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松田優作ドキュメンタリー映画『SOUL RED』
東映チャンネルで、松田優作のドキュメンタリー映画『SOUL RED』が放送されていました。
昨年、劇場公開された時に観に行こうかと思っていたんですが、観そびれてしまいました。
最近、うちの30代より若い会員さん達と話していると、彼らは松田優作の作品をほとんど観たことがない!という、“日本男児として許すべからざる怠慢を犯している”という事実を知って、唖然・呆然・慄然・燦然(んっ? シャンゼリオン?)となってしまいましたぜよ。
龍平や翔太も活躍しているけど、親父にはまだまだ遠く及ばないですよ。
何てったって、松田優作は全国の無頼派少年たちの憧れであり、「男としてカッコイイとは、こういうことなんだ」ということを仕事としても実際の生き方としても実演して見せた唯一無二の存在ですよ。
最初にそれを示したのは拳銃嫌いの空手使いの新米刑事、柴田純(そうです。中谷美紀がケイゾクで演じたヒロインの名前は、ここからパクッたのです)ことジーパン刑事!
助けた男に拳銃で撃たれて婚約者の女刑事を残して、「なんじゃ~こりゃあ?」と絶叫して殉職してしまった『太陽にほえろ』中の最大のクライマックス劇となった、あの伝説の怪演・・・。
アレが無ければ、奇才・竹中直人は誕生していなかったかもしれません・・・。
そして、『俺たちの勲章』での、すぐにマグナムぶっ放す中田刑事。『大都会パートⅡ』の冗談ばっかり言ってる徳吉刑事。『人間の証明』の棟末刑事。遺作となったTVスペシャル『華麗なる追跡』でも刑事役を演じていたのは、何だか因縁を感じましたね。
しかし、優作の真価を現したのは、何といっても『最も危険な遊戯』『殺人遊戯』『処刑遊戯』の殺し屋、鳴海昌平でしょう。この三作で日本のハードボイルド・アクションの旗手としての評価を定着させ、『蘇る金狼』でダークヒーローの頂点を極めた印象がありました。
ところが、ここからが松田優作の松田優作たる所以であります!
周囲からハードボイルドアクションのヒーロー役ばかり期待されることへの不満から、TV主演ドラマ『探偵物語』はコメディ調とし、『野獣死すべし』で精神にトラウマを負った奇怪なキャラクターを演じたり、『ヨコハマBJブルース』で小池一夫キャラのような乾いた性格で、強いんだか弱いんだかよく判らないブルース・シンガー兼探偵というヘンな役を演じます。
ところが、これらのキャラがいいんですわ~。
松田優作は、時代劇映画『ひとごろし』でも、臆病で剣の腕もからっきし・・・という侍を演じていますが、身体的強さを見せつけたいというような武道やっている人間に特有のナルチシズムは無かったようです。
この時期からはいろんな役柄に挑戦していき、鈴木清順の『陽炎座』では大正時代の劇作家・松崎春狐を演じて泉鏡花の怪談の世界で翻弄される経験を、撮影中に鈴木監督からも受けたと言っています。
その後も、出世作と言われる『家族ゲーム』『それから』や、『華の乱』。TVドラマ『熱帯夜』『春が来た』『新・事件ドクターストップ』『追う男』『夢千代日記』『女殺し油地獄』など、意欲的に演じてきています。
しかし、『嵐が丘』で海外の映画祭に行った時に、もう時代劇というだけで邦画が評価される時代は終わったと感じたようです。
松田優作が唯一監督主演した映画『ア・ホーマンス』は、観念的なSF映画ですが、彼が撮影現場で学んできた表現手法などを果敢に試行しており、賛否は分かれましたが、無視できないエネルギーに満ちた作品です。
この頃、松田優作は仏教や精神世界への関心を深めていたらしく、作中でも宗教的な神秘体験を思わせる幻想的シーンが散見されます。
『ア・ホーマンス』の原作は、映画とはかなり違いますが、記憶喪失の主人公は、かつて幻覚を催すサボテン、ペヨーテを食べる呪術的祭儀に参加したことから、当時の神秘体験のフラッシュバックが起こるかもしれないと断って結婚し、失踪した後の帰りを待つ妻と再会したものの、また旅に出る・・・という不思議な話です。
松田優作が、この原作のどこに共感して映画化の企画を思い立ったのかは解りませんが、彼自身に、この作品の主人公に共感する精神性があったことは間違いないでしょう。
それは、生死を超えた魂の自由に対する憧れであったのではないか?と私は思う。
だから、膀胱ガンを隠して『ブラックレイン』へ出演したのも、「自分は生死を超えてみせる」という、精神による肉体の完全な制御、“気の力”への挑戦的な意志による面もあったのではないでしょうか?
彼は40歳になるかならないかの年齢で亡くなってしまいましたが、その存在感は今も褪せることなく多くの人の心の中にズシリと残っています。
多くの人間は、死ねば、時間と共に存在を忘れられていきます。
しかし、歴史に名前が残るような人間は、それだけ人生を濃密に精一杯生き切ったのではないでしょうか?
人生は時間だけが価値を持つものではありません。無為に不毛に長く生きるよりも、たとえ短くとも鮮烈に生き切るほうが良いように思います。
松田優作の作品を観たことがない人へ・・・「観なさいっ!」。
私の言いたいのは、それだけです。
昨年、劇場公開された時に観に行こうかと思っていたんですが、観そびれてしまいました。
最近、うちの30代より若い会員さん達と話していると、彼らは松田優作の作品をほとんど観たことがない!という、“日本男児として許すべからざる怠慢を犯している”という事実を知って、唖然・呆然・慄然・燦然(んっ? シャンゼリオン?)となってしまいましたぜよ。
龍平や翔太も活躍しているけど、親父にはまだまだ遠く及ばないですよ。
何てったって、松田優作は全国の無頼派少年たちの憧れであり、「男としてカッコイイとは、こういうことなんだ」ということを仕事としても実際の生き方としても実演して見せた唯一無二の存在ですよ。
最初にそれを示したのは拳銃嫌いの空手使いの新米刑事、柴田純(そうです。中谷美紀がケイゾクで演じたヒロインの名前は、ここからパクッたのです)ことジーパン刑事!
助けた男に拳銃で撃たれて婚約者の女刑事を残して、「なんじゃ~こりゃあ?」と絶叫して殉職してしまった『太陽にほえろ』中の最大のクライマックス劇となった、あの伝説の怪演・・・。
アレが無ければ、奇才・竹中直人は誕生していなかったかもしれません・・・。
そして、『俺たちの勲章』での、すぐにマグナムぶっ放す中田刑事。『大都会パートⅡ』の冗談ばっかり言ってる徳吉刑事。『人間の証明』の棟末刑事。遺作となったTVスペシャル『華麗なる追跡』でも刑事役を演じていたのは、何だか因縁を感じましたね。
しかし、優作の真価を現したのは、何といっても『最も危険な遊戯』『殺人遊戯』『処刑遊戯』の殺し屋、鳴海昌平でしょう。この三作で日本のハードボイルド・アクションの旗手としての評価を定着させ、『蘇る金狼』でダークヒーローの頂点を極めた印象がありました。
ところが、ここからが松田優作の松田優作たる所以であります!
周囲からハードボイルドアクションのヒーロー役ばかり期待されることへの不満から、TV主演ドラマ『探偵物語』はコメディ調とし、『野獣死すべし』で精神にトラウマを負った奇怪なキャラクターを演じたり、『ヨコハマBJブルース』で小池一夫キャラのような乾いた性格で、強いんだか弱いんだかよく判らないブルース・シンガー兼探偵というヘンな役を演じます。
ところが、これらのキャラがいいんですわ~。
松田優作は、時代劇映画『ひとごろし』でも、臆病で剣の腕もからっきし・・・という侍を演じていますが、身体的強さを見せつけたいというような武道やっている人間に特有のナルチシズムは無かったようです。
この時期からはいろんな役柄に挑戦していき、鈴木清順の『陽炎座』では大正時代の劇作家・松崎春狐を演じて泉鏡花の怪談の世界で翻弄される経験を、撮影中に鈴木監督からも受けたと言っています。
その後も、出世作と言われる『家族ゲーム』『それから』や、『華の乱』。TVドラマ『熱帯夜』『春が来た』『新・事件ドクターストップ』『追う男』『夢千代日記』『女殺し油地獄』など、意欲的に演じてきています。
しかし、『嵐が丘』で海外の映画祭に行った時に、もう時代劇というだけで邦画が評価される時代は終わったと感じたようです。
松田優作が唯一監督主演した映画『ア・ホーマンス』は、観念的なSF映画ですが、彼が撮影現場で学んできた表現手法などを果敢に試行しており、賛否は分かれましたが、無視できないエネルギーに満ちた作品です。
この頃、松田優作は仏教や精神世界への関心を深めていたらしく、作中でも宗教的な神秘体験を思わせる幻想的シーンが散見されます。
『ア・ホーマンス』の原作は、映画とはかなり違いますが、記憶喪失の主人公は、かつて幻覚を催すサボテン、ペヨーテを食べる呪術的祭儀に参加したことから、当時の神秘体験のフラッシュバックが起こるかもしれないと断って結婚し、失踪した後の帰りを待つ妻と再会したものの、また旅に出る・・・という不思議な話です。
松田優作が、この原作のどこに共感して映画化の企画を思い立ったのかは解りませんが、彼自身に、この作品の主人公に共感する精神性があったことは間違いないでしょう。
それは、生死を超えた魂の自由に対する憧れであったのではないか?と私は思う。
だから、膀胱ガンを隠して『ブラックレイン』へ出演したのも、「自分は生死を超えてみせる」という、精神による肉体の完全な制御、“気の力”への挑戦的な意志による面もあったのではないでしょうか?
彼は40歳になるかならないかの年齢で亡くなってしまいましたが、その存在感は今も褪せることなく多くの人の心の中にズシリと残っています。
多くの人間は、死ねば、時間と共に存在を忘れられていきます。
しかし、歴史に名前が残るような人間は、それだけ人生を濃密に精一杯生き切ったのではないでしょうか?
人生は時間だけが価値を持つものではありません。無為に不毛に長く生きるよりも、たとえ短くとも鮮烈に生き切るほうが良いように思います。
松田優作の作品を観たことがない人へ・・・「観なさいっ!」。
私の言いたいのは、それだけです。
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