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復活する達人伝説

 剣武天真流DVD撮影が順調に進んでいるかと思っていたら、クエストさんから電話がありました。

「ちょっと、長野さんに知恵を借りたいんです」ということでした。

 スタジオ撮り、体育館撮りの2回やったものの、どうも、武道として判りにくくて、一流派の内容を紹介している資料映像という内容にしかなっていないというのです。

 もちろん、多くの武道武術のDVDがそういう内容になっていたりするので、それでも問題はないのですけれど、今回のDVDにかけるクエストさんの意気込みはこれまでになかった感じなんですね。

「武道として説得力のある解説とか演武とかを青木先生本人にやってもらいたいので、長野さんも、今度の撮影に来てもらえませんか?」ということで、GWの最終日に、新体道の合宿場所である箱根に行ってきました。

 朝5時12分に渕野辺駅を出発して高田馬場へ、そこで撮影クルーと一緒に箱根に向かいます。

 いいな~、仕事してるって感じがするな~。

 私、いつも部屋の中でチマチマ原稿書いてるから、仕事らしいことしてる感覚は、会社に行って打ち合わせしたりしている時くらいなんですよね。

 武術教えている時は仕事より趣味の感覚が強いから、やっぱり、こういう撮影の時が一番、“仕事”って感じがしますよね。もっとも、これまた私は自主映画やってた時を思い出すから、楽しいばっかりなんですけれど・・・。

 箱根のホテルに到着すると、ちょうど新体道の会員さんたちが稽古に出てきたところでした。青木先生の御子息の青木太郎先生がちょうどいらしたので、挨拶し、そのまま稽古場所へ機材を運んでセッティング。

 吉田さんも大井先生もいらしたので、簡単に撮影の打ち合わせとか監督さんとやってもらいながら、稽古の様子も記録撮影しました。

 合宿の最後の日だったそうで、稽古は総まとめと、闘争を捨てた調和の武道である新体道らしく、ケラケラ笑い声も出る楽しい雰囲気で前衛的なフォークダンス?みたいな感じで全員で丸くなって大妙の型をやって納会となりました。

 新体道を知らない人が普通の武道のイメージで見たら、「なんじゃこりゃあ?」とビックリして、中には拒絶反応を起こす人もいるかもしれないんですね。

 でも、前衛的な舞踊とかボディワーク、アートを目指している人にとっては凄く感動すると思うんですよ。

 ただ、美しいだけではなくて非常に力強くて形式から解放された心身がある。

 うちのユーチューブに出した動画の中で目隠しして組手やっていた教練は、新体道のこの訓練をやっていたから、超感覚が芽生えていた訳なんですね。だから、従来の武道に行き詰まってしまった人が新体道を訓練すると素晴らしく伸びると私は思います。

 特に空手をやっていて行き詰まった人にとっては、新体道から学べることは非常に多いと思います。何しろ、青木先生は空手の型を全面的に研究しているので、実際、沖縄空手の型でも何でもパッと観てすぐ意味が解ってしまうみたいです。

 私自身は、ちょびっと体験した程度で会員ですらないんですけれど、それでも、得られたものは計り知れないものがあります。

 新体道を知らなかったら、今の私は絶対にあり得ませんでしたね。

 特に、武道をガンガンやってきた人は、心身がガチンガチンに凝り固まってしまって、柔軟な考え方もできなければ身体もアシモ君より堅い動きです。

 統一体という言葉を誤解して石像のようになっている人がほとんどです。

 いったん、身体をバラバラにほぐして、それを生ゴムのように柔軟でしなやかな動きに作り換えることが必要です。

 長く新体道を続けてきた人達の動きは、柔らかくてしなやかで伸びやかで素直で、その上に上半身は力が抜けて軽く、下半身はズシーンと重く、力をタメずにスルッと動き、ストーンと突く・・・。

 天才、江上茂翁が求めた空手は、奇才、青木宏之によって完成され、さらに武道というカテゴリーさえ超越したのです。

 その青木宏之先生が、齢70を越えて、まさか新たな流儀を興そうとは・・・。


 クエストさんが意気込むのも当然でしょう。そして、80年代に“最強の武道家”と噂されていた青木先生が、伝説のベールを脱いでくれることを願わずにはいられないのも当然のことでしょう。

 何しろ、90年代半ば以降、新体道はあまりメディアにも登場することもなく、青木先生のことも新体道のことも知らない武道修行者が増えていました。

 昔は、その超絶の強さが噂され、名だたる空手界の実力者がこぞって教えを受けに行っていましたが、青木先生は、彼らの名誉が傷つかないように厳しく箝口令を強いた上で指導していました。

 その世界で名のある立派な人ばっかりでしたよ。私も何人かお会いしましたが、もちろん、彼らの立場を考えて隠してきました。

 私がUさんやKさんに対して批判的な最大の理由がこれなんです。名のある人を一方的に転がしてみせている様子を公に見せて、自分の実力を誇示するところが武道家としてエチケットが無さ過ぎると思うんですよ。

 習いに来ているのと勝負に来ているのでは全然、違うでしょう? いくら強くたって、他流のトップを転がしているところをね~・・・やり方が嫌らしいですよ。

 誰も批判しないみたいだから、私が批判してやりますよ。私の言ってるの間違ってないでしょ? おかしいことはおかしいって、はっきり言わなきゃね。

 今回の合宿には、外国からもその国で著名な武道家がお弟子さんを引き連れて参加されていました。

 別の流儀であっても良いものは良いと素直に認めて教えを受けようとされるところは、海外の武道愛好家は視野が開けていますよね。

 つまり、海外で熱心に武道を修行している人達の間では、今でも「青木センセイ、シンタイドー」のネームバリューは高いんですよね。

 なので、前日の夜から明け方4:00頃まで海外から参加した人達に青木先生が直々に指導されていたようで、後から稽古場に来られた時は、流石に疲れた御様子でした。


 さて、午後は剣武天真流の残りの撮影です。

 場所を変えて地元体育館の横のグラウンドで撮影することになりましたが、予期せぬトラブルが?

 近くを通るロープウェイからノイズ音みたいなのがブーンブーンと鳴っていたり、道路の車の通過音も結構、気になる。

 ビデオ撮影の時に結構、問題になるのが、この周囲の雑音なんですね。戸外の時は特にそうです。

 箱根だから、アルプスの草原みたいなロケーションを想像していた我々は頭を抱えてしまいました。でも、やるんだよっ!

 剣武天真流の主要メンバーによる組み太刀の型、木剣VS棒、棒VS棒の対戦。なかなか迫力のある映像が撮れました。

「ヘロヘロになったところから無意識に出る技こそ極意」と解く、青木先生の武道原理の一端がここに現れています。

 続いて、場所を変えて青木先生と大井先生の演武を撮ります。

 しかし、ここでもトラブルが?

 カンカン照りに晴れていた箱根の山にガス(霧)が出てきて雲が太陽を覆い隠してきたのです。ヤバイッ! 

 なんか、人VS人ではなくて、青木先生VS山の神様みたいな感じになってきました。

 普通、いつもDVDは撮影を一日で終了します。二日かけるのは例外。今回のように三日かけたのは例外中の例外で、ひょっとするとクエスト初かもしれません。

 あ~、それなのに、このまま真っ暗になってしまったら、また日を改めて撮らなきゃならないかも? ぶっちゃけ、「予算がぁ~!」って話です。

 でも、トラブルもまた味方にするのが真の達人なんですね~。

 このガスが逆に、演武している最中にファ~ッて流れてきて幻想的な美しい画になったんですよ。なんか、霧隠れの技?って勘違いしちゃいそうな感じです。

 そしてまた、これは嘘だろ?って思えたのは、時刻は夕方になっているのに雲間が切れて、また青空が出てきたことですね。もう、暮れてくるくらいの時刻になっていたので、本当に驚きました。

 そういうギリギリ(時間的にも)の状況の中で撮影したのですが、青木先生が剣を持たずに素手の技で実演解説し、剣武天真流を興した動機や武道に対する想い「殺法ではなくて人を活かす、共に練習を楽しむ武道」について切々と話されて、インタビューも兼ねた内容にしてくださったお陰で、何とかなりました。

 いや、何とかなったというレベルじゃなくて、淡々とさりげなく実演してくださった技の深味、闘争を超えて敵を慈しむかのような調和する技を具体的に見せてくださったのは、生涯、追い求められる武の境地を示してくれたものとして、全武道修行者に見て感じてもらいたいと思いました。

 林の中での安原義人さんの刀を使っての剣舞も、実に素晴らしく美しいものでした。これは田中泯さんや舞踊関係の人達に見てもらいたいな~。

 また、最後の大井先生の居合術の素晴らしさ、二人を相手の組み太刀の様子は、「ひょっとして夕雲流って、こんな感じだったんじゃないかな~?」なんて思いました。

 実は、私も事前に打ち合わせして、「もしも、クエストさん的に、これでは物足りないという話になった時は、先生はお嫌でしょうけれど、私が攻撃側になって先生が制する・・・というのをやってもらえませんでしょうか?」と青木先生にお話していて、その準備もしていたんです。

 青木先生は、かつて遠当てを公に実演したことを今は後悔されていて、「ああいう技は外部に見せるべきじゃなかったんでしょう。みんなが喜んで、やってくれと言われてやっていたけれど、私はもう、名人だの何だのと言われるのは嫌なんですよ」と、地道に新体道、天真会の活動が広まって社会貢献できればいいという考えの様子でしたから、私も本当は青木先生を愛憎渦巻く嫉妬に狂った連中が暗躍する武道の世界に引き戻すようなことはしたくなかったんですけれどね~。

 けれども、これを見ていたら、私の出る幕はありませんでしたよ。私がもし出たら、そこだけ違和感になるでしょう。真っ白いキャンバスに、一点だけ濁った点が付いたようになってしまう。

 だから、青木先生と大井先生で、見事に締めてもらえて、本当に良かったです。それと太郎先生がいてくれたのも助かりましたね~。本当に的確なアドバイスを頂戴して撮影がスムーズに進みました。もし、太郎先生がいなかったら、撮り切れなかったかもしれません。何しろ、以前、日本の武道武術シーンの一大交流の場をつくっていた人ですから(譬えるならジュラシックパークの園長って感じ?)。

 本当に素晴らしいですよ。これ以上の武術DVDは作れないんじゃないかな~?と、私は自信をもって大々々推薦させていただきます。

 心地よい満足感と共に帰路につき、私は横浜在住のスタッフの方(帰り方、どうしようと思っていたので助かりました~)と一緒に高速道路を途中で降りて、田園都市線で長津田まで行き、横浜線に乗り換えて帰宅しました。

 前日、寝ていなかったので、貰ったお弁当を食べてから、いつの間にか爆睡して朝の5:45に目覚めました。いや、本当に夢のような一日でした・・・。

 青木先生、太郎先生、青木先生の奥様、太郎先生の奥様、吉田さん、大井先生、新体道及び剣武天真流会員の皆様、ありがとうございました! きっとクエストさんが最高のDVDに仕上げてくれると思いますので、御期待ください。

 そして、このブログを読んでいる皆さん。今回のDVDは是が非でも買って観てください。身法の極致、心法の極意が収録されています。これを観逃したら、日本の武道武術の真の価値を知らないまま終わってしまいます。

 空手をやっている人も合気道をやっている人も、もちろん、居合道や剣道をやっている人も、これを知らないままでは日本の武の到達した境地が永遠に判らないままですよ。

 カタチとマコトとコトワリがここにあるんですよ(モノノ怪?)。

 そして、「なぜ、今、剣なのか?」という答えがここに有ります。剣を知らねば日本の武は解りません。刀が教えてくれるんです。

 ここ最近、歴女ブームから“刀剣女子”ブームが起こりつつあるそうですが、時代は日本刀に向いてきている感じがしますね~。

 俺もガンバロッ!



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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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