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文化の日のメイプルホール稽古

 文化の日は晴の特異日という説の通り、今年も朝まで降っていた雨があがり、昼間は暑いくらいの快晴になりました。

 久しぶりにメイプルホールでの特別稽古会ということで、試し斬りもやってみようと前日夜に風呂の水に浸しておいた畳表を半畳分二枚、巻き藁二本を作っておきました。

 もっとも、試し斬りをするとなると、いろいろ用意しなければならなくなるので、荷物が多過ぎて独りで持っていくのが大変なので、北島師範に私の部屋に寄ってもらって分担して持って行きました。

 実はこの稽古会、『セーラー服忍者』のDVDに特典映像で収める武術指導風景のためにやることにしたんですね。

 ヒントは『ハイキックガール』の特典映像で、中達也先生の空手指導風景がたっぷり入っていたこと・・・。

「そうだ! これだっ! 俺もやろう!」と思った訳です。これで映画に興味がない人でも武術に関心がある人は買ってくれるのではないか?と・・・。

 なので、わざわざ映画で使った黒笠と袖無し羽織も持参して着ましたよ。

 月例セミナーを予約申し込みしておいて受講できなかった回の補習にも充てることにしていたので、受講生の方も参加され、会場も広いから結構、のびのびとやれました。

 今の本部道場もそこそこ広いんですけど、メイプルホールは天井が高いのが助かるんですよね。武器術やるのに安心してできますから。

 栗原師範は横浜で稽古会やる予定にして会場も押さえていたので変更できずに来れませんでしたが、滅多に来れない遠方に住んでいる会員さんも来てくれたので、なかなか充実してやれたのではないか?と思います。

 最初は通常カリキュラム通りに基礎錬体と歩法が終わったら初級対錬をやろうか?と思ったんですが、毎回通える人達ではないので、原理原則を覚えてもらおうと思って、差し手と推手をやってもらいました。

 特に差し手は交叉法を具体的に遣うために必須のものだと思うのですが、同時に応用変化が自在にできないと実用は難しい。

 だから、ひとつひとつの技として覚えようとすると無理があるのですが、交叉した瞬間に相手の隙間に滑り込むようにすると、どんどん変化できるようになってくるのです。

 これは30年近く前に戸隠流忍法で覚えた方法論です。優れたやり方はその後もずっと生き残る具体例でしょう。

 戸隠流には差し手の概念はありませんでしたが、その後、中国武術を本格的に研究するようになって、遣い手の先生は必ずと言っていいくらい、差し手を遣っていることに気づいて研究したのは、游心流を名乗ってから数年経過してからでしたか?

 一時は、「これさえやれば・・・」と思うくらい万能に思えましたが、今はそうでもありません。

 返し技も考えついたので、差し手だけで万能に通用するという甘い考えは捨てました。

 あらゆる技を研究しましたが、研究が進めば進むほど、欠点にも気づいてくるのです。

「この技はこうされたら通用しなくなるな~?」と考えると、流派の優劣を語ることが何とバカバカしいことなのか?と思うようになりました。

 TVの深夜のニュース番組で空手の型と組手の女子チャンピオンが登場したのを見た時、“スポーツ化して本来の空手の理合を失っている”と思っていた空手の技であっても、圧倒的なスピードを遣えば、生半可な武術の理論など木っ端微塵にしてしまうだろうな~?と、正直、思いましたね。

 これは柔道や剣道、レスリングの試合を見ても同様に思います。

 ルールを決めて同じ闘い方をすれば、とても勝てない!と、これは確信をもって言えますね。

 ただし、それは武術とは違うと思うんですよ。

 第一、それでは年齢・体格・体力・性別の壁を突破することができません。

 私は後、三カ月で54歳ですよ。明治時代なら立派な老人です。いくらアンチエイジングに励んで鍛練し直したところで、若い武道家や格闘家と同じ土俵で闘っても勝てないですよ。

 まあ、健康年齢を維持できるのは15年、頑張っても20年。そこまで生きているかも判りません。

 よく大病もしないで生きてこれてるな~?と、自分で感心するぐらい元来、体質は弱かったですからね。

 それでも、武術の研究を続けてきて良かったと思うのは、技は今でも伸びているという実感があるからですよ。

 単純に戦闘能力だけなら若い頃より今の方がずっと上です。それは知識が有るから。

 本心を言えば、50くらいがピークで、後は徐々に衰えるのを何とか維持できるのが70歳までだろう・・・と思っていました。

 でも、そういう、しょっぱい話は景気が悪いでしょ?

 それで70までは伸びる!とウソこいてた訳です。

 スンマセンッ! やっぱり自分が70になった時にちゃんと伸びてるという裏付けがないと言ってはいけない?んじゃないかな~?とも思うんですよね。

 ただ、70過ぎてヨロめいて歩いていた人が縮地法を体得し、見る見る上達していった実例はあるので、勘弁してください!

 今は“いや~、本当に70まで伸びるんじゃね~の?”と思うようになりましたね。

 これは、“体力に頼ることを諦めた”からです。

 極論すると“技術も捨ててしまった”からです。

 通常、技術に則って身体を遣うことを教える訳ですが、私はそのやり方を根本から崩して逆のやり方で何とかならないか?と実験を繰り返したんですね。

 例えば、「力のタメを捨てる」「脚力で動かない」「軸を立てない」「身体を統一しない」「集中しない」・・・といった、「やってはいけない」と言われていたことを全部実験していったんです。

 結果、「こうしなければいけない」と言われていることのまったく逆のやり方、つまり、「こうやってはいけない」と言われていることでも有効性が有る!ということを確認してきた訳です。

 これは本当に誰にも習っていません。

 だって、ダメだって言われていることを敢えて実験していったのですから、自分の直感を研究しようと考えて試行錯誤を繰り返していって発見したものだからです。

 特に、「筋肉を鍛えない」と言っているのは私しかいないのではないでしょうか?

 別に筋肉を鍛えることを否定している訳ではないのですが、鍛えなくても威力は出せるしスピードも早くなるのは事実ですから、だったら必要ないんじゃない?とアンチテーゼを投げかけている訳です。

 もっとも、筋肉を鍛えないということを何の運動もしないということだと思い違いをしてしまうと日常生活にも耐えられないくらい肉体が弱ってしまいかねないので、これは健康のためにはマイナスですから(それでも勝てると思ってるけど)、極端に考えないで欲しいんですね。

 現に、私は若い頃は結構鍛えたので、初めて会った人が「長野先生、結構、ごついですね~?」と驚かれたりします。自作振り棒(2kgくらい?)を中学時代から毎日振っていたり(熱中すると千回くらい)したので、私、かなり腕が太いんですよね。

 でも、こんなに筋肉要らないんです。脱力技法の研究にえらい時間がかかりました。力が抜けなくって・・・。

 私は試行錯誤やりまくってるから結構、失敗もしていますが、失敗したら原因を考えるというのが習性になっているので、研究家としては非常に適性があったと思います。

 正しいか間違いか?を多角的客観的に見れるようになったからです。

 考えてもみてください。

 正しいやり方が一つしかなかったら、どうして世の中に無数の流派が生まれたのでしょう?

「自分の教えることが正しくて、よそは皆、間違っているのだ」と言う先生はたくさんいますが、その根拠を示せる人にはお会いしたことがありません。

 正しいかどうかは、ある限定された局面の中だけでしか判定できないからです。

 しかし、あらゆる戦闘状況を一つの限定された局面に押し込むことなどできる道理がありません。

 例えば、百米走で9秒台を出せる人間は希少でしょうが、野生動物ならざらにいるでしょう? 車を使えば簡単ですし、このような競技がいかに限定され尽くした中で測定しているか?という点を考えなければなりません。

 武道や格闘技を武術とまったく同じだと考えている人は、戦闘に対して競技的な観点しか持っていない場合が多いようです。

 確かに現代の武道も格闘技も競技の上での優劣を競う場が絶対視されてしまいます。

 そこに武術を当てはめようとする人達もいますが、不見識と言わざるを得ないでしょう。

 武術に於ける戦闘の定義は無限定です。ルール無し、競い合い無し、武器使ってもOK、不意討ちも暗殺も騙し討ちもOK、勝てば官軍逃げるのもOK、卑怯卑劣の概念は無し!

「何だそれは? それじゃあ戦国時代みたいじゃないか?」と言われるなら、まさしく、然り!

 武術とは、その本質が兵法であり、“兵法とは詭道也”なのですから。

「そんな人殺しの技を研究してどうするんだ?」と、時々言われることもあるんですが、それはもちろん、「人殺しに遭遇した場合に生き残るために研究している」んですね。

 最近も通り魔みたいな事件がありましたが、「そんなことは起こる筈がない」と楽観していても、起こる時は起こる訳ですよ。

 私自身、経験があるし、周囲に痴漢やストーカーに悩まされている人がいて助けたことが何回もあります。

 それは、私が荒事になっても対応する自信があったから助けに行けた訳で、仮に正義感が強いけど武術も何も嗜みが無い人が助けに行っても、「ウルセーッ! でしゃばるんじゃねえっ!」って、ぶん殴られてバタンキュー?になる可能性があるでしょ?

 私が割って入った時も、「何だ、このヤロ~」って凄んで迫ってきましたが、(しょうがないな~。ちょっと、こらしめちゃおうかな~?)と思っていたら、何か殺気が出ちゃったらしくて、一米手前で見えない壁(闘気?)にぶつかったみたいに立ち止まって、そのままくるっと回れ右して去って行きました・・・。


 ストーカー殺人事件の何割かは警察に訴えていたにも関わらず殺されてしまっていますよね?

 本気で殺しに来る人間に対して四六時中護ってもらえない警察に頼っても効果的ではないということですよ。

 武術の素晴らしい点は、ありとあらゆる戦闘状況に対応する幅の広さですよね~。

 確か、死んだ親父から聞いた話だったと思うんですが、凄く酒癖の悪い乱暴者がいて、ある日、大酒呑んで暴れまわって警察官も手が出せない。近くに柔術の遣い手のお爺さんが住んでいたのを思い出した人が「取り押さえてくれ」と頼みに行ったそうなんです。

 それで、お爺さんがやってきて「やめなさ~い」って言ったんだそうですが、乱暴者は年寄り相手に殴りかかってきて、お爺さんも何もできずに後退するしかなかったように見えた。「これは危ない。いくら柔術ができても若い者には勝てないのか?」と思ったところ、橋げたに追い詰められたお爺さんに掴みかかった乱暴者が、そのままドボーン!と川に真っ逆さまに落ちてしまい、見ていた人達は唖然となったそうです。

 うちの親父は剣道もやっていたし高校のボクシング部の顧問もやったことあるそうで、私が武術にのめり込んだのにも一定の理解を示してくれていましたね。

 何か、学生時代に剣道部の帰りに不良にからまれて竹刀で追っかけ回して滅多打ちにしたことがあったのだとか? 非常に温厚な人でしたが、やっぱり九州男児の性格で、私もそういう性格を受け継いでいるんだろうな~?と、思います。

 死ぬ直前に、私が書いた本あなたの知らない武術のヒミツ』を送ってもらって、もう読めなかったそうですが、嬉しそうにしていたそうです。

 親父の家系は歴史ミステリーみたいな話があって面白いので、いつか作品に反映させたいと思っていますが、私が何かヘンな事件でも起こしたら家系に疵をつけることになってしまうので、迂闊なことはできないな~と思っていますよ。

 うちの会員さん達は人柄の良い人ばかりなので、もうヘンな事件を起こすような人間は出ないと思っていますが(元弟子には何人か出てしまった)、武術にのめり込み過ぎて常識から外れた考え方が基本になってしまうと社会的制裁を受ける瞬間がやってくると思うんですね。

 だから、腕前は隠す、知識はひけらかさない、オカルトは所詮、表に出してはいけないのです。

 昔、ある先生から「長野さんは神様になっちゃいけないよ」と言われましたが、確かにその通りと思います。人間が神様目線になってしまったら、自分を見失って社会で生きていく場が無くなってしまうからです。

 そうなったら、オウムのようなカルト団体の内部で世を呪って生きていかざるを得なくなる。

『ナイトヘッド』の超能力兄弟、霧原直人・直也には実在のモデルが居たそうですが、人と違った能力を持っていたお陰で苦悩の中で生きていかなければならなくなる悲劇を描いていて、今見ても印象深い作品です。

 ず抜けた能力があれば幸せになれるというものではありません。無能な人でも幸せに生きている例は少なくないでしょう。

 ブッダが中庸の大切さを説いたのは、流石だと思います。

 重要なのはバランスを保つこと。それは固定したバランスではなくアンバランスであっても釣り合いを取れること。

 強くなろうとすることは、自らバランスを崩すことでもある・・・ということを知ってもらいたいですね。

 最近のゾンビ・ブームには、死ぬべき運命の人を無理に延命させている非人道性を揶揄しているような面もあるのかもしれませんね?

 それと、関係ない話ですが、うちの会員さんは、他流の技を見た時に「間合が遠い」と評することが多いんですが、それが普通で、うちが近過ぎる訳です。

 何でか?というと、他流を破るために間合を潰してしまう戦略を考えたからです。

 離隔して戦う流派はくっついてしまうと技が出せなくなります。だから、くっつく。

 逆に、密着して戦う流派は打撃技が出せなくなるので、密着したら安全だと思っています。でも、我々は密着した状態から自在に打撃技(発勁)を出せる。だから、くっつく。

 どっちにしろ、くっついてしまえば我々が圧倒的に有利に戦えるという理屈です。

 あんまり手の内明かしたくないんで、この程度で・・・。

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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