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『ハイキックガール』面白いじゃん

 いろいろと批判的な意見を耳にしていたのと、「本物の武道家でなければ本物のアクションはできない」という監督の発言に不安を煽られていた『ハイキックガール』を東映チャンネルで見ました。

 予告編が面白そうだったので、「むむっ、これは面白いかも?」と、ちょっと認識を変えて先入観抜きにして見ました。

 まず、一番心配だった演技力。

 いや~、達者なもんです。自主映画レベルじゃないか?と思っていたけど、なかなか思っていた以上に皆さん、上手いもんですよ。

 次に心配だったアクション。

 本物の武道家がアクションやってもアクションの面白さに繋がらないのは数多の例が先にあるので、実はこれが一番、心配だったんですね。

 特に、「マジで蹴ってマジで当てる」と宣言している時点で、大丈夫かな~?と思っていたんですが、アクションの構築の仕方は心得ているな~と思いました。

 それから、まあ、これは心配だったというより期待していなかったシナリオ。

 う~ん、これは思った通りでしたね~。なんか70年代の香港カンフーや日本カラテ映画を観ていると思えば、ベタ過ぎる内容でも問題ないっス。


 放送初日は、ピンチヒッターで東京支部の指導に赴いていた(内容は東京支部長のブログを参照ください)ので、終わってから直帰してギリギリで放送開始時間に間に合いました。

 この作品、正直言って細かい欠点は少なくありません。

「主人公が性格破綻してて感情移入しづらい(可愛げがない)」とか、「アクションシーンを繰り返し見せる(J・チェンの映画の真似し過ぎ)のがウザイ」とか・・・。

 でも、私は、この作品の監督がプロデュースした前作『黒帯』よりも面白かった。あの作品は生真面目過ぎてノレませんでした。アクションの見せ方もはっきり言って、下手でした。主人公とライバルの対決シーンがいきなりモノクロになるのも、あまり効果的な処理とは思えませんでした。

 何より、ストーリー自体に面白みが感じられなかったのです。

 確かに、この作品にもいろいろと改善すべき余地が多いとは思うんですが、本物の武道家でないとできないレベルの動きを見せてくれている点(連続ケンケン蹴りや、相手の蹴りをステップバックして躱してすぐに前に出て蹴りを入れる・・・などは相当な実力がないと無理)は、確かに監督のねらい目は間違っていなかったな~と思いました。

 こういうシーンには、「どうだ? これが伝統空手なんだ!」という監督の空手愛が結実しています。これまで伝統空手の技をこれだけ魅力的に表現した作品はなかったと思うんですよ。

 予想していたより、ハッタリの効いたアクションも交ぜていたので、アクションの見せ方にも工夫があります。本物に拘ると、大体、ラフな喧嘩アクションか地味過ぎる渋好みのアクションになり過ぎてカタルシスの欠けたものになりがちですが、そこは避けていました。

 監督自ら主人公に襲い掛かる変態染みた格闘家を演じていたところなどは、ちょっと微笑ましくて苦笑してしまいますが、「『黒帯』で格好良い役を演じた照れがあったのかな~?」という気もしました(まさか、女子高生に蹴られたい願望?)。

 主演の武田梨奈ちゃんは逸材です。鋭いヌンチャク捌きは『女必殺拳』シリーズの志穂美悦子を思い出します。まだ表情が堅いから演技の勉強を積んでいけば世界で活躍できるアクション女優に成長できるかもしれません。というか、そうしないともったいない。

 空手界のアイドル小林由佳との対決シーンは、ちょっと『スパルタンX』の時のベニー・ユキーデとジャッキー・チェンや、『ドラゴンへの道』のブルース・リーとチャック・ノリスの対決を彷彿とさせました(だから、勝った梨奈ちゃんが相手に敬意を払う演出もあった方が良かったと思うんですが)。

 かつての倉田先生主演『闘え!ドラゴン』風の女空手家ドラマをテレ東深夜にやってみたらいいんじゃないでしょうか? そして、劇場版で『チョコレートファイター』のジージャーとタイマン張る作品をやってもらいたいですね。

 私的には、作品中の空手の形演武や分解組手、壊し屋軍団との格闘戦で見せる中達也師範の見事な技に唸りました。これが見れただけで満足! 私だけかもしれんけど・・・。

 中師範が“読み”の重要性を語るところなんか痺れます。意外に深い武術としての空手とは何か?といったことを問題提起してくれているところもナイスです。

 でも、蟷螂拳などの中国武術修行歴があって、斬心塾で総合武術の研鑽も積んでいる須藤正博さんがあっさりやられてしまうのはもったいない・・・。

 蟷螂拳で空手の突きを封じて展拍の技で引っ繰り返す・・・と、何故か二人とも倒れるが、次の瞬間、中師範がムクッと起き上がる・・・そこでスローモーション映像で、倒れながら中師範が繰り出した廻し蹴りがコメカミにヒットしていた!なんてのがあると良かったのにね~。

 やっぱり、空手の描写には熱心でも、他の壊し屋軍団のメンバーの使う技の特徴とかの描写がないので、そこが一番、弱いところですかね~?

 女キックボクサーや棒術遣い、アクロバットマーシャルアーツの女、テコンドー遣いなんかはキャラもアクションも見ごたえがありましたが、何だか仮面ライダー劇場版の再生怪人軍団みたいな扱いで、本当にもったいないと思いました。

 一人ずつ立ち向かってくるところも説明不足で、見ていて「最初から全員でかかればいいじゃん」とか思ってしまいます。

 やっぱり、こういう場合はボスの命令に従う・・・というのが必要ですよ。あるいは、「私にやらせてください」と志願するとか。

 こういうところは思いっきりベタな方がいいと思いますね。

 先にいろんな道場に道場破りするシーンがいくつもあって、ボスみたいなヤツは「日本武道界を俺が実力で支配する。お前らのような軟弱な武道家は消えろ!」みたいなゴーマンかますシーンとかが欲しいですね。

 ほら、『少林寺木人拳』みたいな感じ・・・って、わかんないか?

 やっぱり、脚本が弱いかな~? 東映カラテ映画みたいなハッタリが必要ですよ。“アマゾネス7”とか、“高砂流吹き矢”とか、“琉球古武道二丁鎌”とか・・・。

 それに、せめてラスボスは石橋雅史先生にしないとね~。それで、中師範が立ち合おうとするところを武田梨奈ちゃんが、「先生、ここは私に任せてくださいっ」とか言って出てくると、石橋先生が本位田猪一郎(わかんな過ぎる?)の時みたいに二丁釵を取り出してイエエ~イッ!ってカチーンカチーンとやる訳ですよ~。

 そんでもって、中師範が「土屋っ。敵の得物に惑わされるんじゃない。武器は見るな!」とか言うと、「押忍!」って梨奈ちゃんが目を瞑って、“考えるなっ、感じるんだ”殺法で打ち破るんですよぉっ!

 なんか、アンジェラ・マオの『女活殺拳(原題・合気道=ハプキドー)』みたい?

 やっぱり、敵の軍団の設定とかが意味不明で今ひとつなんですね~。“壊し屋ナントカ”ってテロップが出るんですが、そこは、“ナニナニ流、ナントカ”って出さないとダメなんですよね~。

 こういう作品の好きな人間は、「空手がカポエラやカンフーやハプキドーやJKDやカラリパヤットやペンチャックシラットと闘うところが見てぇ~」と思ってる訳ですから、そこはきちんと描かないと・・・。

 それと、カット割りやカメラアングル、編集のやり方なんかは、もっとアクションに手慣れた人に任せた方がいいと思いましたね。そこが上手いだけでかなり違うと思います。


 まあ、いろいろと批判的なことも書きましたが、私は欠点も含めて、この作品は面白いと思います。潜在的なポテンシャルをもっともっと高めていけると思いました。

 西監督の「ここを見せたいんだ」というところを、より効果的に映像化してクリエイトできるようなチームつくりをされたら、それこそ世界が驚愕するようなアクション・マーシャルアーツ作品が生まれるでしょう。

 反省点を踏まえて、何倍もグレードアップしたパート2を製作してもらいたいですね。


追伸;私が解説文を担当した永岡書店から出ているDVD付き教本『実践合気道入門』(佐原文東著)『空手道実践トレーニング』(香川政夫著)が、判型を小さくして再販されています。それぞれ100円安くなって1400円となっていますので、まだ観ていない方も、是非、御購読ください。自分が関わったから言うのではなく、本当に武道技術書のエポックメイキングになっています。
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追伸2;游心流の稽古生募集のチラシ、できました。
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プロに作ってもらったら凄いカッチョイイのができて、我ながら照れ臭いです。イタズラ電話防止のためにメールでのみ申し込みは受け付けていますので、よろしく御理解お願いします。

追伸3;アスペクトの次回作は武術の健身法でやってみようと思っています。この夏は忙しくなりそうですが、今年中に最低あと一冊は本出しておきたいですからね。

追伸4;6月7日(月曜日)の東京支部稽古会も、私が代理で指導します。時間と場所はいつものところ。今回も太極拳の必殺用法とか教えますので、会員さんは是非どうぞ。ちなみに定員を気にしている人も多いと思いますが、毎回、赤字になりかかっているので気にしないでおいでください。場所代が高いので参加者が少ないと大赤字なんですよ。実は月例セミナーに参加するよりずっとお得です。ほぼ個人指導なので。また、横浜同好会も宜しくお願いします。


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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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