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零勁斬りの応用性

 日曜日の稽古会で、また試し斬りをやりました。

 零勁斬りの特訓です。

 一番、剣術が上手い北島師範が前回、体得できなかったので、今度は再チャレンジでしたが、気負いが無くなったので簡単に成功しました。

 若手のTさんもできましたが、残念ながら栗原師範はどうしてもできません。刃筋をまっすぐ通すのと、スピードの足りなさが原因でしたが、これを素手に応用した技だと問題なくできるんですね。

 だから原理的にできないのではないので、練習を重ねて一回できれば、後は問題なくできるようになるでしょう。

 まあ、慣れの問題もありますからね。

 私も、かなり慣れたので、何も考えずにサクッと斬れるようになりました。この調子だと片手持ちでもできるでしょう。

 Tさんの話では、あの町井先生も“圧し(へし)斬り”というやり方でできるのだそうですが、私は当然だろうと思います。

 あれだけの腕前の人ができない道理がないからです。

 ただし、零勁斬りと同じ原理かどうかは、見てみないと何とも言えません。

 相当に鍛えている人なら腕と背中の筋力で斬ることも可能だからです。

“圧し斬り”という言葉がそれをあらわしています。

 織田信長が棚に逃げ込んだ茶坊主を棚ごと圧し斬ったという“へしきり長谷部”という刀があります。刀の切れ味が良ければ包丁で切るみたいに押し込むだけで切断することもできるでしょうね。

 でも、普通の日本刀は包丁よりずっと刃角が大きいので、圧しただけで切断することはできません。引かないと切れないのです。

 だから、大道芸で腹の上に大根を乗せて日本刀で切断してみせても腹は何ともない!という芸ができる訳です。

 そういえば、寸勁斬りを発表した時に、「そんなの誰でもできる。包丁でやってるだろう?」と批判している人がいたらしいですが、日本刀に関する無知さをさらけ出していますね?

 畳表を巻いたマキワラや青竹を、包丁で切断できるかどうか、やってみたらいいでしょう。僅かでも刃筋が狂えば簡単に刃が割れてしまいますよ。

 出刃包丁なら大丈夫かもしれませんが、今度は刃角が大き過ぎて切断できないと思いますね?

 鉈みたいな刃角が大きい刃物だと割るのには向いていても、切断するのには向いていません。青竹を切断する場合でも何度か同じ箇所に切りつけないと、日本刀みたいに一発でスパッと切断することは難しいですよ。

 道具というのは性質を理解して適切に使わないとダメなんです。

 包丁だって、菜っ切り包丁、出刃包丁、三徳包丁、牛刀と、いろいろ有りますでしょ?

 そういえば、小栗旬が主演した『CRISIS』で、「犯人に拳銃を構えている時に引き金に指を掛けないで伸ばしていたのがおかしい」という視聴者の突っ込みがあったそうですが、これは、アメリカのコンバットシューティングのやり方で、撃つ瞬間だけ引き金に指を掛け、それ以外は暴発を防ぐために指を掛けないで伸ばしておく・・・というプロの基本テクニックを踏襲していたからであり、また、引き金に指を掛けないことで説得しようとしている心理描写を表現していたのでしょう。


零勁斬り”は、“沈身による重心落下のエネルギーを刀身に乗せる”ことで斬ります。

 だから、鍛えていない人でもうまくやれば簡単に斬ることができる訳ですが、技術的にはかなり難しいのです。

 コツを身体が覚えるまではタイミングが合わなかったり刃筋が通らなかったりスピードが出せなかったり・・・といったことで成功できません。

 私も、最初、できるまではかなり時間がかかって、「これはとてもできないかもしれない?」と諦めかかりました。

 はっきり言って自慢ですけれど・・・私は、一回見れば、大抵の技の原理が解って、すぐに体現できてしまう人間です。それでも、この技は相当に難しかったのです。

 どうしてか?というと、“見たことが無かった”からです。だから、成功イメージが描けなかったのです。

 もう一つの理由は、“道具を介して重心力を作用させる”ということです。

 自分の手足に重心力を作用させるのも難しいのに、道具に作用させるのはさらに難しくなります。

 だから、逆説的に武器という道具を使いこなす訓練を重視しているんですよ。武器を自在に使いこなせれば、素手はもっと自在に使えるようになるからです。

 練習は難しいことをやって、実戦は無意識に勝手に対応できるような自動反射迎撃システムを脳神経系に定着させる訳です。

 普通に試し斬りをやっている人でも、この技はまずできません。どうしてか?というと、刀を振り回して生じる遠心力を使わないで、静止した状態から一気にトップスピードで刀を振り斬らねばならないからです。

 この感覚を神経に定着させるには、数をこなすしかありません。

 そのためには、ゴザを買ってきてマキワラを作るのも労力になります。

 試し斬りに使える刀も普通の人は入手できないでしょう。

 そこでお勧めなのが、大根を模擬刀で斬る練習をすることですね。大根なら真剣でなくとも模擬刀で簡単に斬れますから・・・。

 もちろん、周囲の安全を確保しないといけないので家族と一緒に住んでいる人にはお勧めできませんが、一人暮らしなら部屋の中でやっても問題ないでしょう?

 大根ならバンバン切っても料理に使えばいいので経済的ですし・・・。

 さてさて、なぜ、零勁斬りに拘るのか?といいますと、もちろん、単なる見世芸ではないからです。

 今の時代、刀で戦うことはまず無いでしょうが、この技は“斬りの技”の究極として素手で戦う場合にも非常に応用できるのです。

『刃牙道』の宮本武蔵が駆使する手刀のイメージで考えてもらえばいいと思いますが、この技は日本武術式の発勁(浸透勁)なんですね?

 武術の技は“点・線・面”です。

 打撃技で譬えれば、点は一本拳の突き技、面は掌打や体当たり、そして、線は手刀打ちなんですね。

 手刀打ちって全然、使わないでしょう?

 使えないから廃れたと思ってる人が多いと思いますが、事実は違います。

 使い方が解らないから、使いこなせないだけです。

 ですが、蹴りではよく使ってるんですよ?

 スネを当てる廻し蹴りは線の攻撃技です。

 空手や拳法の廻し蹴りは直蹴りの変化技なので、もともとは足先で点で蹴っていましたが、ムエタイのスネを当てる廻し蹴りの影響でフルコンタクト空手の多くではスネを当てるようになりました。

 点の攻撃は的確に急所を狙撃するための技なんですが、動き回って戦うとなかなか命中させられません。

 しかし、線の攻撃なら少々ズレても当て易いんですね。だから、ムエタイでは多用するようになったと考えられます。

 昔々、私が高校生くらいの頃、「廻し蹴りはスネを当てる」ということを知りませんでした。キックボクシングの試合を見ても、足の甲を当てるものだと思っていたのです。

 第一、スネは「弁慶の泣き所」と言われて弱い箇所という先入観があったので、わざわざスネをぶち当てるなんて話は信じられなかったのです。嘘だと思っていました。

 だから、喧嘩でも廻し蹴りは足の甲の部分で蹴っていたんですが、ある時、蹴ったと同時に足首をグキッと捻って痛めてしまいました。

 同様に蹴りあっていて足首を痛めた人間を何人も見ました。

 これは、足甲の先端のほうを当ててしまい、足首の関節が逆側に伸びてしまったからであると解りました。

 10年くらい前に渋谷で秋本つばささんが主催するアクションイベントを見にいった時、バット折りを披露しようとした女性が足甲を当てていて、「あ~、あれじゃあ折れないよな~。諦めないと足首痛めるぞ」と思っていたら、やっぱり折れず、空手講師の人が代わりに蹴り折っていました。

 私が大学の頃にキックボクシング&マーシャルアーツの通信講座を受けて、初めて、スネを鍛えて蹴るのがムエタイのやり方だと知りました。

 それでサンドバッグを蹴ったり、古タイヤを拾ってきて蹴ったりしてスネを鍛えましたね。その当時はスネが凸凹になってましたよ。

 やっぱり、習わないと解らないことって、たくさんありますよね?

 見た目で同じように見えても、中身は全然違うとか、そういうことはたくさんありますから、だから、私はでき得る限り、実地に習うようにしてきました。

 やってみないと違いは解らないんですよ。

 空手も那覇手と首里手はかなり違うし、沖縄空手と本土の空手も違うし、伝統空手とフルコンタクト空手も違う。

 やったことがないと、長所も欠点も判りません。

 でも、違いを優劣で考えると大切なことが解らなくなるんですよ。

 人種差別も根本は優劣で人種を考える思想から生じているものでしょう?

 だから、他の国のことをよく理解することが大切ですよね。

 私は日本人だから、やっぱり日本が好きですよ。でも、武術を通して外国にも興味を持つようになりました。

 だから、中国も大好きですし、朝鮮のテコンドーやハプキドーも好きだし、ロシアのサンボやシステマも好き。

 ブラジルのカポエィラやジュージュツも好きだし、フィリピンのカリ・エスクリーマ、インドネシアのシラット、インドのカラリパヤット、タイのムエタイやクラビ・クラボーン、フランスのサファーデ、イギリスのキャッチ・アズ・キャッチキャン・・・。

 アメリカは武術のルツボになっていますね?

 JKD、ケンポーカラテ、カジュケンボー・・・等々。

 やっぱり、男の本能として、戦いを好む戦闘意欲というものがありますよね?

 武道家と呼ばれる人達って、50過ぎても60過ぎても精神年齢、ちっとも上がりませんよ。

 ずうっと、喧嘩好きのままなんですよね。

 少年の心を失わない爺さん・・・それが武道家なのかも?

 この先の人生、私はどんどん爺さんになっていくだけですから、せめて糞爺ぃではなくて、カッコイイ爺さんになりたいですよね?

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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