ほびっと村護身術感想

- 0
 17日は西荻窪のほびっと村での三カ月に一度の講座でした。

サバイバル護身術”というテーマだったので、もう、エグいのばっかり(耳千切るとか鼻の穴に指突っ込んで投げるとか?)やる気でいたんですが、参加者の要望で合気的な技を使った護身術を主にやりました。

 護身術というと、何の鍛練もしていない人でもすぐにできて、しかも屈強な相手を簡単に撃退できないといけません。

 武道や格闘技をやりこんでいる人ほど、「そんなのあり得ない!」と現実的?な反応をするものなんですが、ここには大きな誤解があるんですね。

 武道や格闘技では「急所を攻めてはいけない」というのが大前提なのです。

 だから、簡単に決着がつかないんですよ。

 武術は違います。

「急所だけを攻める」のが大前提です!

 一撃で倒せないような箇所はそもそも狙いません!

 ですから、武道や格闘技を長年やればやるほど、危険性のある急所を避ける癖がついてしまうのですね。

 これは長年(二十数年)、いろんな流派(伝統空手・フルコン空手・中国武術・合気道・少林寺拳法・古武術・ボクシング・キックボクシング・総合格闘技・スポチャン・剣道・居合道・杖道・なぎなた・弓道・JKD等々)の修行者に指導してきて確信をもって言えます!

「そんなことはない! 長野は極論を言い過ぎだ!」と文句を言いたい方もおられるでしょう?

 しかし、“そんなことがある!”のです。

 例えば、武術の基本戦法では、目潰しの粉をかけておいて短刀で刺す!みたいなやり方が非常に多いです。

 素手でやる場合も、最初にバラ手で顔面を払い打ちしておいて逆手技をかける・・・みたいなやり方が一般的です。

 型稽古は怪我しないように注意してやる訳ですが、本気でやったら確実に相手をカタワにしてしまいますよ。

 バラ手の使い方も、軽く顔面をなでるように打てばいいと思ってる人が多いのでしょうが、実戦用の本来の使い方は指先の爪で眼球を引っ掻くようにしたりしますし、それ用の隠し武器“猫手”なんてものもあります。

 武術の秘伝というのは、大抵、“基本技を必殺技に変えるコツ”を教えています。

 秘伝の中には、隠し武器や毒薬を使ったりする極悪な技もある訳で、だから一般の生徒には秘密にして教えない訳ですよ。

 特にスポーツ化した現代武道しか知らない人にとっては、本来の武術の使い方を説明すると拒絶反応を示す場合もあります。

 もう、目的が全然違うからですね。

 それに、結論を書いてしまうと、“いくら鍛えても使い方を知らなければ無意味”という現実があるので、「鍛えてさえいれば達人になれる」と信じて修行している人間にとっては根本から価値観を覆させられてしまうので、頭で理解できても感情的に受け入れられないんですね。

 でも、“武術に関して”は、これが“真実”です。

 本当の使い方を教わらなければ、いくら練習を積み重ねても無駄なんです!

 例えばローキック。毎日サンドバッグを飽きるほど蹴りまくって鍛えても、一発で相手を歩行不能にできるだけの技とするのは至難です。

 しかし、相手が蹴ってきた瞬間に軸脚の膝を正面から踏み付けるようにすれば、素人であっても簡単に相手を歩行不能に陥らせることができます。

「そんなの反則じゃないか!」と怒る武道愛好家も多いと思います。

 ですが、中国武術の斧刃脚やトウ脚といった技は、明らかに膝を正面から蹴って破壊することを狙った技です。また、まともに極まったら完全治癒は難しいでしょう。

「そんな反則技は試合じゃ使えないだろう? 使えない技を練習しても無駄だ」と言い出す人もいます。

 そうです。言ってることは正しい!

 武術の技というのは“試合で使えば反則になる”ものがほとんどです。

 格闘技の修行者に何度も教えましたが、私の指導する技はほとんど反則になってしまうらしく、最近は「お役に立てないからな~?」と思って、「武術と格闘技は目的が違うので折衷するのは無理がありますよ」と、最初からお断りするようにしています。

 試合に勝つことを目的にするなら、ルールに沿った技術を磨くのが合理的なのです。武術が参考になったとしても、武術の技をそのまま使えば反則になる可能性が高い。

 私は試合に勝つことを目的にはしておらず、護身術としての武術の精度を高める研究をしているので、“まったくの素人でも屈強な武道格闘技の猛者にも勝てる”という方法論にしか興味がありません。

「そんな馬鹿なことができるものか?」と思われるでしょうが、不可能を可能にする知恵が武術の醍醐味なんですよね?

 いくら強かろうが不死身の肉体を持つ人はいません。弱点を的確に攻めればウルトラマンでもゴジラでも倒せるんですよ!

 こんな簡単な理屈が何故、解らないんでしょうかね?

 余談ですが、昔の武術流派には忍術を伝えるものが実に多くあります。

 これは何故か?というと、武術にとって最も厄介な敵が忍者だったという事情があって、忍者にやられないために自分達も忍術について研究した!という次第だったのです。


 まっ、今回の講座は初参加の人、数年前に江古田セミナーに参加して二回目の人が参加されていたのですが、かなり喜んでいただけたみたいでした。

 二回目参加の方は、「発勁が体得できなかった」と言われたので、今回はきっちりと体得してもらいました!

 これまた極論ではありますが、武術に於ける身体操作法というのは、“重心の操作”が核心であり、身体各部の動かし方とか何だとか、そんな細かいことはどーだっていいんですよ!

「手の形をあーやって、指はこうやって・・・」とか、そんなメンドー臭いことを考えながらやってて間に合う訳がありません。

 まして、相手がいれば、相手の重心をいかに誘導するか?を考えないと武術になりませんよ。


 また、話は変わりますが、興味深いことを聞いたので、かいつまんで御紹介します。

 十数年前の話です。ある著名な空手家が、噂を聞いて訪ねてきた中国武術と古流武術の遣い手に、何度も不意打ちを食らわしたものの、すべて開掌で遮られてしまったのだとか?

 私、噂では聞いたことあったんですが、何と、ビデオで撮られていて映像があったのだそうですね?

 空手家は普通に話している最中に突然、突きを入れたりして、普通だったら反応できずにボコボコに入ってしまうでしょう。が、その武術家は全ての不意打ちを造作もなく払いのけてしまい、バツが悪くなった空手家がウ~ンと考え込んだフリをして、また攻撃したそうです。

 が、それも遮られてしまったそうで、これは甲野氏がシステマのミカエル先生の無刀捕り(“剣道三倍段”と言われるように、刀で素手の相手に向かってやられるというのは実力差が三倍以上あるということです)にあしらわれたのと似た感じですね?

 ビデオを見た人からの又聞きですが、私も見たいですね~(笑)。

 その著名な空手家は、初めて会った武道経験者に不意打ちを食らわせて度肝を抜き、従順な信者をこさえる“やり口”を遣うという話も聞いていたので、なるほどな~?と。

 武士の情で名前は伏せましたが、こんな姑息な真似をしていれば、いずれどこかでしっぺ返しを食らうことになりますよ。

 それにしても、不意打ちを防いでみせた先生。私も知ってる方なのですが、御自分からこの話をされたことはありませんでした。私も一度も聞いていません。

 何と奥ゆかしい!

 私は形意拳と新陰流刀法の初歩の初歩の手ほどきを受けただけ(と、ここまで書いたらピンとくる人もいるでしょうね~?)ですが、技術以上の武人の凄みを教えていただけた気持ちで、自分のことみたいに何とも誇らしい気分でした。

 武術の世界は名誉欲と金銭欲に塗れた人が多いですが、中には、こういう無欲な先生もいる!ということですね~・・・。

関連記事
ページトップ