリで針金を巻き込む溝を彫ります。溝を彫るのは、針金を埋め込むためです。

 そのまま巻くと針金を巻いた部分が出っ張るので、鯉口近くを握った時に太くなり過ぎてしまったりするので、握り心地を考えて溝を彫って埋め込むようにしています。

 彫った溝に針金を埋め込むように巻き込みますが、何周巻くかは好みで構いません。

 5~6周でも、万が一、鞘が割れても刀の刃で手を傷つける心配はなくなりますから。

 私は10~12回は最低、巻いていますが、これは念のための処置なので、回数はそんなに気にしなくて大丈夫ですし、針金も0.5mmの太さくらいで十分です。

 今回は鯉口(コイグチ、刀身を抜き納めする開口部分で鯉の口のように見えるからこう呼ばれる)から栗形(クリガタ、下緒を通して装着する部品で帯に差した時に表側に在る)の手前まで12周巻きました。

 さて、最後は、この針金を巻いた部分に接着剤で革を貼り付けて完了です。私は東急ハンズで色付きのエイ革を買ってきて柄巻きに使っている残りを利用しています。

 これは非常に丈夫なのと、格好がいいので気に入っています。目の細かいヤスリで削って“研ぎ出し鮫”にするのも本格的になっていいかもしれませんね?

 今回は柄木用に使った残りの“焦げ茶染めの鮫(エイの革)”を接着しましたが、どうもサイズを合わせるのに苦労しました。それで5cm幅に長く切って斜めに巻き込むように接着してみました。

 ツギハギになると不細工かな?と思ったんですが、苦肉の策がかえって格好良くできました!

 刀のハバキ(刀身を鞘の中で浮かせて固定する金具で赤銅や真鍮、金着せ、銀などでできている)もユルユルになっていたので、これも鞘の鯉口の内側に雲丹を買った時にためていた木製の台から取った薄板をハサミで適当に切り、接着しました。

 ちなみに、これは水に浸して塩抜きしてから天日干ししておくのが良いと思います。塩分が残っていると真剣の鞘に使うと錆が発生する原因になりかねません。まっ、模擬刀ならそこまで神経質になる必要はないと思いますが。

 小塚師範は木目シートを貼り付けていたみたいですが、私も昔、やっていたんですが、これだと剥がれた粘着剤がハバキや刀身にこびり着いてしまったりします。それで、これは剥がして新たに作った次第です。

 薄板を接着しても使っていればすぐに擦り減ってしまうのですが、だからといってアルミテープとか硬い粘着シートを貼っていたりすると刀身を傷つけてしまったり、粘着剤がこびりついたりするので、面倒臭くてもマメに薄板(桐みたいな柔らかい材質のものを使ってください)を貼って補修する方が結局はベストだと思いますよ。

 もちろん、武道具店に頼めば補修はしてくれるんですが、新しい模擬刀買った方が安上がりではないか?と思うくらい料金がかかる場合もあります。自分でやった方がずっと安上がりだし、刀への愛着も湧いて刀の構造を理解することもできます。

 特に居合の稽古をやっている人なら、鞘の補修くらいは自分でやれないとダメだと思ったので、今回は私なりに工夫した“やり方”を簡単に解説してみました。

 揃えておく道具は、目釘抜き(武道具店に売ってる。無ければ金づちと先端が細くなった金属の棒で可)、キリ(電動ドリルでも可)、木工ヤスリ、金属ヤスリ、ダイヤモンドヤスリ、彫刻刀、瞬間接着剤(すぐ硬化する。ゼリー状と液状があると便利)、ウルトラ多用途超強力接着剤(固まるとゴム状になる)、エポキシパテ(粘土みたいに練って使い、セメントみたいに固まる)、針金(0.5mmくらいがいい)、工作用薄刃ノコギリ、竹丸棒(竹刀に使う竹だとモアベター、削って目釘を作る)、皮革(東急ハンズにいろいろなのが売ってるよ)、ハサミ、ラジオペンチ(針金切ったりするのに有ると便利)、マジックインキ(目印を描くのに必要)、柔らかい材質の薄板・・・その他、材料になりそうな物です。

 私は町田の東急ハンズと横浜線の古淵駅から歩いて5分くらいにあるホームセンター島忠で、「これ、使えそうだな~?」と思ったものを、ちょこちょこ買ってきてます。

 中学時代の技術家庭の授業で使った工具から、高校時代に買った工具、大学時代に買った工具・・・と、ずぅ~っと、ちょこちょこ買い足してきているんですけどね。

 今回は稽古用の模擬刀なので一晩でできましたが、真剣の外装作る時は最低三日くらいはかかります。

 でも、そうやって作ると愛着湧きますよね?

「お祖父ちゃんの遺品のボロボロになった模擬刀があるんだけど・・・」という刀剣女子でDIY好きの方とかは挑戦してみられてはいかがでしょうか? 凝れば凝るでキリがないですけどね?

 拵えを自作することを否定する方も居ますが、私の場合、自分で作らないと不安なんですよ。既製の模擬刀使っていて柄が折れたのを二回見たことあります。

 古い刀で拵えがボロボロになっている場合もあります。補修しても木が虫に食われてボロボロになっていると、振っただけで折れたりするんですよね。

 本職の人に注文したら20万くらい取られるし、それでも頑丈に壊れないように作ってもらえるかどうか?

 武道具店で作ってもらうのも安くはできるけど、やはり強度的に心配です。特に柄が細いと心配なんですよね~。茎が短いのに細くて長い朴の木の柄だと、不安ですよ。見てくれより頑丈さが大切だと私は思うので・・・。

 もちろん、美術品だからという理由はわかりますが、日本刀の第一の目的は戦闘用でしょう? 戦闘用に生まれて機能美を珍重するようになっただけです。

 戦後、美術品として登録されるようになったからと言っても、それを大上段に構えた価値観しか認めないというのは何か違うんじゃないかな~?と思いますね。

 武術で言うなら、どんな優れた絶技を持っていても、戦って勝てない人は尊敬されないですよ。

 その点で、格闘技やっている人達から武術がバカにされたりするのも仕方がないように思いますね。

 甲野さんみたいになったらオシマイですよ・・・。

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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