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『RE:BORN』を見た

 会員のTさんと新宿武蔵野館でレイトショー公開中の『RE:BORN』を見てきました!

 感想を一言で言うと・・・

「俺が見たかったのは、コレだ!」

 昔、渋谷で『VERSUS』を見た時以来の衝撃でしたね~?

 私が映画を作る側の人間になりたいと思った最初の切っ掛けは、高校の卒業式前日の深夜にTVで見た『最も危険な遊戯』でした。

 松田優作演じる殺し屋、鳴海昌平が活躍するハードボイルドでスタイリッシュなアクション映画に、『大都会2』や『探偵物語』で見せた優作のブラックユーモア・センスが加わり、低予算を逆手にとった非常に疾走感のある作品でした。

 過日、黄金町に『スクール・オブ・ナーシング』を見にいった時に、「ここが『最も危険な遊戯』で優作が疾走していたロケ地だったのか?」と気づいた時は、年甲斐もなくはしゃいでしまいましたよ。

 そのくらい高校最後の日に見た映画が私の現体験になっていた訳。

 次の衝撃は、浪人時代に福岡のテアトル西新のオールナイト特撮特集で見た『狼の紋章』でした。これまた松田優作が悪役でデビューした作品で、既に後の優作の演技の原型が見られます。が、主演の志垣太郎がハマリ役だし志しの高い作品でしたね~。

 その次の衝撃は、レンタルビデオで見た『子連れ狼・死に風に向かう乳母車』。私はこれで時代劇大好きになりましたよ!

 その後、『VERSUS』と出会った訳ですよ~。

 随分、間が空いたけど、感動する作品はあっても衝撃を受ける作品というのは滅多にあるものじゃないんです。

 思えば、『VERSUS』もアクション監督は下村勇二監督だったんですよね~?

 下村監督のアクション演出が私の理想に近いということなのかもしれませんね?

『RE:BORN』を先に見た会員さん達はアクションは凄いと誉めつつもストーリーや役者の演技は誉めませんでしたし、設定もありきたりだと言っていました。

 つまり、アクションしか見るべきところがないと言わんばかりだったのですが、私の見立てはちょっと違いますね。

 ハリウッドや韓国に似たような設定の作品はいくつもありますが、それらと根本的に違うのは、この作品は史上初のマーシャルアーツ・ムービーだということです。

 マーシャルアーツ・ムービーとは、武術を見せる映画だと言えばいいかもしれません。

 武侠映画とも違います。

 武術の技と精神、戦いの本質を描き出す映画なのです。

 こう定義すると、『燃えよドラゴン』や『刑事ニコ・法の死角』『ザ・レイド』なんかは違うのか?と問われるでしょうが、それらの映画はアクション映画のアクセントとして武術を活用しているのであって、武術そのものをテーマにしているのではありません。

 強いて言えば『グランドマスター』や『師父』はマーシャルアーツ・ムービーと言えるかもしれませんが、『RE:BORN』のような衝撃は受けません。

 私が衝撃を受けたのは、主人公がPTSDの治療に心療科を受けながら、殺人の禁忌を感じないことを吐露したり、戦闘と言うより最早、暗殺術を駆使して群がる敵を瞬殺していくシーンの中でハードボイルドやニヒリズムを超えた“非日常の自然態”を醸し出している点でした。

 これは武術で言われるところの死生眼の悟りであり、唯一、養っている少女に対する愛情だけが人間らしさかもしれません。

 アクション映画というのは熱気が充満するものですが、この作品は逆です。冷えた虚無感が漂っており、主人公の仲間はまだ情熱を持ち、戦いの充実感の中で死にたいというイカれた願望を持っていたりします。

 この願望は格闘技を真剣にやっている人なら共感できるかもしれません。

 しかし、武術だとそういう情熱もまた捨て去るべき意識の夾雑物に過ぎません。

“戦い”の語源は、“叩き合い”なのだそうです。

 つまり、殴ったり殴られたりすることが前提です。

 ですが、武術は前提として敵の攻撃は受けない。自分が一方的に敵を倒す。

 だから、必然的に行き着く先は瞬間暗殺術となるのです。

 かつて武術のプロジェクトチーム楽天会では“殺倒術”の稽古をやったそうです。

 名前の通り、身も蓋もない“敵を殺すだけの術”です。

 この原型は、陸軍中野学校で空手術を指導した江上茂翁にあったらしいのですが、要するに武術の本質は敵をいかに効率的に殺すか?ということであり、それが戦場で遣う野戦体術に必要な要素なんですね?

 近年はクラブマガやシステマ、あるいはシラットといった戦場野戦体術系マーシャルアーツが日本にも紹介されてきていますが、その実態はエクササイズとして薄められたものである様子です。

 そもそもは日本の武術もそうだったのに、戦後GHQの指導によってスポーツとしての現代武道となってしまい、源流の必殺テクニックも戦術も忘れ去られてしまいました。

 指導者が知らないんだから、もうどうしようもありません。

 正直に申しますが・・・多くの日本人がシステマやクラブマガ、シラットを有り難がって押し寄せている現状は、日本の武術を研究している者として、忸怩たるものを感じざるを得ませんでした。

 日本の武術の凄さを知らずに舶来のマーシャルアーツを礼讚する人達には残念な思いもあります。

 しかし、現状、日本の武術家には偏狭で見識も無い人が多く、スキルも時代遅れになっている。これでは仕方がないだろうと諦めていました。

 私自身も海外の武術を相当に研究してきていますし・・・。

 これはアクション映画を見れば、一層、痛感させられることでした。

 香港アクション、ハリウッドアクション、韓国アクション、タイアクション・・・日本でアクション映画が下火になっている間に海外はどんどん発展していっていました。

 そんな中で、『るろうに剣心』で一矢報いたか?と思っていましたが、それに続く作品がなかなか出てこない・・・。

『ザ・レイド』で残酷アクションが絶賛され、ますます日本はアクション後進国みたいに思われつつあった時に、『RE:BORN』の噂を聞き、期待値が高まっていました。

 が、なかなか公開の話を聞かない。お蔵入りするほど酷い出来なのか?とも思いましたが、いやはや・・・期待をブッち切る衝撃作に、私はその日、深く静かに熟睡できましたよ・・・。

 撮り方も見せ方も美術も非常にセンスが良い!

 下村監督は間の撮り方が上手いんでしょうね? ホラーを思わせる絶妙な怖さも演出できるアクション監督というのは、ちょっと他にはいらっしゃらないんじゃないでしょうかね~?

 それにしても、これだけゼロレンジコンバットというケレン味の薄い流儀の動きを斬新に見せ切った演出手腕は驚くべきことです。

『マッハ!』だって、古式ムエタイの動きは必要最低限で派手なアクロバットアクションを多用していたでしょう? 普通は地味になり過ぎてしまうので、多くの殺陣指導者が嫌うものなんですよ。

 銃弾を避けるというのはシナンジュもビックリ! しかし、正確に銃口の向きから予測される弾道を避けてサイドステップして躱すという「稲川先生なら本当にできるんじゃないの?」と思わせる合理性を表現しているのには本当に感動させられます。

 私が感心したのも、この“読み”を駆使する点を表現したところですよ。

 タクさんと稲川先生の対決シーンはアクション映画史に残るでしょうね~?

 肩甲骨を動かす地味な動作が逆に異様な対決シーンを盛り上げますし、ステップワークも注目! 瞬間的な打拳の異様な迅さ! これは脱力しているからこそ出せる速度!

 カランビットナイフをカスタマイズしたナイフでのナイフファイティングは、小太刀の名手同士が対決しているようにも見えるし、先を取って戦う日本武術の読みの要素も表現しているし、タクさんと稲川先生だからこそ実現できた名シーンでしょうね?

 というか、よく稲川先生、出てくれましたね~? 顔隠しているからかな? 私もそうだったから・・・。

 それにしても、坂口タクさんは、よくぞ俳優に復帰してくれましたよ。日本のドニー・イエンみたいに、これからの日本アクション映画をけん引していってもらいたいです。

 だけど、恐らく、この作品は海外の方がウケがいいだろうから、海外で活躍することになるかもしれませんが・・・?

 まずはジャパニーズ・アクションのエポックメイキングとなる『RE:BORN』のシリーズ化を期待しておりますよ~。下村監督!


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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
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