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井上康生の引退に思う

 柔道の全日本選手権をTVで見ました。

 井上康生選手の引退は寂しいですが、試合内容を見る限り、確かに力の衰えは隠せないし限界だったでしょう。

 稀代の名選手として期待を集めた康生選手でしたが、準々決勝で高井選手に敗れた試合を見ると、先のオリンピックで負けた時と同じく腰が安定しておらず重心が浮いた感じに観えましたし、攻撃も内股ばかり狙って単調でしたから、「あ~、勝てないな~」と思っていたら、やはり内股をすかされて押さえ込まれてしまいました。

 しかし、康生選手を破った高井選手は、鈴木選手にあっさりと敗れていましたし、康生選手が優勝するのは最初から難しかったでしょう。

 いや、敢えて正直に言えば、実力の衰えよりも問題だと思われたのは、戦い方が単調過ぎる点にあると思われました。

 つまり、内股ばかり狙っていては、相手は最初から内股に対する返し技だけ練習しておけば勝てる?という理屈になってしまう訳です。

「自分の得意な技が通用しなかったら仕方がないです」と、インタビューでさばさばした顔で語る康生選手を見ていると、スポーツマンとしては潔いと称賛されるかもしれないけれど、武道家としてはどうか?と、本気で思いました。

 それと同時に、柔道が日本の思惑を無視して国際的に勝手に流れていってしまっている理由が解るような気がしました。

 だから、敢えて苦言を呈しておきます。

 得意技は万能の必殺技じゃないんです。同じ技ばかり出していたら、相手は必ず封じ技を工夫する。だから、負けた! それだけの話でしょう。

「果敢に自分の得意技を思い切って出して、“全力を出して負けた”んだから悔いはないだろう」なんて批評に何の意味があるのか?

 力を出しても技を出していないんですよ。何故、そこを考えないのか?

 内股を出してはいけないと言っているんじゃないのです。内股を出すにしても、もっと相手のバランスを崩して掛けないといけない。執拗に連続攻撃して相手のバランスの崩れに導かなければいけない。それが柔道の技でしょう? 何で、万全の体勢の相手にいきなり掛けようとするような素人みたいなやり方をするのか? 

 高井選手との試合を見ていると、作りも崩しもしないまま、万全の体勢でズッシリと立っているところにいきなり掛けようとしている。だから、余裕しゃくしゃくで高井選手にすかされ、技を出した瞬間の不安定なところを簡単に崩されて押さえ込まれてしまった。

 これは、自滅したと言っても過言ではありませんよ。内股を出せば勝てるという相手を侮った気持ち、つまり、驕りがそこにあった。

 井上康生選手はそこに気づかなければいけなかったのに、全く解っていない様子でしたから、私は二重にガッカリしてしまいました。

 柔道に限らず、武道や武術、格闘技というものは、得意技を有効に極めるために他のいろいろな技を一通り磨いてできるようになっておく必要があるのです。

 江戸時代に究極奥義“相ヌケ”で一世を風靡した無住心剣流が、三世の真里谷圓四郎を最後に急速に歴史から消えてしまったのは何故か?

 唯一無二の剣技を標榜して一つの技だけしか磨かなかったからですよ。

 康生選手は引退してしまいましたが、これからの日本の柔道を担う人達には、心しておいて欲しいと切に願うばかりです・・・。
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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
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