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本の感想

 最近、小説のお仕事が立て込んでまして、ブログの更新が遅れております。ごめんなさい!

 やっぱり、金になる方を優先しないと定収入の無い自由業(無職?)の人間は大変なことになりますからね~?

 デビューしちゃえば、こっちのものだと思ってるんですが、現在の小説新人賞取ってデビューしても光の速さで消えていく人が9割りというムチャクチャな現状では、あれやこれやと戦略を練らないといけないのですよ。

 まあ、戦略というのは手の内晒すと無効になってしまうので、書きませんけどね?

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 高瀬將嗣先生の新刊『技斗番長活劇戦記・実録日本アクション闘争記』(洋泉社)も、町田や相模原の書店を探し回って、ようやく発見(橋本の駅ビルの有隣堂さんにあった!)したので、遅ればせながら感想を書かせて戴きますです、はい。

 結局、高瀬先生の監督作『昭和最強高校伝 國士参上!!』も、劇場に観に行きそびれてしまって残念だったんですけど、私は元々、作品を作る側にいたい人間なので、映画製作の裏事情について書かれている今回の本は非常に楽しく、一気に読めました。

 特に私的には、第四章の「アクションは武道ではない!」のところが、やっぱり一番、関心をそそられるところでしたね。

 何しろ、去年、自分でやってみて、確かにアクションと武術は全然別物だよな~?ということを痛感したので、尚更でした。

 だって、自分でまあまあかな?と思ったのは三手くらいしかありませんでしたからね。

 概ね、うちの会員は誉めてくれましたが、高瀬先生の殺陣講座で勉強させてもらった小塚師範なんて、細かいところダメ出ししますからね? それが全部、的確なんでギャフンとしましたもん。

 自分としては若山先生とまではいかずとも、必殺仕事人激突!の滝田栄さんのように重厚な殺陣を・・・と思っていたんですが、やっぱ、無理でした。

 やっぱ、アクションは芝居ですよ。演技力が伴わないとダメ!

 顔見えないから、まだ大丈夫でしたけど、もし顔見えてのアクションだったらテレ~ッとしちゃって、全然、ダメだったでしょうね~?

 その点、主役の鶴巻さんは本当に芝居が上手くなってましたよ。今年の夏も岩槻で撮っている様子を見ましたが、毎回、レベルアップしていってます。


 さて、それで第四章で特に面白いと思ったのは、武道理論でかつて一世を風靡した玄和会の南郷継正先生のアクション批判に関して見解を述べられている点でした。

 私より年長の武道修行者しか読んでないと思いますが、南郷先生の『武道の復権』でのブルース・リー批判は、情報が古かったというのを差し引いても勘違いとしか言えないと思うんですよね?

「ブルース・リーの空手は初段クラスでしかない」と断定していたところなんか、現在の武術通の人達が読んだら吹き出してしまうでしょう。

 だって、ブルース・リーは空手家じゃないし、詠春拳を中心に、周氏蟷螂拳、節拳、蔡李佛家拳、太極拳、シュアイジャオなどの中国武術を相応に修練し、アメリカに渡ってからは、ダン・イノサントからフィリピノマーシャルアーツのカリや、インドネシアマーシャルアーツのシラットを学んだり、ムエタイ、ケンポーカラテ、テコンドー、サンボ、合気道、ボクシング、レスリング、フェンシングなどを貪欲に実践研究して截拳道(JKD)を創始した新派の武術家として活動していた訳ですよ。

 で、弟子にはスティーブ・マックイーンやジェームス・コバーンといった第一級の俳優や、脚本家のスターリング・シリファントとかが居たし、『死亡遊戯』のノッポさん、カーリム・アブドゥール・ジャバールもリー先生の弟子だったんですよね。

 そして、アメリカの武道界のドンとも呼ばれたケンポーカラテのエド・パーカーに認められてロングビーチのトーナメントで特別招待演武をやって、そこで伝説のワンインチ・パンチを披露したのは有名な話です。

 それに、アメリカでテコンドーを普及したジューン・リーとも親しく、言うなれば、アメリカの武道界で知る人ぞ知る偉才だった訳。

 その上、老子、荘子、孫子、孔子、スピノザ、クリシュナムルティーといった哲学者の思想に傾倒しつつ、自己啓発の成功哲学(ナポレオン・ヒル)なんかも研究する非常に知的レベルの高い人だった訳です。

 こういうブルース・リーの武術や哲学に関する側面については、オルタナパブリッシングから『ブルース・リー思想解析』『ブルース・リーからの手紙』といった本が出ていますから、是非、読んでもらいたいですね。
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 また、『ブルース・リーの実像』という関係者へのインタビュー集は非常に面白いですよ。
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 こうした情報は未だに日本では知られていなくて、ブルース・リーはアクション俳優という認識しかないでしょう?

 とんでもない誤解ですよ。

 リー先生は文句のつけようがない正真正銘の武術家であり、本人も言ってるけど、映画はプロパガンダだった訳です。

 そっちの才能が傑出していたから注目されたけど、欧米のマーシャルアーツ雑誌で未だにリー先生の特集が組まれ続けているのも、JKDという流儀の創始者という武術家として評価されているからなのを、何故か日本の愛好家は理解できないんですね?

 日本人で言うなら、藤岡弘、さんが近いかもしれませんが、世界の隅々にまで知れ渡っているという意味で比較することはできないでしょう。

 敢えて言うなら、もし、宮本武蔵が現代の武術家だったら、ひょっとするとリー先生みたいな活動をしていたかも知れないですね? そんな武蔵像を描いているから、私は『刃牙道』が刃牙シリーズ中で一番、面白いです(寸勁斬りもやってるし?)。
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 南郷先生は空手家という自認の下に合気道や柔道、剣道、杖道なども修行されたように著述されていますが、一体、誰にどのように学んだのか?ということを明確に書かれていないのは疑問なんですよね?

 空手は玄制流を学ばれたと聞きますが、一口に空手と言っても、首里手と那覇手は相当な違いがあるし、本土に渡って以降の空手道も違うでしょう?

 で、空手の源流である筈の福建省に伝わる拳法(白鶴拳・太祖拳・五祖拳など)と沖縄空手との技術的比較研究はまだまだ充分とは言えない中で、一体、何を基準にしてレベルを測れるのでしょうか?

 この章で高瀬先生が述べられている事柄には私もほぼ賛成です。

 剣道にしろボクシングにしろ、竹刀や刀、グローブが技の稚拙さを補ってくれるというのは誤解でしょう。

 むしろ、逆にごまかしが効かないと思いますよ。

 構えた姿で実力が判らないようでは専門家ではありませんよね? 道具を持つということは、実力のレベルを拡大してしまうんですよ。つまり、サマになっているかどうか?

 例えば、息子さんは相応の実力者に見えますが赤羽先生は写真を見ると下手です。本を書いて理論を提唱していると自分が凄くレベルが高いように錯覚してきてしまう(私なんかもそうですよ)のですが、写真はごまかせないですよ。師匠の加藤先生は実力者なのに胡散臭く見えてきてしまうのだから、恐ろしいですね。

 無論、以前から言ってるように、超一流になると一見して下手に見えたりするから、これは一般的なレベルでの実力の話です。

 空手は素手だから難しいというのも、どうでしょうか?

 かつて、士道館の添野館長がマイケル・ジャクソンに段を与えたのを批判した空手関係者が大勢いましたが、添野館長は、「本当に上手いからあげたんだ」とコメントされていました。

 私もそれが事実だろうと思います。

 プロのダンサーの身体能力はずば抜けており、形など教えれば、すぐに師範クラスに演じることができるでしょう。

 そして、空手の本質は形の中に有る・・・というのが沖縄空手の主張ですよね?

 つまり、組手の練習をするより形の中に秘められた理合を教えれば、十二分に戦えるという訳です。

 南郷先生の言いたいのは、量質転化の法則であり弁証法唯物論の理論でしょうが、ちと教条的独善思想に陥り過ぎていると思います。

 少なくとも合気武道や太極拳はそうした理論とは別の上達論がありますし、勝負論もまた違います。優れた先生は少なからずいらっしゃるのだから、決めつける前に教えを受けてみれば良いと思うのですが・・・。

 中里介山の話も面白かったですね~? この人、確か国井善弥先生にも習ったんじゃなかったかな? 作家も中途半端に齧った人に限って、第一人者みたいに自己肥大しちゃいますからね? 悪い意味ではなく、作家って、もともと誇大妄想の資質がある人が多いですから。

 ちゃんと修行してる人は謙虚だし頭ごなしに他流を否定したりはしませんよ。

「長野は甲野先生をボロクソに非難してるじゃないか?」って思った方・・・それは違います!

 私は、「甲野氏は武術を利用して売名欲を満足させたいだけの人」という事実を指摘しているだけ! 戦いを考えない武術家なんて論外でしょう?

 事実でないと言うのなら、ちゃんと反論してくださいね?

 あっ、そうだ! これは書いておかなくちゃいかんと思うんですが、『燃えよドラゴン』でリー先生の代わりにバク宙キックしたのは、ユン・ピョウではなくユン・ワーだった?という説もありますね?

 ユン・ワーって、『カンフーハッスル』の大家さんとか、『サイクロンZ』のカマキリ工場長とか、『ドラゴンタイガーゲート』の龍虎門の師範を演じてた人です。

 それと、“強いだけならブルース・リャンが上”って高瀬先生は断定されてましたけど、それは明確に誤解されてると思います。前述したように、リー先生は武術家としての格が違っていたのです。

 一定水準以上になった武術家を喧嘩の強さで比較するのは無理がありますよ。

 確かにテコンドー・スタイルの蹴り技だけ比較したらブルース・リャンのほうが上に見えるかもしれませんが、総合的戦闘技能はリー先生がずっと上だと私は思います。

 あの『ヤングマスター』の蹴り技の名手、ウォン・インシックも最初はリー先生を嘗めていたけど実際に技を比べてからリー先生を尊敬するようになったそうです。

 それと、私が武術空手の大家と尊敬する賢友流の友寄隆一郎先生も、実はリー先生を高く評価していたのです。弟子が一万人以上いる流派を率いる空手家でリー先生を高く評価している人って、他にいるでしょうか?

 ほとんど聞いたことがありません。大抵の空手家が南郷先生と同様に「ブルース・リーは大したことはない」と思っているでしょう。

 友寄先生は中国武術も高手でした。抜き身の妖刀村正みたいな先生でした。そんな先生が高く評価しているのは何故か?

 それは、通常の空手とは違う勁力の遣い方をしているのを見抜いていたからですよ。

 この点は外見に見えにくく、受けてみないと威力の質が違うことが判らないので、日本武道しかやったことのない人だと、まず百パー、納得してくれません。

 中国武術もスポーツとしてやっている人だと教えてもらえないからできない?という問題点があるので、「中国武術は弱い」というイメージばかりが広がってしまうんですね。

 私は研究家なので解明しました。発勁は自由自在に打てます。しかし、「あっ、これって本気で打ったら死ぬな?」と確信したので、いつも危険が無い程度にセーブして飛ばすようにしています。危険が無いように打つのって逆に難しいんですよ。

 しかも、これって素人に教えても、そこそこの威力が簡単に出せるのが問題なんですよね~?

 別にハッタリじゃありませんよ。事実だから書いてるだけ。

 爺ちゃん婆ちゃんが健康体操としてやってる簡化24式太極拳だって、私がレクチャーしたら“殺人タイチー”に早変わりしますよ!

 だからこそ、武術には“秘伝”があるのです! 広まったら危険だと思ったんでしょうね~?

 前にも書きましたけど、青木宏之先生と松田隆智先生が会った時に、松田先生に「技を広めないと駄目です」と熱く説得していた青木先生が、松田先生の発勁を体験した後、「う~ん・・・これは広めないほうがいいかもしれないな~? こんなの受けたら内臓がグチャグチャになっちゃうぞ? これは日本の武道には無い打ち方だよ」と私に耳打ちされていました。

 一撃必殺の突き技を追究して新体道を創始した青木先生が言ってる訳ですよ。

 もっとも、私は日本の武道にも本来はあったと思います。古流の当身は発勁と同質だし、沖縄空手の裏当てとは発勁(浸透勁)のことだと思います。

 リー先生の発勁は詠春拳に太極拳が少し混ざっている感じですが、60kgそこそこの体格で巨漢のアメリカ人をぼんぼん吹っ飛ばしていた事実を鑑みても、相当なレベルに達していたのは疑う余地がありません。

 普通は体重が倍の相手には全然勝てないでしょう? 格闘技の概念では。

 でも、武術なら問題なくできるんですよ。日本でも伝説的な達人と言われる武田惣角、西郷四郎、塩田剛三、植芝盛平といった人達は小学生並みのタッパだったでしょう?

 リー先生もアメリカでは子供みたいな体格に過ぎません。それでいて、JKDがあそこまで広まったという事実を鑑みないといけません。

 もっとも、探究心が強過ぎたのが寿命を縮める結果に繋がったのかもしれません。神経伝達スピードを速くするために脳に電流流してたりした・・・というのは健康を害する結果になるのが自明でしょう・・・。


 ついつい、批判的になってしまいました。高瀬先生、失礼しましたっ!

 いや、しかし・・・何か、結構ページ数あるのに、読み始めたら、あっという間に読み終えてしまいましたよ!

 特に、殺陣師の相関系図とか、現在のアクションクラブの系統図とか、私にとっては非常に資料的にも知りたいところが書かれていて助かりました!

 いずれ、殺陣アクションと武術に関する本を書いてみたいと思っていたので!

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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