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捏造された情報は悪影響を広める

 ちょっと、今回は堅い話を書いておきます。

使える武術』(ちくま新書)中に書いた、「テコンドーは松濤館流空手道、ハッキドーは大東流合気柔術、コムドは剣道をベースに創作されたものであって、朝鮮半島が源流であるとの一部の主張は間違いです」との私の文に対して、立命館大学の原尻英樹氏より編集部に直接電話があって「日本武道をベースに創作されたと言い切ってしまうのは乱暴過ぎると感じる」という批判意見があったそうでした。

 原尻氏は、自身の著書『心身一如の身体づくり』(勉誠出版)を、「嘉納治五郎の古武術研究会に言及しているということは、読んでいる筈と思うが」とのことで御意見を述べられていたそうです。

 そういえば、この『心身一如の身体づくり』は、町田のあおい書店で見かけて購入していたと思い出して、引っ張り出してみました。が、失礼ながら、あまり熱心に読んでいなかったので、該等箇所には気づきませんでした。

 ちなみに、嘉納治五郎の古武道研究会の存在は20年以上前から知っていましたから、当然ながら、この本で知った訳ではありません。その証拠は、原尻氏の本(2008年10月31日初版発行と奥付に出ています)より以前に出版されている私の本(2006年から毎年出しています)やムック本(2004年に学研より出た)中でも触れていますから、それで充分、反証となるでしょう。


 さて、それで御指摘の点ですけれども、原尻氏は文化人類学的見地から、朝鮮半島経由の大陸の武術文化が日本の武術に影響を与えた可能性を鑑み、私の意見が乱暴過ぎると感じられた様子です。

 これは言葉が足らなかったな~と反省しています。

 私が断定的に否定しているのは、「テコンドー、ハッ(プ)キドー、コムドが、それぞれ朝鮮半島を源流にする武術であって、それぞれ日本の空手道、合気道、剣道はここから派生した」と主張する勢力に対する研究家としての徹底批判の意志を込めてのものなのです。

 当然、私も中国・朝鮮の武術文化の影響無しに日本の武術文化がまったく独自にオリジナルで生まれたなどとは露ほども思っておりません。

 それが証拠に、私自身、日本武術のみならず、中国武術も朝鮮武術も東南アジアの武術も等しく研究してきています。最近は、琉球の武術と台湾やタイなどの武術との類似性も研究してきています。

 つまり、比較文化論の見地で研究すべきことはやってきているのです。

 しかし、文化論で語ることと、社会通念上、倫理的に捏造された虚偽の情報を意図的に広めて歴史と文化を歪曲することは厳しく非難されるべきです。

 テコンドーの創始者、ハッキドーの創始者、コムドの提唱者・・・それらが日本武道を学び、それを新たに発展させたことを率直に申告しているにも拘わらず、「これらは元々、朝鮮半島を源流とし、むしろ、日本の武術の源流でもあるのだ」という虚偽の説を広める輩は、それこそ文化と歴史を改竄する犯罪者として厳しく非難し断罪されるべきであると私は考えており、その観点から断定的に書いている訳です。

 これらの捏造問題に関しては過去に専門雑誌でも論争が戦わされたりしていますから、インターネットで調べれば、いくらでも具体的な情報が得られるでしょう。関心のある方はそれらを読まれれば良いと思います。

 なので、何も人種差別的な観点から否定しているのでもありませんし、むしろ、事実は事実としてきちんと提示する中から、技術の比較研究や将来的な交流発展の礎とされるなら重畳であると考えているのです。

 何しろ、日本の武術の歴史にしたところで、有名人を創始者に仮託したり、大陸系、半島系を主張することで舶来信仰の権威付けをした流派も数多くあったのです。

 そのような事実に反する権威付けの捏造情報が、後世の継承者を苦しめ、日本の武術文化の社会的信頼を失墜させ続けてきた悪しき伝統を改めて、武術文化の真価を顕現させるためには、虚偽は虚偽、真実は真実として究明する態度が研究家に求められる唯一絶対のものであると私は考えています。

 ここ最近では、日本少林寺拳法が「中国の武術とは関係なく日本で創始された拳法」だと公式に認めたことが挙げられます。間違いを正して真相を明確にした、大変、勇気ある態度であると私は高く評価します。

 文化人類学的見地から内外の武術文化を研究されることは貴重なことと尊敬致しますが、文化論で大まかに論じてしまう前に、武術文化の伝統には、虚偽捏造された情報が多数含まれているという現実を鑑み、地道な検証実験による真相究明の態度が必要でしょう。

 例えば、日本武術と中国朝鮮半島武術の違いの中には、技術と装具、そして身勢の違いも含まれます。

 そこを弁えることなく技法の質的類同性のみで大まかに類型化して語ることは謹まねばなりません。

 例えば、合気。これは類同性技法を探れば、それこそ世界中にいくらでもそのような技法はあります。ロシア武術システマなどはその最たるものでしょうし、それを認めて「合気はロシアから伝播した」と称えたら、どう思われるでしょうか?

 しかし、日本の大東流、合気道などでも派閥によっても個人によってもそれぞれの工夫がなされて種々の技法特徴が見られます。

 そんな個々の工夫の差異化を無視することは傲慢というものでしょう。

 私自身は、伸筋技法・脱力技法に分け、さらに体軸系と丹田系に身法型を分けて分類整理しています。が、それでも触れ合気、体の合気、察気術、予測誘導(予測外し)、反射誘導、霞がけ・・・等々の多数の合気派生技法群を分類整理することはできません。

 これらの技法群は、それぞれ大小各派で工夫洗練されて育まれていった術技なのであって、それらを他人が土足で踏み付けたり踏み潰したりする権利はありません。

 捏造、虚偽の宣伝とは、そうしたことに繋がる明確な犯罪なのです。

 このような捏造、虚偽の宣伝は国内外を問わず、昔も今も斯界に渦巻いています。資料に書かれていることが真実とは簡単に言えません。むしろ、嘘かも知れないと思って調べた方が良い。

 また、間違いを自覚しないまま流用するお人好しも、この業界には少なくありませんし、人格実力共に優れた師範が、先師のついた嘘の尻拭いに必死になるあまり、自ら虚偽捏造に手を染めてしまったり、他流との諍いが絶えなかったりする様子は悲惨というべきでしょう。師と流派を敬う気持ちは尊敬できますが、間違いは間違いと冷静になれなくてはいけません。

 原尻氏がそれを了解しておられるのであれば、私が乱暴な物言いをしているのではないことは御理解いただけるものと思いますし、文化人類学的見地からの文化論で語る前に、情報の真偽を検証しないまま文化論でまとめる行為は“善意の歴史捏造”に繋がってしまう危険性を持つことを御理解いただきたい・・・と、私は切にそう願います。

 また、老婆心ながら、原尻氏の『心身一如の身体づくり』中、桧垣源之助氏や藤松栄一氏、岡田慎一郎氏の著作本中の写真やイラストをそのまま載せておられるのは、写真撮影者やイラスト執筆者の著作権益に抵触する行為であり、きちんと許諾を得られておられるのかどうか心配になりました。私も10年以上前に、この件で某出版社にお詫びにうかがった経験があります。このような点も、迂闊に行えば捏造問題として扱われる場合もありますので、御注意されるよう祈っております。

 以上、批判御意見に答える形で書かせていただきました。


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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
@yahoo.co.jp

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