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高瀬道場技芸会感想

 シルバーウィーク中の9月22日に府中グリーンプラザにて開催された高瀬道場の技芸会に、アスペクトの本でイラストをお願いしている漫画家の黒谷薫先生を誘って行ってまいりました。

 今月は、つばさ基地アクションパーティナイトに続いての審査員の依頼を受け、何故か審査員づいてる?(何ソレ?) 「俺なんかでいいのかな~?」と思いつつも、図々しくお引き受けしました。


 前日、橋本駅近くの映画館に久しぶりに行って、『カムイ外伝』を観ました。どうしてか?と言うと、高瀬道場が殺陣を担当している作品だったからです。やっぱし、話のネタがないといかんですからね。

 しかし、何かネットなんかでは糞味噌に書かれていたと聞いて、ちょっと怖かったんですけどね。でも、私は十分、楽しめましたよ。アクションがかなりいい感じです。

 香港アクションに精通する谷垣健治先生(若山先生のアクション全開作品『賞金稼ぎ・薩摩の首』がテアトル新宿であった時にお見かけしたのと、この日も会場近くの交差点ですれ違ったような気がするんですけど・・・違ってるかな~? 懇親会にいらっしゃるかと思っていたけどお会いできずに残念・・・)と高瀬将嗣先生のコラボが生み出したアクションは、多彩で斬新な忍者アクションを構築していたと思います。

 余談ながら、殺陣アクションのチームには、東映剣会・大野剣友会・菊地剣友会・若駒プロ・斬心塾・JAE(旧JAC)・KAC・AAC・・・(つばさ基地もアリ!)と、結構多くありますが、素人向けに開放して教えているのは高瀬道場とつばさ基地くらいなものじゃないでしょうか?

 10年くらい前に月刊空手道の特集記事「アクション・カラテ」を私が担当した時は、表紙を高瀬道場の森聖二先生のポージングで決めていただいていたと記憶しています。

 ちなみに、その号は月刊空手道史上類例の無い賛否両論を呼んだそうで、否の方は「月刊空手道も地に堕ちたか」というお叱りがあり~の(武道やっている人にはこういうタイプが多いけど、腕前は二流止まり。一流になる人は発想が柔軟で他分野に学ぶ姿勢があるもんです)、かと思えば「空手を始めた頃を思い出して懐かしかった。最高!」という絶賛もあり~の・・・で、やや賛同の声の方が大きく、売れ行きも良かったそうです。

 ちなみに(スマン! また書いちゃったよ)、同じ出版元の季刊武術(ウーシュウ)で私が「武術家の真贋を考える」という特別記事を依頼されて書いた時も、季刊武術史上類例の無い賛否両論だったそうで、“怪しい武術家はロンゲorスキンヘッド”と書いていたら、同じ号にスキンヘッドの先生が・・・(俺は知ら~ん!)。

 何か、私が記事書くと、ものごっつい賛否両論が出るんですね。まあ、その方が売れるそうだからいいんだけどね。

 あっ、でも、今思い出したけど、「アクション・カラテ」特集の時に『クライング・フリーマン』のマーク・ダカスコスの写真を頼んだら、加藤雅也の写真で、「これ、違うよ」って言ったんだけど、「東映の担当のオバチャンが間違いなくマーク・ダカスコスだって言ってましたから・・・」って言うので、しゃ~ね~な~と思って、その写真キャプションにマーク・ダカスコスって書いちゃった。気づいてて偽装した?のはこの時だけです。誠に申し訳ありませぬ・・・。

 ついでに思い出したけど、この時に三船敏郎の写真と『超電子バイオマン』でファラキャット演じてた大島ゆかり(シンシア・ラスター)の写真使おうとしたら、三船先生が五千円でファラキャットが五万円!だったんで、ファラキャットは使えませんでした。なんで、世界のミフネの10倍するの? 特撮物の本とかは金かかるんだろうな~?

 では、軌道修正!

・・・松ケン(松山ケンイチのことね)の前傾忍者走りは、奇しくも“縮地法”となっていて、船の上を駆ける時に段差を登る瞬間も上体が上下動しなかったのには驚かされましたよ。

 これって、TVの時代劇スペシャル『阿部一族』の時の、短く切断した槍を抱えて竹矢来の間をくぐりながら走る真田広之(あるいは『魔界転生』で屋根裏で仇の忍者と戦う時の魔界衆になった霧丸役の真田さん)を思い出しましたよ。

 ちょっとワイヤーとCG使い過ぎだとは思うけど(やっぱり生身のアクションのワクワク感には及ばない。忍者映画の俺的最高峰は今も『忍者武芸帖・百地三太夫』だよ)、松ケンと伊藤英明のラス立ちは燃えます。伊藤英明は『夜叉』の時からワイヤーアクションとかやってたから、アクションのセンスいいよね。


 さて、技芸会です。まずは高瀬先生自らの殺陣が披露されますが、大刀を使い、脇差を使いの流麗な動きの中での軸のぶれない重厚さ・・・鳥肌が立ちました。

 太刀行きの速さ、刀法の精妙さ、体捌きの流れ、動きの中での技巧・・・これらのバランスは、並の武道家には出せない水準のものです。いや、これほどのレベルに匹敵する剣術家って、ちょっと思い浮かばないな~。

 よく、剣道とか居合道の先生には、「あれじゃあ、殺陣だ。あれでは人は斬れない」みたいな侮蔑的な表現として殺陣を低く見る人がざらにいるんですが、てんで解ってないですね~。

 体捌きの動きを止めないまま竹が斬れる人が何人いるでしょうか? ほとんどの人が足が止まって踏み締めた状態でエイヤッと斬りつけて、尚且つ、失敗したりするんです。

 自分では簡単に斬れると思っていたのに、実際にやってみたら全然斬れなかったので愕然としてしまった・・・なんて武道家の体験談はよく聞きます。口で言うだけなら誰でも天下無双ですよ。

 何事もやってみないと解らない。その“やってみる”というのも、一回だけなのか、何千回も繰り返した結果なのか・・・というので全然違ってくる訳ですよ。

 刀だって一つ一つ斬れ味も全然違うし(現在、12振りもってます)、正直、あんなに違うとは予想していませんでしたよ。でも、模擬刀(刃がついていない亜鉛合金のヤツ)でも刃筋がしっかり通れば親指くらいの竹が切れるものです。その竹だって太さや水分量でも丸っきり違ってくるものです。

 また、武道で想定される敵は眼前に一人だけの場合がほとんどです。意識も前にしか向いていません。前後左右に敵がいることを想定して体捌きしながら剣をふるう殺陣の難しさは、そんな先生方には想像もつかないでしょう。

 相手が二人いるだけで、もう、普通の武道では太刀打ちできなくなるんですよ。嘘だと思ったらやってみてください。「あっ、長野の言う通りだ・・・こんな筈では・・・」と焦ること必定です。一対一で鬼のように強い人が、相手が二人になったらどうしてよいか判らなくなって、滅多打ちされてしまったりするんです。三人いたらナマス斬りになるでしょうね。

 殺陣では周囲を取り囲まれた状態で陣を斬り崩していく展開が多いですが、たとえ段取りであっても、複数の敵に意識を分散させる点で、通常の一対一で眼前の相手に集中する武道とは異質な意識操作が必要になるのです。現代武道では合気道くらいでしょうが、これも意味が解らないまま練習しているところが大半でしょうね。

 あるいは、「間合が遠い。あれじゃ相手に届かないよ」と冷笑する人もいます。

 これも大きな勘違い。怪我させないように間合を調整している訳で、当たるか当たらないかの間合が測れないとできない芸なんですよ。

 体捌きに回転動作もあったりして、さすがにあれはケレンだろうと思っていたんですが、自分でやってみたら、多人数相手にした時の目付けで役立つことに気づきましたよ。首だけ後ろに回したらスキができるけど、身体ごと回転したら意外にスキが生じない! 単なるケレンじゃなかったんだ~?と、新鮮な驚きがありましたよ。

 この間合感覚と拍子、呼吸を読む訓練法として、殺陣に学ぶべき要素は非常に多いと私は思っています。いや、むしろ、形骸化した型を漫然と繰り返している古武術家より、活きた稽古ができるでしょう。

 無論、殺陣は敵を倒すことが目的ではありません。あくまでも複数の人間が演技としての芸を実践することそのものに意義があり、それを披露して“見る者を感動させること”が目的のパフォーミングアートです。

 だから、演技であって、真剣勝負するものではありません。勝ち負けを競うものでもないのです。

 ですが、私は、だからこそ、殺陣に注目するのです。考えてみてください。武術の型、約束組手って、形態は殺陣とまったく同じでしょ?

 護身制敵が武術の目的です。しかし、その技能を習練するシステムは、殺陣そのものじゃないですか?

 中国の表演武術は、既に完全にそうなっています。術から芸へとなったのです。

 日本でも、合気道や少林寺拳法はそうだし、空手の形競技も極論すれば身体技芸の水準を審査しているのです。つまり、強さを内蔵した技芸の美しさを審査しているのです。

(脱線、御無礼!)

・・・高瀬先生の演武に続いて審査員の紹介がありました。

 あの桂小金治師匠もおられます。かなり御高齢だと思うんですが、凄いお元気だし、あったかく人を包み込むオーラはTVで見ていたマンマですね(師匠が出演されていた『破れ傘・刀舟 悪人狩り』も見てたな~)。

 作家の高橋三千綱さんもおられます。

 パパイヤ鈴木さんもおられました。

 うわ~、俺なんかが並ぶの失礼だよな~。せめてベストセラーの一つも出してからでないとこの場には釣り合わない・・・。

 呼ばれて客席に向かって礼はしたものの、こっ恥ずかしくってよく見れません。知ってる方がおられたら失礼をお許しくださいませ・・・。

 あと、審査員は確かもうお二人おられたのですが、緊張していたのでお名前は聞き逃してしまいました。申し訳ありません。

 実は、もしも、審査員に私以外に武道の先生がいらっしゃったら、私は辞退しようと思っていたんです。どうしてか?というと、その先生が私みたいな研究家風情と一緒に審査するのは不愉快に感じるのではないか?と思ったからです。

 そういう方は実際にかなり多いんですよ。それを知ってるから武道の先生とはなるべく並びたくないのです。

 でも、後から考えると、「俺をさしおいて、何で長野が偉そうに審査員やってるんだ」と思われたら、同じことじゃん?・・・と気づきましたけど、まっ、しょうがないか。

 第一部の支部対抗演技は、11組。各種メディアで殺陣教室が度々紹介されているためか、女性剣士の凛々しい演技は、皆、実にサマになっています。懇親会で黒谷先生が質問していたら「始めて一年です」なんて言うお嬢さんもいて、私は内心、驚きましたよ。一年でここまでなるの?・・・って。そのくらいカッコヨカッタ。

 しかし、女性が袴を履いて日本刀を構える姿というのは、フェティッシュなカッコ良さがあって、背筋がピンと伸びてキリッとした顔で真剣な勝負に挑む“間”の緊迫した空気感は、暴力的な邪気ではなくて、剣からほとばしる透明な霊気をすら感じさせます。

 日本女性が最も美しく見える姿かも知れません・・・ってか、個人的趣味で・・・。

 これは不思議と男性には感じられません。もちろん、男性の剣技には重厚さとスピード感があるのですが・・・あの透明な霊気は出せません。

 やはり、練習量の差か、本部混合ユニットが優勝となりましたが、高瀬先生曰く、「月に一度しか練習できなかった組もあるので全員を励ましたい」とのこと。高瀬道場の家庭的な雰囲気に改めて感銘を受けました。

 審査していて特に印象に残ったのが、姿勢の良さ、座る・立つ・歩く所作の美しさでした。武芸の礼法をこれだけ正確に指導されているところは珍しいと思います。私なんか、恥ずかしくって穴があったら入りたいですニャ・・・(何故、猫語?)。

 演技がもう一歩だった組も、最後に挨拶して舞台を降りる時の所作があまりに素晴らしくて、後から一点追加したりもしました。

 優勝チームはちょっと雑だったから減点しようか?と思ったけど・・・、まっ、私も階段降りる時に袴の裾踏んで転びそうになったことあるから、この程度はよしとします。


 第二部は、高瀬道場に所属するアクターによる様々な殺陣、技斗でした。

 殺陣教室の指導で、よくTVでお見かけしていた多加野詩子先生がカンフーで戦う技斗は、特に印象深く、マッハ!のトニー・ジャーを思い出しましたよ。剣殺陣専門かと思っていたら、技斗も凄いんですね~。

『王様のブランチ』の時の男気溢れる真剣な指導姿に痺れたもんです。軽いお仕事感覚だったタレントたちが真剣な顔になったところは、まるでドキュメンタリー映画みたいでバラエティ番組のエポックメイキングでしたからね。

 棒術、槍術、一刀、二刀、小太刀、少年少女の拳法、カンフー、カラテ・・・と演技が進む中、長身の女性がパワフルなカンフーで男たちをなぎ倒す・・・って、この女性はどっかで見たような?

 後でパンフレットをよくよく見ていて、判明しました。TVドラマで和田アキコを演じていた中鉢明子さんだったんですね~。そうか~、高瀬道場で稽古してたのか~。今後の活躍に期待大ですね~(巴御前とか似合いそうだね)。

 高瀬先生による新撰組映画に関する考察も楽しく拝聴しました(若山先生が若っ!)。

 そして、ラストの時代演劇「幕末ウルトラ血風録」は、前回の好評を受けての再演。主役の岡田以蔵を演じる加賀谷圭先生のキャラには、奇跡のような超豪華キャスト時代劇『人斬り』の時の勝新を思い出しましたぜよ。

 一緒に見ていた黒谷先生は珍しく大絶賛! 黒谷先生、滅多に作品を誉めない人で、特にシナリオに厳しい。「『カムイ外伝』はシナリオがダメだ」と手厳しかったのに、このお芝居は、「笑わせるツボがうまい! それに以蔵のキャラが最高! それでいて殺陣は凄いし、本当にいいよ~」とゴキゲンでした。

 実際、このお芝居は単独で公演打ってもイケルと思うんですよ。一時間くらいに伸ばして泣かせるところを最後に持ってきたら大傑作になると思います。

 以蔵が龍馬に頼まれて勝海舟の護衛やるところとか、近藤勇が拳骨和尚と呼ばれた武田物外と一悶着あるところとか、福沢諭吉が実は物凄い居合の遣い手だったりするところとか、田中新兵衛、中村半次郎、河上彦斎、伊庭八郎とかも出てきて新撰組とからむと幕末剣客グラフィティーみたいになって面白いんじゃないかな~?(刀匠の固山宗次と源清麿が喧嘩した話なんかも入れると面白いかも)

 公演の幕間に流れる音楽も、水戸黄門(杉様が歌ってる?)・大江戸捜査網・必殺等のテーマ曲で、特にアニメのカムイ外伝の歌「忍びが~とお~るぅ~、けものぉ~み~ちぃ~・・・」ってメロディーがタイムリーで良かった。なんか、オールナイトの特集上映を浅草で見ている気がしましたよ・・・。

 それにしても、高瀬道場のスタイルは、硬派でガチンコなラフ戦法もよし、緻密な技巧で翻弄するもよし・・・の中で、私みたいな武術バカが唸るような通好みの秘技をさりげなく繰り出してくるところがにくいです。

 一本拳で打ったり(観客の誰が判ったろうか?)、マッハ!式の相手の膝を踏んで額に膝蹴り入れたり、相手の脇差抜いて刺したり・・・といった戦術的スキルを駆使するので、一瞬も目が離せません。

 こういった技は普通の武道家は知らなかったりするんです。いや、まず勉強しようとする人そのものが滅多にいません。知らないのが当たり前になっている。空手の形なんて大抵の空手師範が用法を全然知らなかったりしますから・・・。

 武術には非常に多くの技が伝わっていますが、現代武道しか知らない人達は、それらの技が試合で使えないから無意味だと断じて捨ててしまっているのです。特に山突きや合わせ突きといった両拳で同時に突く技は使用不能のコケオドシだと思われています。

 それは一面では間違いじゃありません。確かに試合では使えないでしょう。でも、本当の実戦を考えたら十分以上に威力を発揮できる技だったりするので、私的にはもったいないと思うんですよね。

 だから、そうした技を殺陣・技斗の中で使ってもらうのは研究家として嬉しいですね。

 こういう評価が果たして適切なのかどうかは私には判りませんが、私の目には、芸道殺陣・波濤流は、“現代の新武術”として様々な可能性を秘めているように思えます。それは、紛れもなく伝統的な武の礼法を継承されていると思うからです。

 武は礼にはじまり礼に終わる・・・この言葉は精神論ではなく具体的な心身制御の理論です。礼の意識は“心法”、礼の所作は“身法”の極意をエッセンスとするものだからです。

 合掌礼や抱拳礼、套路を始める時の起式のポーズが、すべて武的用法を内蔵しているということも、ほとんど誰も知りません。極論すれば、すべて武的意味があるんですよ。


 ともあれ、この素晴らしい縁を結んでくれた今は亡き武友、宮田重則さんに感謝すると共に、高瀬将嗣先生には、素晴らしい技芸会で審査員という名誉を与えていただいたことを、御礼申し上げます。ありがとうございました。


追伸;筑摩書房から新書版の本を出すことになりました。壮神社から最初の本を出していただいてから、アスペクト、文芸社に続いてですが、持ち込みや紹介でなく、今回は筑摩書房さんから執筆依頼を頂戴して感無量です。初心者向けのハウツー本になると思いますが、そろそろベストセラーが出せたらいいな~と思ってます。アスペクトに続くシリーズ化を狙って頑張りまっス!

追伸2;文芸社から出ている『武術と生きる日々』が、ケータイ読書館にて10月15日から販売開始されます。恐らく、ほとんどの読者がまだ読んでいらっしゃらないと思いますが、「長野さんが書いた本の中で一番いい」と評してくれる人もいまして、自分でも納得できた本です。この機会に是非、読んでみていただきたいと思っております。
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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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