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ゼロインチ打撃

 格闘技に於ける打撃技とは、ボクシングではパンチ(ジャブ、ストレート、フック、アッパー)、キックボクシングでは、パンチ(ジャブ、ストレート、フック、アッパー、バックハンドブロー)に肘打ち、キック(廻し蹴り、膝蹴り、前蹴り、後ろ廻し蹴りなど)があります。

 空手では、パンチは厳密に言えば、突きと打ち、当てに区分されますが、どう分類するのか?という基準については曖昧です。

 ざっと解説しますと・・・突きは、正拳あるいは一本拳、貫手を使った直線的ストレートパンチを称し、打ちは、裏拳・手刀・背刀・肘・拳槌などを使った円曲的軌道によるパンチを称し、当ては、正拳・手刀・肘・掌底などを使った至近距離から打ち込む寸勁的パンチを称している・・・と思ってもらえばいいでしょう。

 空手の蹴り技に関しては、前蹴り・後ろ蹴り・廻し蹴り・横(足刀)蹴り・踏み蹴り・鉤蹴り・内廻し蹴り・外廻し蹴り・後ろ廻し蹴り・二段蹴り・飛び足刀蹴り・膝蹴りなどと多彩なものがありますが、例えば“カカト落とし”はテコンドーから、スネを使った“ローキック”ムエタイから導入されたと考えられ(元々、空手にスネで蹴る蹴り技が有ったとは考えにくい)、一説に“後ろ廻し蹴り”も大山倍達がブラジルでカポエィラと交流して導入したと言われます。

 無論、逆に空手から世界の格闘技に影響を与えて導入されていった例も無数にありますし、テコンドー、カラリパヤット、シラットなどが空手の影響を受けているのは疑う余地がありません。

 昔、ジャイアント馬場がアントニオ猪木に対抗して?異種格闘技戦をやった時の相手ラジャ・ライオンは、インドの“バンドゥー空手”なる流儀の達人という話でしたが、自分の蹴りでバランスを崩してスッテンコロリンとなってしまうヘナヘナっぷりでヤラセ感満点でしたが、世界中に空手を導入して新たに創作された格闘技が無数にあるのだろうな~?と思わせました。

 少林寺拳法では打撃技は総称して剛法と命名されています。分類する面倒を省いた良いアイデアだと言えるでしょう。

 中国武術では、門派によって様々ではありますが、打撃技だけで戦うという概念は一面的で、投げ技を主体とするシュアイジャオや、逆手技を主体とするチンナ、そしてツボを攻める點穴も含まれるのが普通ですし、武器(兵器、あるいは器械と呼ばれる)術も修練するのが当たり前です。

 日本の古流柔(体)術では、突きや蹴りは従属的で、当身、流派によっては強法、剛身、骨法、骨指術、砕などと呼ばれていますが、概ね、“当身殺活術”と総称されています。

 何故、“殺活術”と呼ばれるか?というと、武術的な使い方と医術的な使い方が表裏一体となって秘伝として伝えられたからです。


 さて、格闘技に於ける打撃技は、パンチにしろキックにしろ、極めて限定的な技であるという点に注目してください。

 何故、限定的か?というと、試合で用いることが大前提であり、本来の武道に伝わっていた技の相当な部分が削除されてしまっているという事実を認識してください。

 私が武道や格闘技ではなく三十代から一貫して武術を追究し続けてきたのも、技の膨大さに魅力を感じたからであり、実戦に対応し得る武術の研究を志したからでした。

 武道や格闘技が若いうちしか実力を発揮できない最大の理由は何でしょうか?

 それは、圧倒的に技が少ないからです!

「少ない技を磨くからレベルが上がるのだ!」という論がかつてはありましたが、それは“試合”を目的化した考えに過ぎません。

 実戦を考えれば、“勝てる技”を常に研究開発していく必要があります。

 余談ながら、近年のアメリカの銃規制の骨子になっていることが何か?というと、それは「軍用アサルトライフルをスポーツライフルに改造して市販していること」であるとされます。

 つまり、“多弾数をマシンガンのようにフルオート射撃できるライフル銃”をフルオート機構を取り除いて市販していることを危険視している訳です。

 言うまでもなく軍用銃というのは最初っから“多数の人間を効率よく殺すための銃”であり、狩猟用のショットガンやボルトアクションライフル、護身用の小形拳銃とは総合的な戦闘力が比較になりません。

 例えば、かの有名な、かつての世界最強の拳銃弾(現在では.500S&Wマグナムがある)と呼ばれた.44マグナム弾でも、軍用としては低威力のM16ライフルで使う.223レミントン弾よりずっとエネルギーは小さいのです。

 象狩りに用いる最強のライフル弾と呼ばれた.460ウエザビーマグナム弾でさえ、軍用の.50口径弾には全然敵いません。

 民間の銃と軍用の銃とは殺傷力に雲泥の差があるのです。

 また、銃の分解掃除に慣れている人間なら簡単にフルオート機構を復活させることができるでしょう。

 分解してシアを取り替えるだけですから・・・。

 では、どうして、軍用の銃はこんなに戦闘力が高いのでしょうか?

 それは、生きるか死ぬかの場で戦わねばならないからです!

 戦場で綺麗事が通用しますか?


 私が武道や格闘技に根本から違和感を感じてしまったのは、「これは本来の姿じゃないだろう?」と思ったからなのです。

 で、武術を研究しているうちに確信したのは、「あ~、武術はやっぱり戦場で工夫され平時に研究されて発展したものなんだな~」ということでした。

 つまり、競技が目的ではないのです。飽くまでも、平時に於ける実戦を想定した護身戦闘術が本分なんですね。だから、“兵法”に対応する“平法”という言葉が考案されていた訳です。

 けれども、競技によって磨かれた現代武道や格闘技の実践者とルールを決めて試合しても、勝ったり負けたりするのが“現実”で、「武術がどうこう言うなら試合に出て証明しろ!」と批判されたら何も言えなくなる訳ですよ。

 はっきり言って、ルール決めて闘ったら体格・体力・年齢の勝負になってしまうからです・・・。

 で、負けたら、「ほら見ろ。武術なんか口先ばっかりで理論倒れのオタクが逃げ込むファンタジー・ワールドなんだよ!」と嘲笑されるんですよ。

 悔しいけど、それは事実は事実として認めるしかありません。

 晩年の松田隆智先生と話していた時に、「悔しいな~。俺が若かったら試合に出て証明してやりたいよ~」と言われていたのを、よく思い出します。

 だから、私は板垣さんの『刃牙道』が大好きなんですよね。

 これまた余談ですが、最近、周囲の人達から、「あの本部以蔵って長野先生がモデルなんじゃないですか?」って何度も聞かれるんですが、もしも、参考にして戴いているとしたら、こんな有り難いことはないですよね?

 私の研究が報われているってことだから・・・。

『ケンイチ』が終わって、『ツマヌダ』も終わって、武術の魅力を伝えてくれるのは『刃牙道』しか無いでしょう? もう永遠に続いてもらいたいですね~?

 来年は、少なくとも小説はデビューできると思うんですけど、私としては21世紀版の『拳児』のような作品は書かなくてはいけないな~と思ってるんですよ。


 さてさて、余談ばかりで済みません。

 何故、今回、打撃技について書いているか?というと、游心流武術に於ける打撃技の概念をきちんと紹介するべき段階になったか?と思っているからです。

 以前から書いているように、游心流の打撃技は寸勁を基本にしていました。

 交叉法から使う打撃技として寸勁が絶好だったからです。

 しかし、脱力して寸勁を使うと打撃技の“質”が浸透勁になってしまい、軽く打っても内傷を起こして非常に危険であるという事実が最近、判明してきました。

 これは、“暗勁”とも呼ばれる中国武術でも秘伝扱いされて一般の弟子には教えないものです。

 20年くらい前に、松田隆智先生から、「あの打ち方は危険だから公開しない方がいい」と注意された打ち方(打撃訣)を必要としないくらい当たり前に打てるようになったということです。

 解っている人間同士で力をセーブしてやっていてさえ、こうなってしまうのですから、もし自由攻防でもやったら突然死起こす人間が出てもおかしくありません。

「慎重に怪我しないように型稽古か約束組手で練習するしかない」という結論に至った訳ですが、これはむしろ、「武術として原点回帰した」と言えるのかもしれません。

 即ち、“本来の武術としての殺傷力を備えた技術体系”のレベルに近接したと言えるのではないか?と思うのです。

 これまでは、下丹田(骨盤)から重心力を伝導させて末端の拳や掌に送り込むというやり方を主眼にしてきましたが、システマのやり方や、松葉国正先生が『秘伝』で解説されていた「指先から動かす」というやり方にヒントを得て、拳先を高速振動させて威力を生み出し、逆に下丹田に送り返す・・・というアイデアを考えて試して実感を得ていたので、日曜の稽古会で実験的に教えてやらせてみました。

 うちの支部長や常連会員は身体の脱力が効いているので、そんなに苦労しないですぐに体得できました(もっとも、「脱力した状態で拳先を高速振動させるというのは下手すると肘痛めそうです」との意見も出たので、練習法はもう少し検討せねばなりませんが)。

 しかも、これは効果テキメンで、従来の抖勁に組み合わせると、タイミングさえ合えば、威力が倍増することが判りました。

 前からやっていることの軌道を逆にするだけなので、やってできないことは無いだろう?と思っていましたが、これは予想以上に使えますね。

 ですが、これを実験したのは、もう一つ理由があって、これは寸勁ではなく密着した0距離から打撃することができるのです。

 つまり、抖勁をより実戦的に自在に使うことができるようになる訳です。

 通常の打撃技の最大の弱点は、「打撃の威力を生み出すためのタメを作る距離と時間が必要」だということでした。

 しかし、この技は距離も時間も必要としません。触れた箇所で0からいきなり100のパワーを生み出せます。

 しかも、打撃技のみならず、投げや逆、點穴に加えることで、普通の技を絶招(必殺技)に変えてしまえるのです!

 もともと、この技は游心流合気道のお家芸として組み込むつもりで考えたのですが、実験してみて判明したのは、冗談みたいに非常に応用性が効くということでした。

 元ネタとしては寸勁斬りのコツから発展させたと言えるんですが、これなら逆に熟練させれば零勁斬りもできるんじゃなかろうか?と・・・。

 ただし、見た目が益々ジミ~になりました・・・。

 何しろ、触ってバンっと打ち倒すだけなんで、格闘技の醍醐味たる“互いの技の攻防”が成立しないからです。

 けれども、武術として考えれば、体格・体力・年齢に関係なく誰もが使える理想的護身術である!と胸を張って発表できると思います。

 そこで、年内の最後のDVDのテーマとして、この『ゼロインチ打撃戦闘法』を作ることにしました!

 これは一つの技というより様々な技に応用できる武術の術理と言うべきものなので、武道や格闘技を学んでいる方にも役立ててもらえると思います。

 何故なら、通常の打撃技の弱点をつく技でありつつ、組技系への対抗戦術にもなるからです。何故なら、密着しているところからバンバン打てるので・・・。

 つきましては23日(水)に淵野辺本部道場にてビデオ撮影と特別講習を実施しますので、会員、セミナー受講生の方で関心のある方は、是非、どうぞ

 参加費用は、会員は2000円、セミナー受講生は5000円とします。

 初めての人で参加したいという人はメールで問い合わせてください。技が技なので部外者に教えるのは慎重にならざるを得ませんが、真面目に学びたい方は受け入れます。

 DVD発売は12月(販売価格は税込み20000円)になりますが、今回も11月中に予約申し込みした人は税込み1万5000円に割引します。

 交叉法と併せたら無敵?かも・・・。

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著者プロフィール

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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