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『牙狼<GARO>RED REQUIEM』を観た

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 日本が世界に誇るSFファンタジー映画の巨匠、雨宮慶太監督の最新作にしてTV深夜枠で異例のスマッシュヒットを飛ばした『GARO』が、ついに劇場版となりました!

 私は、これをどんなに心待ちにしたことでしょうか?

 TVの深夜特撮ドラマといえば、『エコエコアザラク』『デビルサマナー』『キューティーハニー』、ごく最近も『大魔神カノン』などがありますが、“仮面ライダー、ウルトラマン、戦隊”という日本の誇る三大特撮コンテンツを別格として、1990年代から深夜枠でホラーや幻想を背景とする特撮コンテンツが実験的に作られてきていたことの意義は大きいと思います。

 この領域の大ヒットといえば、飯田譲二監督の『ナイトヘッド』がありますが、実験作品というものは、若い創り手が本当にやりたいものを狙っている場合も多いものです。

 深夜だからこそ、ホラーやダークファンタジーの作品が印象に残るものですし、世界的にブームとなったJホラーのブームもまた、この深夜枠の特撮ドラマ群と無関係ではなかったと思われます。

 もっとも、類似のコンテンツが大量生産されることで品質の劣化を感じられる場合もありましたが、玉石混淆の中でキラッと光るセンスを発揮する監督も何人も出てきていたと思われます。

 中でも、『牙狼<GARO>』は衝撃的でした。

 超伝奇ファンタジーアクションの世界を独自のタッチで醸成してみせたのは、雨宮慶太監督の、誰にも真似のできない屹立するアート感覚だからこそ成立し得たのだと私は確信して疑いません。

 まったく同じ世界観を誰か他の人が描いたとしたら、とても作品として成立できなかったでしょう。

 西洋の騎士、魔界の悪魔、悪魔を狩るハンター・・・これらの要素を現代の大都市の中で成立させるという荒業を、スタイリッシュなアクション演出と圧倒的なビジュアル・イメージで成立させている点に、私はただただ驚嘆するしかありませんでした。

 雨宮慶太監督はアマチュア時代から、8mm自主映画『スウィートホーム』で、既に異世界のクリーチャーが日常に侵食してくる恐怖をテーマにしていました。

 やはり、才能の優れた人はプロになるのが必然で、その後、東映の戦隊シリーズに携わり、『真・仮面ライダー』『仮面ライダーZO』『仮面ライダーJ』『人造人間ハカイダー』などの石ノ森ヒーロー物にて才能を示しながら、オリジナル・ヒーロー物『未来忍者』を経て、代表作とも言える『ゼイラム』『ゼイラム2』を発表します。

 そして、SF時代劇『タオの月』を発表し、月一回の放送という変則的な形ながらTVシリーズで巨大ロボット物『鉄甲機ミカヅキ』を発表。

 そんな雨宮監督ですが、「子供向けのジャンル映画しか撮れない監督」だという不当な低い評価を向ける人もいるようです。

 が、馬鹿を言っちゃいけない。「ジャンル映画しか撮れない監督」ではなく、「ジャンル映画しか撮る気がない監督」なのだと理解しなければなりません。

 何故ならば、雨宮監督の真価は、その圧倒的に芳醇なビジュアル・イメージにこそあるからです。

 幻想魔界を描かせたら、世界に並ぶ者のいないであろう唯一無二の絵師であり、そのイメージを映像で見せてくれる真の意味での映像作家なのです。

 だから、凡庸な日常を映し撮るしかできない貧困なイメージの映画人には雨宮監督の独自性を正当に評価する眼力はないのでしょう。

 毎年の日本アカデミーなどのアカデミックな映画賞では、雨宮監督は無視同然の扱いをされているように思えますが、それは批評眼の水準を超えてしまっているから解らないのではないか?と思われます。

 とにかく、TVシリーズ『牙狼』は、あらゆる意味で衝撃的でした。ホラーで鮮烈なアクションもあり、魔術と剣の西洋中世の世界を現代日本で描いて陳腐にならず、スタイリッシュで野心的。どの回の話も粒が揃っていました。

 同時期に鳴り物入りで製作されて放送されていた特撮系月九ドラマの手抜き具合と比較しても、志しの高さは誰の目にも明白でした。

「これは劇場で観たいな~」と思っていましたが、TVスペシャルを経て、満をじして、ついに劇場版が製作されると専門誌で知り、しかも、それが3D作品であるということで、これを期待せずに何を期待したらいいのか?という思いで公開を待ちました。

 で、公開一週間後の日曜日、稽古が終わってから、新宿のバルト9に、矢嶋師範代と一緒に観に行ってきました。

 いつも地元の映画館はガラガラに空いているものですから、満員で観るのは久しぶり。

 それにしても、盛況なのはファンとしても嬉しいですね。

 今回の劇場版は、TVシリーズのレギュラーはまったく出ておらず、主演の小西遼生さんだけ。ちょっと寂しい気もするんですが、始まってみると、一本の独立した作品として楽しむことができました。

 どうも、この劇場版では、「小西遼生演じるGAROは客演で、真の主役は松山メアリー演じる魔戒法師“烈花”なのかな~?」という気がしました。

 魔戒法師と言えば、TVシリーズ、TVスペシャルで邪美を演じた、さとうやすえが特技のバレエを活かした柔軟なアクションで印象が強かったのですが、松山メアリー演じる烈花はそれ以上に戦闘能力を高めた感じがします。

 顔立ちがシベリアンハスキーっぽく?て、かつて『エコエコアザラク』のTVシリーズに出てきた佐伯日菜子のような存在感を感じます。

 もしかすると、次は押井守監督のアサルトガールズ・シリーズに出るかもしれません。

 そんなタダ者じゃない存在感があるのですが、映画秘宝や特撮ニュータイプなどのインタビュー記事中の普通の写真を見ると、全然、別人の明るい性格のアイドルに見えます。

 いや~、凄いな~。こんなに変わるのか?と、驚かされます。

 松山メアリーって、私はTVで『新耳袋』を観ていた時に出ていたのを見かけたくらいです。そこでは普通の女子高校生役だったので、今回のアクション女優っぷりは想像もつきませんでした。

 バレエと新体操をやっていたそうなので、身体の柔軟性がハンパではありません。さとうやすえも凄いと思いましたが、松山メアリーの柔軟性は尋常なレベルではありません。

 これで、もう少しパンチやキックにキレとスピードが出たら、アクション女優で世界に打って出ることも可能になるでしょう。

 余談ですが、アクション俳優目指す人は、空手出身者が多いと思うんですけど、やるんだったら、まず体操をやるべきだろうな~と最近は思いますね。

 武道って、思いの外、動きが堅いんですよ。決まりきった動きを反復練習するから、動きの変化ができない人が多いんです。

 無論、武道やってた人は動きのキレ味はいいんですが、どうしても最短最小で素早く動こうとしてしまうから、見た目が凄く地味になりがちなんですね。

 大きく緩急自在に動ける上で、時々、ビシュッと動くと効果的だと思うんですが、常に最速で動こうとしたら何やってるのか判らないから、面白くないんですよ。

 伝統空手や剣道の試合が、案外、面白くないのは、そのせいだと思いますね。速過ぎて何が何だか判らないから。

 そういう意味で『ハイキックガール』は、アクションとして空手の動きを見せることを相当工夫していたから、良かったですよ。劇場で続編?の『KG』という作品が予告編で流れていましたが、アクションの見せ方がより進化している感じがしました。

 あっ、そういえば『ハイキックガール』の武田梨奈ちゃんは『ドグーンV』のドロちゃん役で出ているそうですね? 私の家は東京MXが映らないので観れないのが残念!


 それにしても、烈花が「俺は女だから魔戒騎士になれなかっただけだ!」と、うそぶくところといい、父親の魔戒騎士(やっぱり、この人、津田寛治)の仇と、魔獣ホラー・カルマ(原紗央莉)を狙っているという設定なんか、ちょっと水戸黄門によくあるような感じもします。

 斎藤洋介に中尾彬も出ていて、それぞれカルマに利用されているというところも伏線がいろいろ活かされていて、“親子”とか“家族”というテーマがちりばめられている作品のような気がしました。

 そして、鏡の中という閉鎖空間の設定は、ゼイラムでお馴染み、雨宮監督の十八番の展開です。鏡爺い、雲外鏡と戦う鬼太郎という雰囲気もありますが、この鏡の中の異世界のビジュアルがまた凄い!

 カルマに敗れた魔戒騎士の霊魂がGAROに味方していくところで、烈花の死んだ父親が、そっと頬を撫でて行くシーンなんか、本当に感動的ですし、カルマを倒して現世に戻ってきたら、彼らを助けるためにアカザ(斎藤洋介)が命を捨てていた(魔道具がないと肉体を持ったまま鏡の世界に入れないため)ということが判るシーンとか、単純な大団円で終わらなかったところも、ドラマの組み立て方としてアダルトな雰囲気がします。

 魔戒騎士のシリーズは、今回の烈花に焦点を当てたやり方を考えても、主役を変えながらいろんな展開の物語を創造していくことが可能な作品世界だろうな~と思いました。

 例えば、烈花が、冴島鋼牙との出会いを通じて、「俺も鋼牙のような魔戒騎士になる!」と決心して女性初の魔戒騎士になった・・・とか、あるいは、今回、ちょこっと触れられたような、「魔戒騎士は、魔戒法師だけではホラー退治が難しくなったので生まれた」といった“魔戒騎士は魔戒法師の中の戦闘タイプ”といったルーツを探ったり、元々の日本の妖怪退治をしていた一族の生き残り(魔戒武士?)がいて・・・みたいな話もできると面白いんじゃないか?と思いますね。

 で、日本刀ベースの片刃の刀剣で居合を得意にしているライバルが出てきたりしたら面白いと思うんですが・・・。

 だってね~。古武術って、“憑き物落とし”、つまり、エクソシズムまで伝承していたりする(竹内流とか香取神道流とか・・・)んですから、妖怪退治専門の武術流派があっても、別におかしくはないんですよ。

 確か、『さくや妖怪伝』って、そんな話だったような気がするけど・・・?

 対妖怪の法術を駆使していた連中でも勝てない、物理的に強力な妖怪が出てきて、これに対抗するには物理的に戦える武術も必要になった・・・みたいな話だったら、面白いアクション・ファンタジー作品がいくらでも作れると思うんですけどね。


 まあ、それはともかく、『GARO』という一級のヒーローを生み出した雨宮慶太監督の今後に期待したいですね。できたら、ゴジラを復活させて欲しいな~。

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著者プロフィール

yusinryu

Author:yusinryu
長野峻也(ながのしゅんや)。武術研究家。游心流武術健身法主宰。
武術指導、アクション殺陣指導致します。映画等のコラムも書きます。
関係者の方、ご連絡をお待ちしております。
yusin_mail_from2006
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