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武術DVDの感想

1,『体を緩め丹田からの力を知る~内勁の武術とは~』

 中古で購入したDVDですが、八極拳で日本一の栄冠に輝いていた中川二三生氏の技を収録したものとして興味深く拝見しました。

 中川氏は流石は初期の日本の中国武術界で噂されていた方らしく、練り込んだ体の身法は見事ですし、空手(松濤館・極真)や大東流合気柔術(堀川幸道系)の修行もされていたそうなので、中国武術しか知らない人とは違って、技の動きに実戦的な視点が内蔵されているように見えました。

 う~ん・・・しかし、だから余計に残念に思えたのが、お弟子さん方が明らかに感応にかかって過剰反応(錐体外路系反射運動)してしまうので、身体技法としての武術の技の効果がどの程度作用しているのか?という基準が見えなくなってしまっており、部外者には、よくある神秘武道の演武にしか見えない・・・という点に有ります。

 こういう過剰反応、暗示投げの類いは、師匠と弟子の間で催眠暗示的な反射作用として発現してくるものなので、リアルな“物理的な力学メカニズムによる技の効果”とは無関係に、“派手にふっ飛んだり・奇妙に踊ったり・悶えたり”するという一見してヤラセ臭い奇妙な動きをするので判別できるんですが、やってる本人は気持ち良さに酔いしれてしまって後戻りできなくなりがちなんですね。つまり、技の作用じゃなくて無意識に反応する自分の力でふっ跳んだりするのが真相なんです。

「宇城塾も、西野流と変わらなくなっちゃって、武道を求めていた人はどんどん離れて行っていますよ」、人伝えに聞いたんですけど、「奥深い理合を講釈するより現実に効く技の一つも教えてくれよ」って言いたくなりますよね。

 百の理屈より一つの現実に効く技のほうが価値が有るんですよ。夢想剣のように、通り魔に頭より先に身体が反応して、ハッ?と気づいた時には通り魔が失神して転がっていて、自分でもどうやってやっつけたのか判らない・・・ってレベルにならなきゃダメです。

 私は、こういうのを見ると、途端に白けてしまうんですが、BABは神秘の武道路線で売りたいんだろうから、「好きだね~」と微笑ましく見れるようになってきましたよ。

 でも、これって武術じゃなくて宗教だよね。気功やってるとこういう具合にならざるを得ないから、くわばらくわばら・・・って感じです。

 あっ、それと説明がどうもね~、「(体)のつまりを取る」とか、妙に“野口整体”的だったりするから意味が解らない人が多いと思います。身体感覚を言語化するのは難しいし誤解を与えるような見せ方をするのは不審に思われるだけだと思いますけどね~。

 でも、中川氏の流石の錬体度に感心できたから、まあ、割り引いとくかな? でも、その他多数のトンデモ武術DVDの同類に扱われるだろうことは確実だと思いました。

 誉めてなくってごめんなさい。



2,『柳生新陰流を学ぶ』

 スキージャーナルから出ている同名本の映像版です。本が非常に興味深い内容だったので、書泉グランデで楽しみにして購入しました(売り場担当のTさんが退職されて寂しい限りです。武道格闘技の出版社の営業の方でお世話になった人も多いでしょう。私の修行歴と同じくらい勤められていたそうなのに、書店業も大変なんだな~と思います。でも、クエストのIさんが激励会を企画しているそうで、流石ですね~。私もドン底からはい上がるコツなんぞをお伝えしようかな?なんて・・・)。

 ちょっと発売が遅れていたみたいでしたけど、この分野はモメるからね~。でも、無事、発売されて目出度い限りです。

 私は、柳生新陰流は太刀のもち方と基本の振り方を教わった程度ですが、剣術の研究をするのに大いに示唆を受けましたよね。

 剣術はどの流派も大同小異と思う人も多いでしょうが、やはり、流派の工夫というのは無視できないものがあって、それぞれの流派で独自の工夫がこらされているものなんですよ。人間にも個性が有るでしょう?

 これは、どちらが正しくてどちらが間違いとかは一概に言えないと思います。だから、そこに優劣論を持ち込むのはよろしくない。

 このDVDは、尾張貫流管槍術も伝承する春風館道場に伝わる柳生新陰流(柳生厳周伝。先々々代宗家になるのかな?)を詳細に解説演武したものですが、実にきめ細かく丁寧に解説演武されていて、映像教材として好感の持てるものでした。

 本と併せて見ると独修も可能でしょう。研究家として、実に有り難いDVDです。何か、スキージャーナルさんは最近、頑張ってますね~。出版社も書店も頑張るところが生き残っていくのかも知れないな~。



3,『岡林俊雄 嫡流真伝中国正派拳法』

 これはクエストから以前、ビデオで刊行されていたもののDVD版です。

 タイトルが怪しい?(“チャクリュウシンデンチュウゴクセイハケンポウ”と読みまする)からか、バッタモンの流派と思い込まれたらしく、はっきり言って、全~然、売れておりません。ほとんど無視に近い状態です。

 ですが、皆さん。よぉ~く、覚えておいてくださいね~。

 このDVDでメインで演武しているのは、私が交叉法を教わった恩師、中国拳法躾道会(“ビドウカイ”と読みまする)の小林直樹師範なのです。

 そうです! 私の渾身の必殺?フックを、子猫をニャーンと摘まみあげるみたいにグーパンチでペチッと止めてしまった、あの化け物みたいな技を遣う中国武術家です!

 何しろ、私みたいなヘタレで素質も才能も無くて、おまけにパニック障害の持病まである人間が、紛いなりにも、現代武道や格闘技の指導者クラスの人に指導できるくらいにしてくれた、あの真の達人と私が認める師範なのです。

 真の交叉法が知りたければ、小林師範の技を見て欲しい。

 先に言っておきます。小林師範は全く本気を出しておりません。が、それでも滲み出てくる“澄んだ殺気”は、現代の武道家が失って久しい捨て身の無心から出てくる境地であると言いたい。

 実のところ、私は小林師範が本気を出しているところを一度も見たことがありません。

 どうしてか? 小林師範の学んだ流儀では、本気とは、“殺し合い”を意味するからですし、そこまで腹を括って立ち合う相手は滅多にいる筈もなく、私の見た範囲では軽くいなされてしまう人ばかりだったからです。

 それでも、一度だけ、半分くらい本気が出たことがありました。その時は太気拳の動きでしたが(小林師範は最晩年の澤井健一先生に太気拳も学ばれています)、歩法と身法、掌打法が完全に連動して加速していき、ついに脚と腕があまりのスピードにブレて見えなくなってしまっていました。これぞ超神速! 人間技とは思えません。

 私が目指しているのはアレができるようになることです。が、まだまだ遠いですね。そんな武術の到達できる高みを見せてくれた小林師範の技を、是非、一人でも多くの武術に関心を持つ人に見てもらいたいです。

 甲野さんの見世物演芸を達人の技と勘違いしているような人達は、これを見て目からウロコを落としてくださいませ・・・。

 え~、ちなみに、監修の岡林俊雄先生は、小林師範の兄弟子であり、かつて道場では竜虎兄弟と呼ばれていたとか・・・(ウソです)。

 あっ、でも、岡林先生の居合術、空手(二十八歩)の演武は、空手雑誌編集者やビデオ制作担当者をして、「これほど凄い演武は初めて見た」と言わせるほどのものでした。

 それもその筈。岡林先生は、琉球古武術師範でもあり、空手道を中心に武芸百般に通じた真に天才と呼ぶべき名手なのです。ある編集者は「これほどの技は宇城憲治先生くらいしか並ぶ人を思いつきませんね」と言っていました。宇城先生があちらの世界へ向かわれて路頭に迷っている空手修行者は尋ねてみられたら良いと思います。

 ちなみに、このDVDの撮影日直前に岡林先生は命にかかわる緊急の開腹手術を受けられたばかりでした。それゆえに兄弟子を思った小林師範が演武のメインを代わって担当したという事情が有りました。

 ですが、岡林先生は亡き恩師に伝えられた技を映像に残す以上、下手なものにはできないという決意をもって撮影に臨まれていて、空手の演武では普段は柔らかくゆったりとした端正な表現をされることが多いのに、この時ばかりは激烈な気迫で剛的な演武をされていました。

 無論、腹圧がかかるので手術を受けたばかりの傷には危険極まりないものです。

 後で小林師範にお聞きしたところでは、遺作になっても構わないという覚悟をして臨んでいたのだそうでした。

 どうでしょうか? 皆さん。私のDVDを買ってくださるのは、本当に有り難いんですよ。生活がかかってますからね。

 でも、やっぱり、私は所詮は研究家に過ぎない。有名な映画評論家であっても、優れた映画監督になれるとは限らないでしょう? 私が「これが本物だ」と認める師範の技を、是非、見てもらって、「あ~、なるほど、本物の武術家というのはこういう人のことなんだな~」という違いを判別できるようになって欲しいんですよ。

 やっぱり、良いものばっかり見ていると、悪いものが一目で見分けられるようになるでしょう? 見せかけの武術ばっかり見ていたら本物の武術が一向に見分けられないですからね。特に、単に綺麗に技をかけて見せているものはおかしいと思ったほうがいい。

 一つ、見分け方を書いておきますね? 本物の武術家って、どんな優しそうに見えても瞬間的に冷たい殺気が走るんです。その背筋がヒヤッとするようなところの無い武術家って、見せかけだけでフェイクですよ。
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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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